レイル‐一度目の戦役の終戦後-エピローグ-(一度目の)人生の終わり
何日、この何もない荒野を歩き続けただろうか?
不毛な大地をいくつも超え、そしてどこまでも続く砂漠、山々を渡り歩いてきた。
カサカサの皮膚、爛れた砂塵に覆われた、本来は黒茶色の髪の毛。
オアシスも何も、この世界にはもう存在しない。
私が、そのように、してしまったのだから。
既に、本当に何もない、着飾っただけの、上辺だけの町すら消え去り。
汚染物と、そして有機物の成れの果て、それだけが延々と続くだけの荒野。
彼はあの時、私に向けて、意味深な笑みだけを向けていた。
じっと、こちらを見ていた。
前を歩き続けるその果てに、何か、揺らめく蜃気楼が映った。
自分を、救ってくれる何か、直感的にそう思い、その蜃気楼に縋った。
決意もなにもない、ただ自動的に、その時だけは、自分の最後に残った一つだけ、果てのない欲望に従った。
この先は、そこ、私の未来に何もない。
だから、いつまでも吹き荒れるだけの、そんな将来はいらない。
目的の蜃気楼、その場所までは、進めど進めど、何も見えてこない、見えるのは茶色の砂煙ばかり。
目も開けていられず、そしてドロドロの声はしわがれて、音を一切響かせない。
水分も植物も、何もかも死に絶えた大地には、私を癒すものも何もないだろう。
私のしてきた事は、”そういう事”、ただただ愚行なる所為だったから。
あの時彼が浮かべた、意味深な笑みの意味を考える。
裏切られたのか、利用されたのか、もう分からない。
ただ、じっとこちらを見ていた、その瞳には、私に対する一片以上の興味、好奇心があった事は確実。
それだけは今だに、心の何も無くなった筈の、その部分をわずかばかりだけ奮わせた。
でも、それで終わり、ただそれだけの事象だった。
遥か彼方の、あるかも分からない蜃気楼が見えてきた。
そこには人がいた。
私の、たった一人の肉親、再会しても、何も出来ず、刃を向けてしまった人。
「何をして、そしてこれから、何をしたいんだ?」
意識が明瞭になる。
やはり、人間は一人では生きられない、でも、もう、私は生きていてはいけない人間、それはもう絶対に変わらないのだから
私は間違っていたのだろうか?
「私は、間違っていたのでしょうか」
心情が、そのまま素直に、口からまろび出た。
「ああ、間違っていた、それは他ならない俺が、どこまでも証明し続ける」
きっと、そうなのだろう、あんなにも酷いことをしてしまったのだから。
ただ復讐に身を、全力で投じている時は、考えも付かなかったのだ。
たった一人の旅の、その終着点が、こんな有り得ないほど、こんな、ただただ虚しいだけの現実だったなんて。
一心不乱に戦ってきた、その答えの先が、まったく認められないモノだったのだ。
つまりは、彼に、完全にどうしようもなく、騙されていたのだ、ただそれだけの結果が今の全て。
「私は、私は、ただ、ただ」
いくら首を子供みたいに振ってみても、意味などない、いやいやする動作は惨めにしか映らないだろう。
「これを、君にあげよう。 好きなように使ってくれ。 これが、たぶん、俺にできる、最初で最後の、慈悲だ」
目の前に銀色の剣が渡される。
丈の長い幅広の、立派な実践仕様の剣だ。
これに何の意味があるのか、私は考える。
目の前の人間は、決して無駄なことをしない、この剣にも何かある、私はそう思ったのだが、もう思考をそこで放棄した。
ただ、楽になる道を、この時は全力で選びたかった。
もう涙も枯れ果て、どうしようもなくなっているのだ、そう、ただただ純粋に死に対する渇望が私を突き動かした。
最後に感じるのは、赤い色をした何か、自分の根源に眠るモノ。
その真の色合いは、緑だった気がする、おそらく初めは緑だったものが、血の被り過ぎでそう見えたのだろう。
まだ、最後に意識が一片程度、残っていた。
つぎ、生まれる時は、決して失敗をしない。
一部のミスすら許さず、決して何者にも屈しない。
ただただ絶望に沈み行くだけだった、そんなわたしを、私のような人をただただ愚直に、無限に救い続けるような人になりたい。
そんな、そこには何も無いはずなのに、欲望が溢れて、どうしようもなくなった時、真に私の意識は強制中断、終了された。




