5. トモナリ
「ぐぁははは! ゼノラウトの戦士よ出て来い!!
おれがトモナリだぁっ!」
うるさいやつだ。
トモナリだ、2mほどの身長に、でかい角突きの肩当て、胸と背中に分厚いプレート、これまたトゲ付きのすね当て、で、ふんどし。
シックスパックの腹に上腕、太ももなどはむき出しで浅黒い肌と筋肉を強調している。
武器は刃渡り1.5m程もある、デカイ曲刀だが、樽のような塊が3つ付いてる。大きいそら豆みたいだ。刀の峰には円錐型のトゲが並んでる。
決闘の時間までまだあるので、わざわざ出て行ってやる必要もないだろう。兵士に混じって奴を観察する。こっちをチラチラ見る味方の兵士が何人かいるが、「見んじゃねーよ」と軽く睨むと視線を逸らす。
「出てこい! 臆したか?!」
「トモナリさま、それより余興などいかがでしょう?」
と、トモナリのお付きの人。
「そうか! ではゼノラウトの連中に良いものを見せてやろう!」
そう言って高さが3m程もある大岩に近づいていく。
「必殺!『爆裂剛打百烈斬!』」
叫びながら武器を右肩に振りかぶってからの連撃!
ハンマーだか剣だかわからん武器が、大岩を砕いていく!
ゴガン!
ドゴン!
パガン!
グガン!
ドッーパァアァン!
凄まじい威力の5連撃で、大岩は粉々になった!
「ぐわあっはっはっは!」
平原中に響く声でトモナリが笑う。
ゼノラウト軍の兵士達がガタガタ震え、中には立っていられないものも居た。
打つのか斬るのかわからん名前の上に百と言いながら5連撃という、訳のわからん技だったが参考にはなった。決闘の前に得意技見せるとか、アホな奴だということも分かったし。
さて、余興も見せてもらったし、行くか。
「ホッホッホ、そちの戦士は貧相よのう。ついにその辺の村人を連れてきたのか? ゼノラウト8世よ、それで朕のトモナリに敵うと思うてか?
今までの戦士と同じく、トモナリに引きちぎられるのみよのぉ。はよう国を明け渡しい。」
戦場に出てきたとは思えない華美な格好をしたデルハルト王が、ゼノラウト王を挑発する。美女をまわりにはべらせ、酒まで飲んでやがる。
反対側の陣で激昂するゼノラウト8世、
「やかましいわ! 今日こそワシの戦士が勝ってみせるわ!
ええい、美しい娘をはべらしおってからに!
ワシの戦士が勝ったら、娘たちを置いてとっとと北へ帰れ!」
「トモナリが負けるはずも無いがのぉ。
朕の娘たちよ、安心せよ、明日からこの地はデルハルト領じゃのぉ、
ホッホッホ。」
はぁ、女の話かよ、アホ王、、
テンションがた落ちだよ、、
「我はトモナリ!」
「…フミオだ、」
互いに名乗り、
「はじめい!」
決闘開始の合図が告げられた!
木刀を右手に、自然体で立つ。
「うおぉ! 必殺!」
来る! いきなりか!
『爆裂剛打百烈斬!』
初太刀は分かっている!
右肩に担いでからの袈裟切りの一刀目、相手の背中側に『入り身』してかわす!
次の斬撃に合わせて、
…あれ?
どこへ行くんだこいつ?
おーーい。
俺が後ろにいるのに、そのまま前進して5連撃を振り切ったぞ? まさか技のキャンセル効かないのか? 技の時間もやたら長いし、、
この暇な時間どうしてくれる!
「よくぞかわした! 『岩砕突!』」
剣先を中心にトモナリが赤い光に包まれる!
円錐型の赤光の塊が、地面を砕きながら一直線に俺に向かってくる!
これも当たる直前に『一重身』でスッとかわす。
後頭部に木刀を叩き込む、が赤光にはじかれ届かない!
無敵発動中?
赤光はまっすぐ砦に突っ込み、城壁が爆砕する。ゼノラウト軍の兵たちが、悲鳴を上げながら逃げ惑う。
「おのれ、ちょろちょろと! よけるな!」
がらがらと崩れる城壁の中からトモナリが出てくる。いやそりゃ避けるよ、なんで受けなきゃならんの? まいっか、相手の力量もわかったし、そろそろ相手してやるか。
「必殺! ばく…」
振りかぶる太い左腕が視界をふさぐ瞬間に相手の内側に入る。
意識の隙間を縫って距離を詰める歩法 『縮地』
ふん、
俺が技をキャンセルさせてやるよ。
いきなり目の前に俺が現れて、剣を振りかぶったまま驚くトモナリの顔面に木刀の握りの側の先端である『柄頭』を右手で叩き込む!
そのまま下へと顔面を削りながら木刀の峰に左手を添えつつ、木刀を立てていき、今度は『切先』で顔面を削る。
トモナリの鼻が曲がり、歯がへし折れて飛び散る。
へその高さまで削り落とすと、
「鋭っ!!」
プレートに覆われていない腹を狙ってドン!と突く。
『切先返し!』
「がっふっ、、うっ、、」
トモナリはふらつきながら、左手で顔をおさえ、腹を引きながら前かがみになって右手で払うように剣を振る。
『転換』しながら相手の右側面に入り、左手で相手の刀の握りを上から包みこむようにとる。
右手も添えて、相手の手首を中心に刀を時計と反対方向へ跳ね上げ、ひっくり返して投げる、
『太刀取り小手返し』
が、うまく投げれずトモナリは地面に倒れるだけにとどまる。
手首を極めたまま、トモナリをうつぶせにし、垂直に上にあげた腕をギシギシと極めていく。
「う”、う”、う”、う”ぁあああん、 いだいよ~、ごべんなざい~」
屈強な戦士が地面に顔を擦りながら涙とヨダレと鼻水撒き散らして泣き出す。
うつ伏せの状態で顔を地面にめり込ませながら右手だけが真上に向けられ、俺に関節技を極められている。
「お前、いくつだ? ガキみたいに泣いてんじゃないよ」
極めた相手の右手をゴキ、ゴキンといわせながら壊していく。
「う”あぁあーん、ぎゅうざい、ぎゅうざいですぅ」
はぁ? こんなゴツい9歳がいるか?
トドメだ、右手でトモナリの腕を極めつつ、左手でナイフを抜く。こいつも今までたくさん葬ってきたのだし、今度はこいつの番だ。
「お、おまちくだされ、ま、参った!
我が国の負けだ!
だからどうか朕のトモナリの命ばかりは!
トモナリがいないと朕は、朕は…」
青ざめた顔でデルハルト王が天幕から出てきて懇願する。
国の最大戦力が失われようとしているのだ、そりゃ焦るだろう。
「勝ったら首とるのが当たり前だろ?」
ナイフを首にあてて押し込む、皮膚がざっくり切れ、血が流れる。
「きゃぁぁあ!」
太い血管こそはまだ切れていないが、トモナリが痛みと恐怖で失禁した。
「か、返す、今まで取った砦のうち1つを返すから! 朕のトモナリを殺さないでくだされ!」
「……3つだ。」
「ぐ、わ、わかった、今まで取った砦は3つとも返そう。
それでいかがかのぉ…
頼みます。」
涙目で手をつき、デルハルト王が懇願する。ちょっと、いや、だいぶトモナリが羨ましい。
うちのアホ王はすでにホクホク顔でデルハルト王の侍女を睨め回している。
俺が決めていいよね?
「いいだろう、約束はたがえるなよ…」
「ひっ、も、もちろんだとも…」
腰をぬかして後ろに手を突いたデルハルト王が答える。残心をとりながらトモナリを開放する、武器は返さん。いつでもトモナリとデルハルト王の脳天を割れるよう自然体で構えたままだ。
「う”あぁあーん、おうざまぁ、ごめんなさい~、まげだよおぅ」
「いいんじゃ、いいんじゃ、朕はトモナリさえ帰ってきてくれればのぉ」
膝をついたまま、じじいとごつい男が泣きながら抱き合う。
うちのアホ王はとうとうデルハルト王の天幕に一人で入って行った。そのまま打ち取られちまえ。
ふう、とりあえずは勝った。




