Chapter 11
「ああ……最初の束には何もなかったな」
セイイチは疲れた様子で背もたれに寄りかかった。
サトは目をこすった。
「そうだな。なんか飽きてきた……」
最初の新聞の束は、ほとんど役に立たなかった。
三人は一時間近く、黄色く変色した新聞をめくり、昔の事件や町の記録を調べていた。
だが、探していた死亡事件についての記事は見つからなかった。
奇妙な事件もない。
廃校についての記述もない。
長野町と、この謎を結びつけるものは何もなかった。
キヨシは二人に返事をしなかった。
彼はすでに――
二つ目の束を開いていた。
一枚、また一枚と、新聞をめくっていく。
二つ目の束は、最初のものよりもさらに古かった。
インクがひどく薄くなり、文字を読むのも難しいものがあった。
そして――
キヨシの手が止まった。
彼の目は、ある一枚の新聞に釘付けになっていた。
紙面の中央付近に、大きな記事が載っていた。
キヨシは新聞を手元に引き寄せた。
その表情が、ゆっくりと変わっていく。
「みんな……こっちに来て」
セイイチが顔を上げた。
「ん?」
サトもキヨシのほうを向く。
「どうした?」
キヨシは新聞を持ち上げた。
「これ」
セイイチが近づき、見出しを確認した。
しばらくの間、何を見ているのか分からなかった。
「待って……これ、学校についての記事か?」
「違う」
キヨシが静かに答えた。
指を記事の下へ動かす。
「何年も前に起きた死亡事件についてだ」
三人は新聞の周りに集まった。
記事には、長野町に住んでいた**五人の十代の若者**が、比較的短い期間のうちに亡くなったと書かれていた。
事故で亡くなったとされる者もいた。
自殺として記録されている者もいた。
キヨシは記事をもう一度読んだ。
「五人の若者……」
声が小さくなる。
「自殺……それに事故?」
サトは新聞を見つめた。
「本当に、自然な死だったと思うか?」
キヨシはサトを見る。
「どういう意味だ?」
サトは新聞を指差した。
「同じ時期に何人もの若者が亡くなって、そのうち何人かは事故、ほかの何人かは自殺ってことになってるんだぞ……」
少し間を置く。
「何か共通点があるんじゃないかって思わないか?」
キヨシはすぐには答えなかった。
そのまま記事を読み続ける。
一枚目の新聞の下に、もう一枚の古い新聞があった。
紙はさらに黒ずみ、見出しもほとんど読めなくなっていた。
セイイチは慎重にそれを広げた。
そして、目を見開いた。
「待てよ」
新聞を近づける。
「なんだよ、これ……?」
キヨシが身を乗り出した。
見出しには、長野町で広がっていた噂について書かれていた。
呪い。
記事によると、何人もの若者が亡くなったあと、町ではさまざまな噂が広まり始めたらしい。
町に昔から伝わる呪いが、死亡事件と関係していると信じる住民もいた。
セイイチは眉をひそめた。
「呪い……?」
キヨシは記事から二人へ視線を移した。
「この呪いのせいで、人が死んでいたってことか?」
サトは少し首を横に振った。
「でも、死亡記録では事故や自殺ってことになってる」
キヨシは新聞を見つめた。
「そこがおかしいんだよ」
少し考える。
「でも、事故は起こるし、家族の問題やストレス、ほかの理由で自殺する人だっている」
サトは頷いた。
「その通りだ」
三人は黙り込んだ。
一瞬、呪いという話が、それほど信じられないものに思えてきた。
本当に、超常現象なんて関係なかったのかもしれない。
ただ、いくつもの悲劇が起きて、それを見た人々が一つの物語にしただけなのかもしれない。
しかし――
その時、キヨシはあるものに気づいた。
もう一つの記事。
それはさらに古いものだった。
紙はもろくなっていて、隅の一部はすでに破れていた。
キヨシは慎重に広げた。
見出しが、すぐに三人の目を引いた。
**桜島学校、正式に閉校**
その下には、小さな文字でこう書かれていた。
**疑惑、絶えない噂、そして相次ぐ生徒の死亡を受けて。**
誰も話さなかった。
キヨシの目は記事に釘付けになっていた。
サトの表情が変わった。
「生徒の死亡……?」
声はほとんど聞こえないほど小さかった。
キヨシはゆっくりとサトのほうを向いた。
「サ、サト?」
サトはキヨシを見る。
「……何?」
キヨシは唾を飲み込んだ。
「お前の姉ちゃん……」
少し迷う。
「お前の姉ちゃんって、桜島学校に通ってたんだよな?」
サトは答えなかった。
ただ、新聞を見つめていた。
部屋が突然、さらに静かになったように感じられた。
ようやく、サトが口を開いた。
「ああ」
キヨシは再び記事を見た。
「俺……」
見出しを指差す。
「お前の姉ちゃんは、あの学校に通ってたんじゃないかと思う」
サトの目が大きくなった。
「でも、あの学校は廃校になってたんだぞ」
「そうだよ」
キヨシは新聞に顔を近づけた。
「日付を見てみろ」
三人は、古い記事に印刷された日付と、自分たちがすでに知っている情報を照らし合わせた。
今の桜島高校が建てられたのは、**たった五年前**だった。
森の中にあった廃校は、それよりもずっと古い。
そして記事によれば、元々の桜島学校は正式に閉校していた。
キヨシは、少しずつ情報をつなぎ合わせていった。
「じゃあ、俺たちが見つけた学校は……」
声が小さくなる。
「もしかしたら、元々の桜島学校なのかもしれない」
誰も笑わなかった。
誰も冗談を言わなかった。
三人はただ、新聞を見つめていた。
キヨシは最初の新聞の束を思い出した。
最近の死亡事件については、何も書かれていなかった。
奇妙なこともない。
呪いについて説明できるものもなかった。
だが、今なら分かる気がした。
死亡事件は、ずっと昔に起きたものだった。
噂は時が経つにつれて消えていった。
人々は年を取った。
町は前へ進んだ。
そして、やがて――
みんな忘れてしまった。
それとも……
忘れることを選んだのだろうか。
セイイチが沈黙を破った。
「でも、もし呪いじゃなかったら?」
キヨシはセイイチを見る。
セイイチの表情は真剣だった。
「もし、誰かがあの人たちを殺したんだとしたら?」
サトは眉をひそめた。
「連続殺人犯?」
「そうかもしれない」
セイイチは新聞を指で叩いた。
「本当の犯人からみんなの目をそらすために、誰かが呪いの噂を広めたんじゃないか?」
その可能性が、部屋の中に残った。
サトはゆっくりとキヨシを見た。
「じゃあ……」
声が小さくなる。
「キヨシが見た女はどうなんだ?」
キヨシの表情が固くなった。
サトは続けた。
「あの場所と関係があるなら……」
窓のほうを見る。
「もしかしたら、あの女がやったのかもしれない」
キヨシはすぐに首を横に振った。
「でも、あの人はそんなことをするようには見えなかった」
サトはキヨシを見つめた。
「見た目だけで判断してるのか?」
キヨシは答えなかった。
あの女の優しい声を思い出した。
落ち着いた動き。
何もおかしなことなどないかのように、そこに立っていた姿。
そして――
あの笑顔。
キヨシの腹のあたりが、ぎゅっと締めつけられた。
「分からない」
視線を下げる。
「でも、あの人が殺したとは思えない」
また部屋が静かになった。
突然、セイイチが立ち上がった。
「だったら、確かめる方法は一つしかない」
サトはセイイチを見る。
セイイチは窓のほうを指差した。
「もう一度行くんだ」
サトは瞬きをした。
「どこに?」
「あの学校だよ」
キヨシが顔を上げた。
セイイチの表情は、いつになく真剣だった。
「あの廃校をちゃんと調べるんだ。もし死亡事件と関係があるなら、何か残ってるはずだろ」
サトは黙っていた。
そして、ゆっくりとキヨシを見た。
キヨシには、サトが何を考えているのか分かった。
あの女のことだ。
突然、セイイチが口を開いた。
「もし、あの女が俺たちも殺したらどうする?」
サトはセイイチのほうを向いた。
数秒間、じっと見つめる。
そして、ため息をついた。
「お前、本当に怖がりだな」
セイイチの目が大きくなる。
「行こうぜ!!」
サトは後ろに倒れそうになった。
「はぁ!?」
「あの学校に行くんだよ!」
キヨシは思わず笑った。
「ずいぶん簡単に気が変わったな」
「怖くなんかねえよ!」
「さっき、あの女が俺たちを殺すかもって言っただろ」
「かもって言っただけだ!」
サトは首を振った。
「バカばっかり……」
キヨシはかすかに笑った。
だが――
廃校の近くに立っていた女を思い出すと、その笑顔は消えた。
なぜか、今思い出すと、あの時よりも冷たく感じた。
キヨシは窓のほうを見た。
空には暗い雲が集まり始めていた。
遠くで雷の音が響いた。
キヨシは時間を確認した。
「あ……」
立ち上がる。
「そろそろ帰らないと」
セイイチがキヨシを見た。
「もう?」
「母さんとサラが家にいるから」
カバンを手に取る。
「昨日のこともあったし、あまり長い間、一人にしたくないんだ」
サトは頷いた。
「そうだな。帰れよ」
キヨシはドアへ向かった。
その時、セイイチが何かを思い出した。
「あ、キヨシ」
キヨシは振り返る。
「ん?」
「お前の母さん、俺たちが小さい頃、よくあの団子を作ってくれただろ? 覚えてるか?」
サトは不思議そうな顔をした。
「は? 俺たち、まだ子供だろ」
「うるせえよ、バカ」
キヨシは笑った。
「ああ。覚えてるよ」
セイイチはニヤッと笑った。
「また食べたいな。お前の母さんに作ってくれるよう頼んでくれよ」
キヨシは笑顔を見せた。
「分かった。聞いてみるよ」
少し間を置く。
「母さんの機嫌がよくなったらな」
その笑顔が、少しだけ消えた。
昨日の言い争いを思い出した。
「じゃあ、また明日」
キヨシは外へ出た。
まだ雨は降っていなかった。
しかし、空は暗い雲にほとんど覆われていた。
キヨシは一人で家へ向かった。
風が冷たくなっていた。
空を見上げる。
「明日、母さんにカレーライスでも作ってもらおうかな……」
かすかに笑った。
「昨日のことで、まだ怒ってるだろうし、ストレスも溜まってるだろうな」
歩いていると、道の脇にあるものが目に入った。
キヨシは足を止めた。
チューリップだった。
その隣にしゃがみ込む。
「あ……チューリップだ」
ここ数日、何度か目にしていた花だった。
驚くほど早く成長していた。
キヨシは、しばらく花を見つめた。
「母さん、チューリップが好きなんだよな……」
小さな笑顔が浮かぶ。
「俺が小さい頃、父さんはよく母さんにチューリップをたくさん買ってきてた」
その笑顔が、ゆっくりと消えていった。
「あの頃は……」
ため息をつく。
キヨシはそっと花に触れてから、再び家へ向かった。
もうすぐ着く。
だが――
何かが違う気がした。
家は通りの突き当たりにあった。
いつもなら、家が見えるだけで少し安心できた。
今日は違った。
妙に遠く感じる。
まるで、そこだけ取り残されているようだった。
家の上にある雲は、ほかの場所よりも暗かった。
雨粒がいくつか、キヨシの顔に落ちた。
彼は歩く速度を上げた。
また一滴。
そして、もう一滴。
空に雷鳴が響いた。
キヨシは玄関にたどり着いた。
ドアノブを握る。
**カチッ。**
ドアが開いた。
「母さん、ただいま」
返事はなかった。
キヨシは家の中へ入った。
家の中は暗かった。
居間のほうを見る。
何も動いていない。
すべてが静止していた。
昨日の言い争いで壊れた物も、まだ床に散らばったままだった。
何一つ片づけられていない。
その静けさは、いつもよりもずっと重く感じられた。
キヨシはしばらく立ち尽くした。
「母さん?」
何も返ってこない。
突然、稲妻が走り、家の中を照らした。
ほんの一秒にも満たない間、居間が明るくなった。
家具。
壁。
床。
すべてが、はっきりと見えた。
そして、光が消えた。
再び暗闇が戻る。
キヨシは固まった。
何かが違っていた。
何が違うのか、うまく説明できない。
彼の目が、ゆっくりと居間へ向かう。
再び稲妻が走った。
今度は、窓から差し込んだ光が部屋を照らした。
そして、床に影が落ちた。
長く、不自然な影。
キヨシはそれを見つめた。
息が止まった。
その形は、はっきりと分かった。
誰かが、吊るされている。
一瞬、目の前で何が起きているのか、頭が理解することを拒んだ。
「……うそだ」
声は、ほとんど出なかった。
キヨシは一歩前へ進んだ。
家の中は静かなままだった。
そして、もう一歩。
床を踏む足音は、ほとんど聞こえなかった。
彼は必死に唾を飲み込んだ。
「母さん……?」
返事はなかった。
キヨシの手が震え始めた。
彼はさらに近づいた。
一歩進むたびに、床に落ちた影の形がはっきりしていく。
キヨシは居間のすぐ手前で足を止めた。
ゆっくりと顔を上げる。
そして――
そこにいた。
母親だった。
雷が走り、部屋全体が明るくなった。
そしてキヨシは、居間に吊るされたまま動かない、母親の死体を見た……




