14話 角を生やした男の正体
「おいおい、こんな時に何冗談言ってるんだよ。お前のその角と尻尾、実験体にされてたんだろ?」
「いえ、これは生まれつきですよ。魔人病という病気です」
「魔人病!?そう言えば、聞いたことあるような…。その…知らなかったんだ、悪い」
「いえ、珍しい病気ですから、気にしないでください。それよりも、なんか急いでいたようですが、大丈夫ですか?」
「そっそうだった!追われてるんだよ!おい、にいちゃん!これもなんかの縁だ。助けてくれねーか!詳しい話は後でするからさ」
すごい剣幕でお願いしてくる男性。気になることも多いし、一旦僕の家に匿ってあげよう。
「分かりました。僕の家が近いので、一旦そこで話を聞かせてください」
「ほんとか!助かるよ!」
「こっちです。ついて来てください」
ガチャ
「あっラートさん、おかえりなさい!キャッ!」
お風呂上がりでバスタオルを巻いただけの格好をしたテオが、驚きその場にうずくまった。
「ラートさん!お客さんを連れてくるなんて聞いてないですよ!一旦外に出てください!」
慌てて、男性を押して、外に出る。
「にいちゃんも隅におけないねー」
「からかわないでくださいよ。テオが魔法を放っていたら、僕たちは今頃あの世でしたよ」
「えっ!?」
「死にたくなかったら、テオの前では控えておいてくださいね」
「はい…」
「ラートさんもう入っていいですよ」
着替えたテオの許しをもらい、室内に入り、ようやく話しを聞くことができる。
「まずは、ありがとう!」
と男性が頭を勢いよく下げる。その拍子に机に頭をぶつけゴンと鈍い音がした。これまでのいきさつを顔を上げて男性は話し始めた。
「俺の名はミリー・ゲイルという。もうどのくらい前なのかも分からないが、この森を抜けた先にあるコレッタの街で、商店を営んでいた。当時は筋骨隆々でな、スライムやゴブリン程度なら、俺でも倒せたんだ。だから、経費削減のため、一部商品は自分で集めていた。その日もいつもみたいに、薬草を災いの森に採取しに来てたんだ。気づいた時には武器を持った4人組に取り囲まれていた。抵抗せず、大人しくしていたんだが、後頭部に一発もらって気絶させられた。そして、気づいたら、檻に入れられていた」
「人攫いにあったということですか?」
「あぁ、まさかこんなおじさんを攫うやつなんているとは考えてもなかった。モンスターにだけ気をつければいいと油断してたのさ。薬草採取ならFランクのクエストだ。ギルドに依頼しても大した額にはならない。大人しく、冒険者に任せておけばよかったと何度後悔したことか」
「僕でも、ミリーさんと同じようにしていたと思いますよ」
「ラートさんだっけか?そう言ってもらえると少しだけ救われるよ。脱線してしまったな。話しを戻すと、攫われて気づいたら、檻に俺はいた。その檻はけっこう広くて、俺以外にも十人は閉じ込められていた。幼い子供からお年寄りまで、年齢性別問わずいた。その檻の中では特に何かされるわけでもなく、食事も与えられていた。ある日、食事をした時にやたらと身体が熱くなり、苦しくなる時があったんだ。毒でも盛られたのかとその時は思ったんだが、それなら、わざわざ攫う必要なんてない。それに、苦しそうにしていると食事を届けてくれていた者は介抱してくれたんだ。何が目的なのか始めはさっぱりだった。しかし、食事をすると苦しくなることは度々あって、一番幼い子が最初だったんだけど、ある日急に角が生え始めたんだ」
そう言いながら、ミリーさんは自身の頭に生えた角に触れていた。
「角が生えた者は檻から出され、別のところへ連れて行かれた。そして、その者たちが戻ってくることはなかった。別の檻にいるのか、それとも…」
ミリーさんは言葉に詰まっていた。嫌な沈黙が流れる。ミリーさんは水を一口飲み、また話し始めた。
「そして、一人また一人と檻の中の人は減っていった。俺を含めて残り三人となっていた。そして、たまたま三人同時に角が生えたんだ。俺たちもどこかへ連れ去られる。もしかしたら、殺されるかもしれない。居ても立っても居られなくなった。俺たち三人はある計画を立てた。大人しく寝ているふりをして、見張りが俺たちの角を確認し、連れ出すために鍵を開けた瞬間、一斉に襲いかかったんだ。これまで、特に何も抵抗しなかったのが効果的だったようで、かなり杜撰な警備だった。俺たちは屋敷から抜け出し、一人でも多く助かるため、バラバラの方角に逃げた。そして、逃げている最中にラートさんを見つけた。ラートさんの見た目から俺はてっきり、あるのかは分からないが他の檻から、俺たちみたいに逃げ出して来た人だと思ったんだ」
「そうだったんですね。それで、僕に早く逃げようって言ってたんですね」
「正直、追手がどこまで来ているのか、どれだけの人員が動かされているのかは分からない。できれば、しばらくの間、匿ってくれると助かる。どうか!この通りだ!」
ミリーさんはまた、頭を勢いよく下げた。
「テオ、ミリーさんをしばらくここに置いてもいいかな?」
「もちろんですよ!それにしても、角が生えるのは魔人病の症状ですよね?これまで普通に生活してきていきなりなることってあるんですか?」
「いや、そんな事例は聞いたことがないけど、少し思い当たる節はある。テオも覚えているでしょ?僕が口にしたら、魔人病が悪化した時のことを」
「えっ!それって」
「おそらく、ミリーさんたちは食事にセイレーンの肉を混ぜられていたんだと思う。セイレーン討伐の依頼がたくさん出ていたのは、まさかこんな人体実験のためだったなんて…」
「許せないですね!どうしますか?ラートさん」
「知ってしまった以上、このまま放っておくことはできない。明日にでもギルドや聖衣団にも掛け合ってみよう」
続く




