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第七話 出陣、課外授業へ


 俺はエンリィとカレンを勇者アカデミアから連れ出して森の中へ来ていた。


「よし! これより二人には課題授業を受けてもらう。しかと取り組むように!」


 俺のテンションとは裏腹に二人は浮かない顔をして視線を下に向けていた。


「どうした、お前たち。やけにテンションが低くないか?」


「だってナオユキせんせー。絶対、私たちに過酷なことをさせるつもりでしょ?」


「その証拠にここはどこですか? 薄気味悪くて嫌な気配を感じるんですけど! 帰りたいんだけど」


 出だしからエンリィとカレンは早く帰りたいオーラ全開だった。

 無理やり連れて来たことには変わりないが、それが不満を抱いている様子だ。

 この流れは少し不味い。出来れば率先して取り組むのが理想だが、不安を取り払う必要が出てきてしまった。


「そう言えば、エンリィ。その帽子、いつも被っているな。誰かの貰い物か?」


「はい! お母様からのお古ですが私の宝物なんです」


「そうか。似合っているよ」


「へへへ。ナオユキ先生に褒められた」


 エンリィはご満悦だ。


「カレン。お前、最近肉つきが良くなったな。鍛えているのか?」


「え? 分かりますか? 実は最近、筋トレを始めたんです。少しの間で効果出るんですね」


 まぁ、影で筋トレしているのを知っていたが、見た目はそこまで変化は見られない。

 この何気ない会話の目的は二人に不安を取り除くことになる。内容は正直どうでもいい。


「お前たち。俺が出した課題はやってきたか?」


「はい。勿論です」


「軽く目を通しましたよ」


 エンリィはともかくカレンはあまりやってこなかった様子だ。

 その証拠にちょっと目が泳いでいる。


「まぁ、今日の内容はその中のほんの一部だ。さて、課外授業の内容は察している通り、お前たちには実際にモンスターを倒してもらうぞ」


「えぇっ!」


「やった!」


 二人のリアクションは真逆だ。

 エンリィは落ち込み、カレンは嬉しそうである。

 二人に出した課題はモンスター図鑑だ。

 それにはモンスターの特徴や弱点が記された教科書である。


「と、言うわけでお前たちには聖剣を託すぞ」


 二人に聖剣を差し出すと「重っ!」と持つのがやっとの様子だ。

 普段は木刀を持たせている分、鉄の重みが直に来るだろう。


「ナオユキせんせー。こんな重たいやつ、扱えないよ」


「何を言っている。勇者は皆、それで戦っているんだ。大丈夫だ。使っているうちに慣れるさ」


「ひえっ!」


 二人に聖剣を持たせたまま、森の奥へと歩み寄る。

 この辺りに出没しているはずだが、とキョロキョロすると現れた。

 ビンゴだ。


「ナオユキせんせー。何かいるよ」


「あぁ、さて問題。あれはなんと言うモンスターでしょうか?」


「え? 知らないよ」


「はい! ウサポン!」


「エンリィ。正解だ」


 俺たちの前に現れたのは一頭身の茶色いウサギ? 

 別名、ウサポンと教科書には書かれている。

 まだ距離があるため、こちらの存在に気づいていないようだ。


「可愛い……」


 カレンは不用意に近づこうとするが、俺は静止させた。


「気を付けろよ。あいつは見た目の可愛さとは違って油断して近づいた敵を噛み付く習性がある」


「え? 可愛くない」


「でも、そこまで強くないようですよ。噛む力は強いようですが、それ以外は貧弱って書いてました」


「エンリィ。よく勉強しているな」


「えへへ。勉強は得意ですから」


「さて。お前らにはあのウサポンを倒してもらう」


「私たちが? 無理ですよ。だって勇者じゃないですし」


「いつか勇者になるんだろ? だったら今のうちに経験を積むことも悪くないんじゃないのか」


「そうかもしれないですけど、私たちができるとは思いません」


「安心しろ。そのために俺がいるんだ。何かあったら助けてやる。遠慮せずにいけ。まずはカレンだ」


「え? 一人でやるんですか?」


「当たり前だ。さぁ、今がチャンスだ。行ってこい!」


「うぅ……」


 カレンは聖剣を構えてウサポンに近づく。

 ウサポンはカレンの存在に気づいたようだ。


「やあぁぁぁぁ!」


 勢いよくカレンは走り出す。

 だが、ウサポンは大きな口を開けて構えた。

 寸前のところでカレンは怯んでしまう。


「いや。やっぱ無理。怖いよ」


 カレンは戦意喪失だ。


「カレン! お前なら出来る! 突っ込め!」


「ナオユキ先生?」


 俺は小さく頷いてカレンに合図を送る。

 カレン。これはただの練習だと思えばなんてことはないはずだ。


「はあぁぁぁぁぁ!」


 聖剣を突き刺すようにウサポンの身体を貫く。

 と言うよりもウサポンが自分から刺されに行ったような形でブシャーと血が吹き出た。


「やっ……た?」


 経緯は倒したとは言い難いが、結果的に倒したことに変わりない。


「うわあぁ! 血! 血!」


「カレン。やったな!」


「……ナオユキ先生。私、初めてモンスターを倒しました」


「よくやったぞ。これで勇者へ一歩前進だな」


 頭を撫でてやるとカレンは満面の笑みを浮かべた。

 まずはその返り血を拭いてやらないとな。


「ずるい。私もナオユキ先生にヨシヨシされたい」


「なら、あんたもモンスターを倒すことね」


「はい、はい。お前ら歪み合わない。大丈夫だ。エンリィだってモンスターを倒せるさ」


「本当ですか?」


「ただ、モンスターを倒すためには一つおまじないが必要だな」


「おまじない?」


「エンリィ。お前、この世で嫌いな人を思い浮かべてみろ」


「嫌いな人? そんな人いないけど」


「まぁ、誰でもいい。少し気に食わないやつの一人や二人くらいいるだろう」


「まぁ、いないこともないですが」


「ならそいつを頭の中に念じてモンスターを倒すんだ」


「そんな無茶な!」


「エンリィ。早速、モンスターが現れたぞ。行け!」


 エンリィの前に現れたのはバルーン。

 風船型のモンスターで特に害はない。ただ、生気を吸われるので多少の害は存在する。エンリィの初めての敵としては好都合の相手と言える。


「むむむっ!」


 エンリィは聖剣を構えた。

 だが、様子を窺っているだけで動こうとしない。


「もう! エンリィったら。ナオユキ先生。やっぱりあの子にモンスター討伐は早いと思います」


「まぁ、大丈夫だ。エンリィ! 嫌いな奴を思い出すんだ」


「嫌いな奴……」


 すると、エンリィの目が変わった。行くか?

 次の瞬間、目を鋭く細めて一気にバルーンと距離を詰めた。


「はあぁぁぁ!」


 パンッ! と、バルーンは綺麗に割れて討伐成功。


「やった……倒せた」


「やったな。エンリィ」


「ナオユキ先生! 私、やったよ!」


 俺に駆け寄るエンリィだったが、カレンは肩を回して距離を詰める。


「エンリィ。今、誰を頭に思い浮かべたわけ? まさか私じゃないでしょうね?」


「ち、違うってば。カレンちゃんじゃないよ」


「正直に言いなさい! 私に対する日頃の恨みをあのモンスターに込めたんでしょ?」


「違うってば。本当の本当に違うから!」


 何はともあれ、二人は無事に初モンスターの討伐に成功した。

 これは二人にとって大きな成果だった。

 それにしてもエンリィは誰を思い浮かべたのだろうか。

 まさか、俺ではないだろうな? と、そう信じたい。



ーー作者からの大切なお願いーー

「面白い!」

「続きが気になる!」

「早く次を更新希望!」


少しでも思ってくれた読者の皆様。

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