30. 撤退戦
※文中に極めて残酷な表現が入っています、ご注意ください。
苦手な方は避けることをお勧めします。
「うう、うおおおぉぉぁああ!」
デルハルトの戦士、トモナリは森の中の街道で、逃げる人々の最後尾にいて、たった一人で奮戦していた。味方の兵はすでに皆、討ち取られていた。
肩や背中には何本も矢が刺さり、全身切り刻まれて血だらけだ。それでも人々の盾となって立ちふさがり、剣を振り続ける!
ここを退くわけにはいかない! まだ倒れるわけにはいかない!
自分の後ろにいる何千人という逃げる人々を守るために戦い続ける!
倒しても倒しても湧いてくる敵。
「弓隊構え!!! 放て!!」
シュシュシュシュシュン!!
無数の矢がトモナリを襲う!
「うおおおおぉぉお!!」
トモナリが大剣を振るい、剣圧で矢を吹き飛ばす、が、何本かは肩や足に刺さる!
矢が刺さったまま弓隊に突進し、剣を振るい部隊ごと吹き飛ばす!!
「はあっ、はぁっ! ぐぅっ!!」
足に刺さった矢を握ってむりやり抜く。
トモナリを無視して左右の森の中からも敵は進軍し、横から民衆に襲いかかる!
「ひぃ! やめ、、」
「きゃあぁ、!」
「おかぁさ……。」
「やめろおぉぉ!!」
トモナリが振りむいて走り、剣を振るう! 敵兵が何人も切られて吹っ飛ぶ!
森を抜ければ一度平原に出る、そこを抜ければゼノラウトに至る山道だ! ゼノラウトへ行けば、そこまで逃げれば!
平原に出たところで、、
パトナ、ヒューレ軍が森の出口を囲むように半円形に一列で陣を引いていた。トモナリは数千の民衆と共に包囲された。
「ひゃっひゃっ、狩場だぁ! 俺の獲物だ! 全部カルマにすんだから、てめえら手ェ出すんじゃねえぞ!」
黒いマントと鎧に黒い剣を携えた凶々しい剣士、クロトだ、
今まで逃げてきた人たちも同様にしたのであろう、平原の至る所に骸の山があった、、
「お前が、おまえがぁああ!!」
トモナリが激昂しクロトに突っ込む。
「おう、トモナリ、お疲れちゃん、でも俺、お前に用はねーんだわ。」
そう言って、サッと手を振る。
兵士達がトモナリを囲む! トモナリが剣で兵士を吹き飛ばす! しかし敵が次から次へとトモナリを包みこみ攻撃に加わる!
兵がトモナリに走り、包囲が崩れたのを見て、民衆が南へと走り出す、それを背後から襲うクロトとその親衛隊十数名。
「あっ、ぐぅ、、させません!!」 「おばぁちゃぁん!」
老婆が、子供達を逃がそうと盾になり、斬られながらもクロトにしがみつく。
「うぜぇ!」
クロトはそれを暗黒剣で刺し、蹴倒して次の獲物に走る。
母が子供をかばって抱きながらうずくまる、
幼い兄弟たちが手をつなぎながら必死で走って逃げる、
それを、、、それをクロトとその親衛隊が刈り取っていく、、、
敵の兵に幾重にも囲まれ、必死に戦いながら、弱い人々がクロトに斬られていくのを見せられるトモナリ、、
「だれか!
だれか!
お願いだよぉ!
みんなを、
たすけてよぉ!!」
包囲の中で剣をふるい、戦いながら、傷つきながら、トモナリが泣き叫ぶ!
ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!ドドドッ!
草原の東から騎馬隊が風を巻き起こして突進してくる! ヒューレからの新手だ! 地響きをたてて猛スピードで突撃してくる騎馬隊を見て、人々はもう逃げられないと絶望し、膝をつく、、
いきなり先頭の騎兵がクロトに近づき、、黒い槍で横薙ぎにクロトの顔面を叩いて吹き飛ばした!
「ぐべっ! 誰だてめえはぁ!」
「こいつは、俺が、相手をする!!!
テリクス隊はトモナリの包囲を崩した上で敵兵を殲滅しろ!
ディーエ隊は民衆を襲う兵を片付けろ!」
「「「応っ!!」」」
「「ゥオオオオォォオ!!」」
怒りに燃える騎馬隊が草原を駆け抜け、敵兵を槍で突き、なぎ倒していく! 5倍程度の数の差があっても、ものともしない!
弱者を背中から討つような兵だ、自分がやられる番になると逃げ惑う。それを猛然と騎馬隊が蹴散らしていく!
ヤマナは馬を降り、黒い甲冑の剣士の前に立った。目の前の男に対して、激高したい気持ちを抑え、ゆらりと立ちはだかる。
「よお、初めまして、クロトだな? 聞きしに勝る外道っぷりだな。」
「ヒヒっ、、ヤマナかぁ! 会いたかったゼェエ!」
鼻血を出しながらクロトが醜く笑う。
「うらぁ!」
クロトが剣を振る!
黒い衝撃波が飛ぶ!
「フンッ!」
ヤマナは横一文字を飛ばして相殺、クロトも様子見のようだ。
「よぉ、あの『ウドの大木』どうしたよ?」
「ケンタなら首を取った。」
「ひゃひゃ、あのバカなっさけねぇ、だがこれでオメーさえ倒しゃパトナ、ヒューレ、デルハルト、ゼノラウトの4カ国はぁ、俺のもんダァ、オメーも今までお疲れちゃん!」
「お前ええぇえ!」
包囲を解かれたトモナリが赤い円錐となってクロトに突っ込んで来た!
『岩砕突』だ、トモナリの無敵技。
『ダークネス、スフィアぁ!』
クロトが黒い直径1mほどの球体を生み出す。
ガッガガガッ、と相反して削り合う、赤い円錐と黒い球体、
バヂィンッ!!
互いに弾かれるように離れる。
…チッ、こいつも無敵技持ちかよ、、
ヤマナが舌打ちをする。
「はぁっ、はあっ!」
トモナリの衰弱が激しい。
やがて騎兵たちがクロトの兵達を片付け、ヤマナの周りに集結しつつあった。
「ありゃー、俺の兵みんなヤラレチャッタ? 今日は帰るわ、んじゃ!」
「帰すと思ってるのか?」
「俺、暗黒剣士よ? 『ダークネスブラインド!』」
そう言って、、辺りを黒い煙で覆い始めた。
横一文字で煙を払おうとしたが、影響を受けなかった。煙というより視覚阻害の魔法みたいなものなのか?
煙が晴れた頃、クロトはもう居なかった。
「ヒール! …よく頑張ったな、トモナリ、、」
「う、うぇえぇ、おじちゃん、、
いっぱい、いっぱい、守れなかったよぉぉお
僕がよわいがら、、
守れなかったよぉぉ、
うぇえぇん、、」
「お前は強いよ、、」
ヤマナがヒールをかけながらトモナリを撫でてやる。
こんななりでも、9歳で召喚されたトモナリは、中身はまだまだ子供だ、、
やがて騎馬隊は残る敵の歩兵をすべて討ち取りまたは追い払った。
「けが人を集めろ! けがの重いものは俺がヒールをかけてやるから。」
デルハルトの民で生き残った者は多くはなかったが、彼らを連れてヤマナはテリクスへと戻ることにした。




