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日米転生1945-2023 -日出づる国、東西にあり-  作者: 照山
第1章 戦後編
11/11

1-3 東京湾

1945年8月30日14:00 日本国神奈川県 厚木基地


日本海軍の航空隊が拠点としていた滑走路に、大型輸送機「バターン号」が着陸した。滑走路の周囲には、武装解除を済ませた日本兵たちが複雑な面持ちで警備に当たっていた。タラップが降ろされ、一人の男が姿を現した。


コーンパイプを咥え、サングラスをかけた大柄な男。連合国軍最高司令官、ダニエル・マーシー陸軍元帥である。

マーシーはゆっくりとタラップを降り、焦土となった日本の地にその足を踏みろろした。彼を出迎えたのは、深い緊張と静寂だった。一触即発の危機も懸念されたが、東宮俊彦内閣による徹底した全軍への自衛戦闘以外の禁止と終戦命令により、混乱なく米軍の第一陣が進駐を果たしたのだ。


「厚木から東京へ。占領の歴史が始まる」


マーシーの到着は、日本が名実ともに連合国の管理下に置かれたことを象徴していた。アメリカの存在感は、焦土に立ち尽くす日本国民に戦争の終わりと敗戦の現実を容赦なく突きつけていた。



1945年9月2日9:00 日本国・東京 東京湾 BB-63「ミズーリ」USS Missouri 艦上


ポツダム宣言受諾が公表された玉音放送からおよそ半月後のこの日、東京湾上のアメリカ戦艦ミズーリの甲板上において降伏文書調印式が行われることになった。調印式には天皇及び大日本帝国、東宮内閣を代表して重信蒼外務大臣と大本営から梅澤晃一郎参謀総長が出席した。また、連合国側から米国・中華民国・イギリス・ソ連・オーストラリア・カナダ・フランス・オランダ・ニュージーランドの各国軍代表が参加した。代表一覧は以下の通り


アメリカ合衆国  マーク・ロイド海軍元帥

中華民国     宗琳杏国民政府軍令部部長

イギリス     ノーラン・シェパード海軍大将

ソビエト連邦   ジャン・クリブランド中将

オーストラリア  リック・ブレイダー陸軍大将

カナダ      ローラン・マット・フェルナンデス陸軍大佐

フランス     フェリペ・ルーク陸軍大将

オランダ     コリス・ヘルベッツ海軍中将

ニュージーランド レオナード・モンザ・イザート


以上の者が各国軍を代表して調印式に参加した。また帝国陸軍から本松秀吾、永田康平、小杉貴教の3名と帝国海軍から加宮憲人、茂木修一、柴田武雄の3名、外務省の岡本東一終戦連絡中央事務局長官、酒田俊平秘書官、大谷九郎終戦連絡部長が日本全権随員として参加した。


マイクの前に立ったダニエル・マーシー最高司令官が、重厚な声で宣言を発した。


「我々はここに、勝利を得た諸国を代表し、平和の回復に向けた約束を交わすために集まった——」


マーシーの手招きにより、重信蒼外相がテーブルへと歩み寄る。震える手で万年筆を取り、用意された降伏文書の署名欄へと思いを込めてペン先を走らせた。続いて梅澤参謀総長が軍を代表して署名を行う。提示された降伏文書に刻まれた条項は、日本の主権と軍権の完全な喪失を意味していた。以下が日本が調印した降伏文書内容である。


・天皇、日本国政府及び大本営の名においてポツダム宣言を受諾する


・所在地に関わらず全日本軍及び日本の支配下にある全軍隊に対し無条件降伏を布告する


・日本軍と国民に対し、敵対行為を中止すること、船舶・航空機、軍用非軍用を問わず財産の毀損を防ぐこと及び連合国軍最高司令官又はその指示に基づき日本国政府の諸機関が下す要求・命令に従うことを命じる


・その所在地に関わらず、全日本軍及び日本の支配下にある全軍隊の指揮官に対し、自身及び指揮下の全軍隊が無条件降伏する旨の命令を直ちに発することを命じる


・公務員と陸海軍の職員に対し、本降伏実施のために連合国軍最高司令官が発する布告・命令・指示に従うこと及び引続き各自の地位に留まり非戦闘的任務を行うことを命じる


・日本国政府は、日本の政治・軍事・行政に関する統治権が、連合国最高司令官の権限の下に置かれることを受け入れ、連合国軍による日本の占領及び統治を妨げないことを保証する。


・ポツダム宣言を誠実に履行すること及びそのために必要な命令を発しかつかかる一切の措置を取ることを約する


・日本国政府と大本営に対し、現に支配下にある連合軍俘虜及び被抑留者を即時解放し保護・手当・給養及び移送のための措置を命じる


・天皇及び日本国政府の国家統治の権限は本降伏条項を実施する為適当と認める措置を執る連合国軍最高司令官の制限の下に置かれる


1945年9月2日、大日本帝国は名実共に滅亡し、連合国による統治の下へと組み込まれた。しかし、調印式を終えて戦艦ミズーリを後にする重信外相の胸中にあったのは、敗戦の屈辱だけではなかった。甲板の上で相対していたアメリカとソ連、二大国の代表者たちが見せた、互いを牽制し合う冷ややかな視線。


(主権を失ったこの国を、彼らはどう料理するつもりなのだ・・・)


平和の調印式という表舞台の陰で、すでに米ソによる日本の戦後処理を巡る醜い主導権争いが始まっていた。やがてこの二つの影が、日本列島を真ん中から切り裂く東西分断という未曾有の悲劇を引き起こすことを、まだ誰も知る由がなかった

次回も楽しみによろしくお願いします

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