第二十二話 訪問、没落勇者たち
職員室で生徒へのテスト問題を作成している中、廊下がやけに騒がしい。
ガッシャーン‼︎ と窓ガラスが割れる音が耳に入ったことで俺は席を立つ。
「何事だ!」
廊下に出るとカレンとルリディアが尻餅をついた状態で窓ガラスの一部が床に散乱していた。
喧嘩? いや、現状を見る限り台車が転がっているのでそれが当たったのだろう。積んでいる荷物がないと言うことは……。
「カレン。お前、台車に乗って遊んでいたな?」
「いや、その……」
「ナオユキ先生。私が悪いんです。一緒になって遊んでしまいました」
ルリディアはカレンを庇うように言う。
「カレン!」
「ご、ご、ごめんなさい。ナオユキ先生」
逃げようとするカレンに俺は服に付いた埃を払った。
「怪我はないか? 捻ったり、擦り傷は?」
「え? 無いですけど?」
「ルリディアは?」
「私も何ともないです」
「ほっ! 良かった。怪我がなくて」
「ナオユキ先生。怒らないんですか? 私たちガラス割っちゃったのに」
「物は後で何とかなる。それより、お前らの身体は一つだけだ。何かあったらそれこそ取り返しがつかない。無事で何よりだ」
「ナ、ナオユキ先生! ごめんなさい」
カレンとルリディアは自分の行いに反省したのか、涙が溢れる。
無意味に怒鳴りつけたところで生徒は反省しない。
だったら生徒の心に響く言い方をすることまでだ。
ルリディアがガラスの破片を片付けようと動いた時だ。
「ルリディア。怪我をするから俺がやるよ」
「いえ、私たちがやったことなのでナオユキ先生の手を汚すわけにはいきません」
「いや、やるよ。ルリディアはホウキと塵取りを持ってきてくれ」
「は、はい」
間違ったモノの使い方をするとどうなるのか、怪我をしたらどうなるのか。
俺は二人に丁寧に伝えた。それを理解させるのが俺の指導方針でもある。
「ナオユキ先生! 大変です」
エンリィは慌てた様子で俺を呼びに来る。
「今度は何を壊したんだ?」
「壊した? 何の話ですか?」
真面目なエンリィはカレンのようなハチャメチャはしない。カレンのことと頭が混合してしまったようだ。
「いや、何でもない。それより何事だ?」
「あの、ナオユキ先生に会わせろって人が来ています」
「会わせろって誰だ?」
「さぁ? 四人組の中年の人です。正門の前でお待ちしています」
誰だ? 今日、会う予定の人はいないはずだ。
と、考えれば編入希望の親御さんだろうか。
「分かった。知らせてくれてありがとう。エンリィ。お前は教室に戻っていろ」
「はい。少しヤバそうな人なので気をつけて」
ヤバそうな人?
一体、どこの誰が訪れたのだろうか。
俺は正門にいる人物の元へ向かう。
その人物が視界に入った瞬間、俺は毛が逆立つような感情が湧き上がった。
「お、お前たち……」
そう、そこに居たのはかつて俺と勇者パーティーを組んでいた仲間。
ダイガ・ブライナ。河原浩介。剛力太。そして俺と入れ替わる形で加入したアミガゼ・ゼファーの姿があったのだ。
「よう。ナオユキ。久しぶりだな」
「ナオユキが設立した勇者アカデミアって本当にあったんですね。なかなか立派じゃないですか」
「生徒さんは礼儀正しくて驚いたよ。しっかり指導しているとお見受けする」
「こんな辺境の地に建てちゃって買い物とか不便じゃない?」
かつての仲間は言いたい放題ベラベラと話す。
「テメェら。ここに何しに来た? 俺をバカにしに来たなら容赦しないぞ」
「ま、待て、待て! そう構えるなって。別に俺たちはお前をバカにしにわざわざこんなところに来たわけじゃない」
「こんなところだと!?」
「リーダー。余計なことを言わないで下さい。ナオユキも抑えて。本来の目的を忘れないで下さい」
「お、おう。そうだったな。揉め事になったら話すものも話せなくなる」
「今更、パーティーに戻れって話だったらお断りだ。今の俺は勇者から足を洗って指導する立場になっている。今更戻れないぞ?」
「いや、戻れなんて言わないさ。最後まで話を聞け」
「なら改めて聞こう。お前たちはここに何をしに来た?」
俺がそう答えると四人は目で合図をして頷いた。
そして一列に並んで全員、両膝を地に付けた。
「ナオユキ。お前に頼みがある。俺たちに勇者の指導をしてくれないか? この通りだ」
全員で頭を地に付けて土下座をする。
「はぁ? 何を言っているんだ。お前らは既に勇者だろ。今更、俺がお前たちに教えることもないはずだ」
「た、確かにその通りだ。しかし、ナオユキを追放してから何人もここを卒業した勇者と遭遇した。その度に俺たちは無様な姿を見せてきた」
「お願いだ! ナオユキ。せっかくAランクに上がったのにBランクに降格した。このままでいつCランクに降格するか時間の問題だ」
「俺たちの経験で二度も降格したら恥ずかしくて勇者なんて名乗っていけない」
「だからナオユキの指導で私たちを昇格できるように指導してもらえないですか?」
この通り! と、四人は誠意の気持ちを込めて頭を地面に擦り付ける。
この手の返しように俺は困惑した。
こいつらが俺に指導をしろだと? どういう風の吹き回しだ。
全く理解できない。だが、こいつらは冗談で言っているわけではなく大真面目だ。
「ナオユキ! 頼めるだろうか? 勿論、タダとは言わない。それなりの報酬は用意するつもりだ。俺たちに可能なものであれば何でも差し出す。な? 悪くない話だろ?」
ダイガは媚を売るようにゲスな笑顔を見せた。
「ふっ。お前らの気持ちはよく分かった。俺の指導なしでは勇者人生が危ないってことなんだよな?」
「あぁ、そうだ。助かるよ。ナオユキ。お前の指導があれば俺たちは再び勇者として……」
「だが、断る!」
俺のその発言で四人は固まる。
ーー作者からの大切なお願いーー
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少しでも思ってくれた読者の皆様。
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