015:「いるみねーしょん」「ごみばこ」「ちーず」
今日もまた残業中。師走って言うけど弟子のいない私ですら忙しい。
部署の人数自体は少なくないんだけど、小さなお子さんがいるお姉様達は朝早く出社する代わりに残業がないから、明日の朝までに間に合わせないといけないものは必然的にその他のメンバーに回ってくる訳で。
作業が一段落した私は、不要になった書類をシュレッダーにかけに行く。切りカスをゴミ箱に詰め込めるだけ詰め込んでたけど、持っていた書類を全部やったら流石に入りきらなくて、ゴミ捨てに行く羽目になった。
ゴミ捨てから戻ってくると、もう先輩一人しか残ってなかった。
「おー、ありがとな。重かったろ」
「いえ、別に」
「いやー、自分より大きな袋を担いでいくとは感心感心……痛だだだっ?!」
……背が平均よりちょっとだけ低いことをからかわれてちょっとイラッとしたので、座ってる先輩の肩甲骨の辺りを握り拳でグリグリしておく。
ふん、そこは肩コリに効くツボですよっ。
先輩の広い背中に触れるタイミングなんて中々無いけど、怒られないうちにやめとこう。
「まぁ、お前さんいつも頑張ってるからな、たまにはどっか飯でも連れてってやるぞ」
何ですと?!
「好き嫌いとか無かったよな?」
いえいえ、好きなものは先輩ですよ、っと。
まぁ、言えないですけど。
いや、急に誘われて混乱した。ちょっと落ち着こうか自分!
「好き嫌いは特に無いですけど、ラクレットチーズ食べに行きたいです」
「何だ? それ」
「大きいチーズです。溶かしながら焼いた肉とかにかけます」
まぁ、正確に言うと違うと思うけど。先輩にはそんな細かいことはわからないから、取り敢えずお肉が食べれますよ、ってアピールしておこう。そうすればきっと、
「おっ、肉か! いいな! じゃあその何とかチーズ食いに行こうぜ」
「はい、じゃあ一応お店に電話して席とっといてもらいますね」
計算通り!
ここは私のお気に入りのお店なんだけど、お店に行くまでの道はこの時期イルミネーションで飾られていて、中々一人じゃ行けない雰囲気だったし、何より先輩が誘ってくれて一緒に行けるのが嬉しい。
先輩はいつもガサツだし私の事をただの後輩としか見てないっぽいから、全然全く微塵もロマンチックな雰囲気になったことが無いけど、お店も景色もロマンチックだし、これはもしかしてもしかすると……なんて、ほんのちょっとだけ期待する。
私はにやける顔を隠すように、慌てて帰り支度をし始める。




