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第二十三話 編入、没落勇者たち


「断るってどういうことだ? これだけ頼んでなお、金も弾むって言っているのに何が不満だ。ナオユキ!」


 リーダーのダイガは逆ギレするように俺に突っかかる。


「どうしたもこうしたもお前らに指導する義理はないって言っているんだ」


「ナオユキ。かつての仲間が困っているって言っているのに見捨てるのか。こんなに頼んでいるのに! そんなに俺たちが憎いか!」


「そっちから追放しといてよく言うぜ。大体、お前らに少しでも教えてやろうって気持ちになれないのが気にいらないな」


「ど、どういう意味だ。やっぱり追放した俺たちを恨んで教える気になれないってことか?」


「そうじゃない。別に今更、過去のことでとやかく言うつもりはねぇよ。俺が言いたいのは今のお前たちに対してだ」


「今の俺たちだと?」


「誰も分からないようだから教えてやる。お前たちは楽をしてスキルを身に付けようと言う魂胆が見え見えなんだよ。没落しそうになって危機感を覚えるまではいいが、具体性が一切ない。自分たちに何が足りないのか、どうすれば没落せずに済んだのか。失敗して次に繋げるべきことをせず、周りが悪いだの仲間が悪いだの、結局周りのせいにして自分では何もしない。そんな奴に指導するなんて馬鹿馬鹿しいと思ったんだ。だったら好きなだけ没落して恥をかいて勇者なんて辞めてしまえ」


「ぐっ……」と、誰も俺の発言に対して言い返すことはしなかった。


 今まで現実から逃げていたことを言葉で教えられた分、四人は思い返すように下を俯いた。

 ようやく理解したか。と、俺は大きく溜息を吐く。


「まぁ、俺も鬼じゃない。お前らだって今からでも変えられるはずだ。今の俺のように。指導することを考えてもいいぞ」


「ほ、本当か? ナオユキ」


「あぁ。但し、条件がある。それが守れないのであれば帰るんだ」


「条件? 一体、どんな条件だ?」


「簡単だ。俺の言うことは絶対だ。反抗したり、投げ出すようなことがあればその場で指導を辞める。強制で勇者アカデミアから追い出す」


 四人は目を合わせる。

 今更、背に物は言えないと頷いた。


「分かった。ちなみにナオユキの指導で俺たちが変わるためにはどれくらいの期間が必要だ?」


「どれくらいかはお前たちのやる気次第だが、俺的には一ヶ月……いや、二ヶ月は必要だろうな」


「に、二ヶ月? そんなに掛かるのか?」


「当然だ。お前たちには基礎から学んでもらう。上級者向けの指導はそれからだ」


「基礎って俺たちは仮にも勇者としてのキャリアが十年以上あるんだぞ。それでも基礎から始めないとダメなのか?」


「キャリアなんて関係ない。何事にも基礎は基本だ。嫌ならいいんだぞ」


「ぐ、ぐぐぐ……」


「まずはその不要なプライドを捨てることから始めるんだな。どうする? 辞めるか?」


「わ、分かった。ナオユキの言う通りにしよう。それで強くなれるなら」


「安心しろ。俺が指導した生徒は優秀だ。ここで得た知識はこの異世界で幅広く活躍できる。絶対に無駄にはならないはずだ」


「強くなれなかったらお前を恨むぞ。ナオユキ」


「ふっ。まだ不要なプライドがあるうちは絶対に強くなれない。お前らのその腐った根性を叩き直してやるよ」


「俺の人生で一番の屈辱だな」


 ダイガは奥歯を力強く噛み締めた。


「ナオユキ。最低でも二ヶ月は掛かるって言うけど、僕たちはどこで生活をしたらいいんだ? この辺は宿もないし、野宿で過ごすって言うのも……」


「安心しろ。コースケ。うちには寮を完備している。まだ部屋は余っているし、そこを使うといい」


「本当か。助かるよ」


「さて。編入の手続きをしないとな。お前たち、ついてこい。生徒として迎え入れてやるよ」


「今更ながらナオユキ殿の生徒って変な話だな」


「それは言わない約束だ。ゴーリキ」


「二ヶ月も何をするのかしら。アカデミアってガキばかりで私たち浮きそう」


 グダグダ言う三人に対して俺は「早くしろ」と急かす。

 応接室に四人を入れて必要書類に記入をさせた。


「生徒は基本、未成年だから親の許可書がいるが、お前たちには不要だな」


「ナオユキ。それは嫌味ですか?」


「さて、入学金の頭金はそれぞれ払ってもらうぞ。こっちも商売だからな」


「わ、分かったよ。受け取れ」


 四人はそれぞれ現金でテーブルの上に差し出した。


「確かに。入学金、必要書類の記入漏れもなし。いいだろう。これで正式な手続きは完了した。ようこそ。お前たちははれて勇者アカデミアの生徒の一員だ。これから楽しく学ぼうじゃないか。諸君」


「……生徒になったのはいいが」


「……というよりも編入早々、卒業したいです」


「同感だ。一日でも早くここを出たい」


「私、おばさん扱いされないかな?」


 四人は勇者アカデミアの生徒になったことを誰一人喜んでいなかった。

 と、いうよりも早く卒業したいの一点張り。

 やっぱりこいつら何も分かっていない。


「まぁ、思うところはあると思うが、これはお前たちが望んだことだ。一日でも早く卒業したいのであれば俺の指導をしっかり守ることだ。いいな?」


「お、おう」


「さて。まずはお前らがこれから過ごす部屋や生活スペースを案内する。細かいルールもあるからしっかり守るんだぞ」


 あからさまに嫌な顔をされるが、俺は構わず四人を連れ出し、寮へ案内する。


「部屋は余っていると言ったが、言うほど余裕はない。四人部屋の大広間で過ごしてもらうぞ。トイレと風呂は共有スペースがあるからそこを使ってくれ。後、洗濯だが……」


「ちょっと。ナオユキ! 女の私もここで過ごせって言うの? 冗談じゃないわよ」


「安心しろ。アミカゼには別で部屋を用意してある」


「本当? 一人部屋ってこと?」


「あぁ、特別なVIPルームを用意してある」


「さすが、ナオユキ。気が効くじゃない」


 俺は寮の離れにあるアミカゼが過ごす部屋に案内する。

 だが、アミカゼの顔は笑顔から険しい顔に変わる。


「って! どこがVIPルームよ! どこからどう見ても倉庫じゃないの! こんなところで私に過ごせって? 冗談じゃないわよ!」


「女子寮は今、満員だ。安心しろ。五日後に卒業試験がある。それが終われば部屋が空くからそれまでの辛抱だな。ベッドや空調完備はあるから寝るだけであれば問題ないだろう」


「どのみち五日間はここで過ごさなくちゃならないってこと? あり得ないんだけど!」


「ちなみに卒業試験が通らなかったら次は二週間後だ。まぁ、その心配なはい。五日後に卒業試験を受ける生徒は優秀だから卒業はほぼ間違いないだろう」


「全然フォローになっていないんだけど?」


「お前らが入ってくるタイミングが悪い。こればかりは諦めるんだな」


「キー! なんなのよ! もう!」


「アミカゼ。部屋が空くまで僕たちの部屋に来る?」


「絶対に嫌!」


 結局、アミカゼは倉庫での生活を強いられて後日一人部屋へ移った。

 


ーー作者からの大切なお願いーー

「面白い!」

「続きが気になる!」

「早く次を更新希望!」


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