幻想夢想世界蚊帳-ノースラストまでの道中譚
「あぁ~暇だね」
直属の騎士団だけを、北の最果て”ノースラスト”に派遣した。
自分はというと、そこの”城壁”の視察をほっぽりだして、此処で寛いでいる。
アトランティックシティは今日も騒々しい、まったく、なんというかメカメカしい騒々しい。
せっかく、超大晴天で青空が眩しくて清清しいのに、幾らか都市のうざったい空気に侵食されてしまっている。
なんだか気分も悪くなってきた。
「そうだ、あのルートで、、、偶には久々に、若い、若すぎる日々を思い出す、ついでだ。
僕もノースラストに、行くか、そうだ行きたくなって来たぞ」
歩きながら思考、都市の最外辺まで直通のバスはないので乗り継ぎ、其処に到達した。
一面が灰色と黒色と砂色で埋め尽くされて、どうにもよく分からないが酷く退廃的に見える。
いや、事実此処はもう絶無に不要な場所として、退廃し廃墟然としている。
ずっと向こう、地平線が続く限り、アスファルトと砂煙とゴツゴツした岩場等々のミックスされたような壮大光景、地帯だ。
此処は遥か、というには言い難い昔の昔、錬金列車が数百、数千も路線を連ねていた、その成れの成れ果て、その場所だ。
転移魔法が開発され、絶対主流になっていらい、完全に不要になり見捨てられたのだ。
一部のマニアにすら空中列車にとって変わられ、今では一両たりとも運行しているかどうか。
そんな場所でも、僅かには、いや割とのレベルで人気がある。
ロックスキーヤーである。
彼らは、まるで雪地でスキーをするように、地面を疾走するのだ。
世界を北に、無限に下るかのように続く地形ゆえに、ここは、そんな彼らにとって天国のような場所なのだ。
一度に数百メートルも、落下するかのように跳躍したりするので、落下の衝撃で身体が滅茶苦茶にならないか見ていて酷く心配だ。
「行くかぁ、、」
そんな場所を、僕は身一つで、ただ全力で走る。
風を切る、切り、一度に何百メートルも落下して、受身も大してとらずに、異能ような力で強引に最大疾走。
だいたい、どれくらいの距離を走れば、此処から、”一応の”北の終着、果てのノースラストに着くのか?
記憶に大して残って無いので、とにかく、適当に全力疾走すれば、それなりの適度な時間で到達するのだろう。
だいたいロックスキーヤーが、大して装備してない軽装備状態でいるのだ、次の町到達に何日も掛かるとは思えない。
何キロメートルほど、ただ愉快に、享楽と悦楽を貪るだけかのように、傍からは自殺志願者の走りぬいただろうか。
終着に辿り着いた。
しかし、道はまだ続く。
そう、此処は”一応の”北の最果てっと定義付けられている、だけだ、その先にはまだ大地が存在している。
広大無辺に広かった道は、終着に至るにつれて狭まり、もう二車線程度の幅である。
向こうには、終着より先に続く、ぽっかりと向こうの方だけ覗かせた、大穴のような空虚な、そう見える空間が存在していた。
「行ってみるか?」
一人呟く、、、馬鹿な考えだ。
終着より向こうは、どうなっているか分からない、未知の領域なのだ。
第一に無法地帯であるし、どんな幻獣の輩が跳梁跋扈しているか、魑魅魍魎が溢れているかも分からない。
まあつまり、絶対未知理解不可能領域なのだ。
「さて、とりあえず、よっと」
二車線に狭まった、錬金列車の路線の成れの果てから、ぴょんと下方、二階程度の上方から、下の道路道に落ちる。
そう、此処はもう”ノースラスト”市街、中心地の一角だ、にしては随分と、閑静と思えるだがね。
テクテクと人通りのまばらな、オフィス街のような場所を抜けると、突然視界が開ける。
広大で青々とした、競技場か運動スポーツ場のような場所に、我らが騎士団の面々がいた。
「ナルコ様!」
一人ぴょんと、幼女にしか見えない奴が飛び出し駆けてきた。
「おう幼女、僕も来ちゃったよ」
「幼女って、貴方もずいぶん幼女じゃないですか!」
「はあ? 僕はせいぜい少女、君は幼女、オーケーぃ?」
「はぁ、、もうそれでいいです。
どうして突然此処に来たんですか? アトランティックで待ってるんじゃ?」
「いや、地上を、錬金列車のあったルートを、偶には歩きたくなってね」
「あっ!あそこをわざわざ使って来たんですかぁ!」
「うん、何か問題でも?」
「おおありですよ!
大して治安も何もあったもんじゃない場所を、勝手にうろうろつらつら歩かないでくださいぃ!」
「しょうがないないぁ~次から気をつけるから許してね」
「うぅ、いつもそんな事いってぇ、絶対に従ってくれないじゃないですかぁ~」
「なんだ分かってるじゃん。
それじゃあ、僕も城壁の下調べ、いな、視察に行ってくるよ」
「うぅうぅ、もう何でもかんでもして下さいよ」
「うん、それじゃ僕は僕のしたいようにさせてもらう」
城壁、言葉のままに、北に高く聳え立つモノだ。
しかし、そこは実際、迷宮か山脈のように、入り組んだ壁と壁が複雑に軒を連ねる場所とも言える。
その天辺に寝っ転がり、危なげな立ち位置で遥かなる向こうを見やる。
「いい景色だね、さすが田舎の本領発揮ってところかな?」
暫し、黄昏く、そんな風に過ごして、先ほどの場所に戻る。
「帰りは、ちゃっかりバスに乗るんですね」
「当たり前だよ、あのルートは下り道だからこそ、だよ。
だれが好き好んで、そのルートを逆送したがると思う? 率直に言って、上り坂なんだよ?」
「私は、下りでもそんな道通りたいとは思いませんがね」
「ロマンが足りてないから、そんな事が言えるんだ。
あの広大壮大な無辺に無秩序な地形をみて、草すべりをする子供のような心境にならないなんて、可愛そう」
「うぅ、勝手に哀れまないでください」
「かわいそう」
ぞろぞろと騎士団の連中ともどもバスに乗り込み、最後に車内に入る、そして扉を閉めた。




