014:「まふらー」「こたつ」「いしやきいも」
こんなに寒い日は、こたつが欲しくなる。縁側があることが契約の決め手になったこの部屋は、木造であることもあって冬の間は中々寒さが厳しい。
でも、こたつを買ったらこたつを布団代わりにしてしまいそうで、なかなか踏ん切りがつかない。
それに、ちゃんと動くエアコンが部屋に付いているのに、わざわざこたつを買わなくても、という気持ちもあったし。
そんな、考えるのが何度目かになることを考えていると、遠くから少し割れたようなスピーカー音声が流れてきた。
石焼き芋のトラックか。何となく久しぶりに食べたくなったので、財布とマフラーだけ掴んで行ってトラックを探すと、二本隣の通りで見つけることができた。
部屋に戻る途中、反対側から自転車がこちらに向かってきた。避けようとして道の端に寄ろうとすると、自転車のベルが鳴って。
ふと目をやると、知っている顔だった。
彼女は僕が住んでいるアパートの向かい側のアパートに住んでいる人で、ひょんなきっかけで親しくなった友人なのだけど、彼女のフレンドリーな接し方のお陰で僕はよくどぎまぎさせられる。
今日も誰かと遊びに出掛けていたのか、もこもこした上着を着てピンクのマフラーを巻いていた。かなりボリュームのあるマフラーだというのに、鼻の頭が赤くなっている。
「ただいまー。さっき焼き芋屋さんぽい音がしてたけど見つかんなかったよー」
「反対側にいたよ」
「えっ、どっち? 自転車で追いかければまだ間に合うかな!?」
彼女が焼き芋のトラックを追いかけようとするから。
「ちょうど買ってきたから! ……うちで食べない?」
「やった! 行く行く。焼き芋とか久しぶりだよ」
思い切って誘った僕の言葉を躊躇せずに肯定してくれるから、僕は少しでも好意を持ってもらえてるのかも、なんて期待する。
そのまま僕の部屋に帰って、牛乳を温めて。
「乾杯」
「何に?」
「えっ、えっと……芋に?」
「芋に? わかった。はい、久しぶりの焼き芋にかんぱーい」
温かいマグカップを、両手で包み込むように持って暖をとっている彼女を眺める。
「うあー、指先が溶けてジンジンする」
ホットミルクの湯気で眼鏡を半分曇らせつつ、まだ鼻先の赤い彼女が笑うから、僕も釣られて笑ってしまう。
何でもない日に乾杯。
何でもない、幸福な一日に。
それから、テーブルだとスカートの裾から見えるタイツの太ももが眩しいから、やっぱりこたつを買う必要があるな、と思う。




