154. 家族会議
すみません、ぼちぼち再開します。
「うーんとね☆
フミナリでしょ、
フミヒコでしょ、
カズフミでしょ、」
「うん、ヒナコさん、それから、それから?」
ある冬の日の夕食後、書斎で少し仕事をしてから居間を覗いたら、エリスとヒナコが話していた。
…子供の名前?
俺の名前、フミオにちなんだ、フミしばりの日本名をヒナコに聞いて考えている?
「あ☆ フミヤなんてどう?」
「いいね、いいね、文字数も一緒だし!」
…歌が上手くなりそうだな、、
「ヒフミンなんてどうですか、エリス先生」
「愛らしそうでいいかも!」
アユミが参戦してきた。一生懸命メモを取るエリス、
てか、アユミ、『ン』はどうしても必要なのか?
女性陣のキャイキャイと熱のこもった会話に顔を突っ込む勇気もないので、そーっと居間を後にして書斎へと戻ることにした。うん、我ながらこういうところはヘタレだと思う、、、
エリスの妊娠がわかってから、女性陣の団結が一段と強まったような気がする。今もエリスを真ん中に囲んで、ヒナコ、アユミ、シェリー、ルルが座り、レパーラがお茶やお菓子を出している。あ、いつのまにか精霊のフィオナまで出てきてみんなに混じって机の上に手を伸ばし、クッキーを摘んでる。
「ししょー、、
師匠の書斎で宿題してもいいか?」
レオルだ。
「ん? 良いけど、なんで居間でやら無いんだ?」
「オレ、なんか無理、、
ロイスみたいに、あの輪の中に入っていけね」
そうか、こいつもか、、
ってかよく見るとロイスのやつ、自然にあの輪の中に入って爽やかな笑顔で座ってるじゃないか。くっ、イケメンショタエルフめ、、
「おう、じゃあ二階行くぞ」
「ああ、師匠」
「うーん、うーん、、」
「どうした、そんなに難しい宿題なのか?」
「うん、、さっぱりわからない、、」
「どれどれ、」
……う、結構難しくないか? これ?
税収の計算とか、領地の広さと作付面積の計算とか、、
「ちょっと難しすぎないか? これ、、数学はソウジか?」
「うん、、デルハルト出身のやつらが、来年卒業するまでに、役に立つことは全部教えてくれって言っててさ、、ソウジ先生も『お前たちの熱意は受け止めた!』とか言って、どんどん難しい問題出してくるんだ、、でもただの数字の計算じゃなくって、実際の物や土地を例に出しての計算だから、役に立つことはみんな分かってるんだよね」
ちっ、あの熱血元高校理系教師め、、
デルハルト出身の孤児たちは、デルハルト王みずからのスカウトを受け、卒業後国に帰って文官になるとか聞いたが、、それで気合いが入っているのか。
「ん? シェリーは? あいつは宿題しなくていいのか?」
「終わったんだってさ、あいつ勉強している風もないのにいつも満点でさ、『授業聞いてれば全部わかるでしょ、分からないのが分からないわ』って、、ちょっとムカつく、、」
…いや、大いにムカついていいぞ、
「まあ、、俺も脳ミソは凡人だ、、凡人は凡人同士、一生懸命がんばろー」
「うん、師匠、俺頑張るよ」
レオルの、やっと生え揃いましたという感じのまだ若いたてがみをなでながら、似た者同士のぶきっちょ師弟であることをちょっと嬉しく感じた。
「なあ、レオル、お前はテリクスの学校を卒業したらどうするんだ?」
「え?」
俺の突然の質問に、目を丸くするレオル
「いや、進路とか、、、って何も考えてなかったな、お前」
「え、あ、あの、師匠、卒業したら出てかなきゃ、、ダメか?」
「いや、ここに住むのは良いが、、お前なら、頑張ればその内どこかの将軍になってもおかしくないんじゃないか?」
「びっくりした、ししょーに初めて褒められた、、」
「いや、ふつうにそう思うだけで別に褒めてるわけじゃないが、、
ほら、武者修行の旅とか、ゼノラウトの軍に入りたいとか。帝国将校の士官学校でも良いぞ、推薦状書いてやるぞ」
「、、オレ、何も考えてなかったけど、、ずっと師匠とルルと一緒にだと、、一緒にいたいと思ってるだけで、、」
泣かせる弟子だ、
「だがな、俺だって先に死ぬだろうし、ルルだって結婚するだろうし、いつまでも一緒って訳にはいかんだろう。この屋敷には俺がいる限りずっといても良いが、卒業するまでにやりたい事ぐらいは決めておけ」
「うん、わかったよ師匠」
深夜、住人達が寝静まったテリクス領主の屋敷の居間に置いて、、、
「、、であるからして! 我ら精霊一同からもあるじ様のお子に祝福をするのだ!」
こぶしを握って白髪ロングヘアーの少女、フィオナが熱弁する。
「わーぱちぱち! アズリもさんせー」
青髪ショートヘアーの幼女が大きな目をクリクリさせながら拍手する。
「ふっ、君にしてはいい提案だね、同意しよう」
七色に輝く羽がついた緑の帽子をかぶり、緑の服を着ている金髪エルフの少年も、紅茶のカップを片手にキザったらしく同意した。
領主の館で行われる深夜の精霊会議、、精霊達の会話は音ではなく念話で伝えられているので、寝ている住人達の妨げにはなっていない。
「ありがとう、アズリ、ビリディエット、 おぬし達はどうだ? 阿刀、吽刀?」
「ふん、、まだ力も示せん赤子に加護など与えられるか!」
「………」
赤いマッチョ犬が乱暴な口で炎を吐きながら吠える。もう一方の細くシャープな青い犬は黙ったままジッとフィオナの手にあるクッキーを見つめていた。
「ん? 報酬はこれでどうじゃ? エリスが焼いてくれたクッキーじゃ」
「バカにしているのか貴様! ?? 吽刀?」
吠える阿刀、だが無表情でスクッと立ち上がりスタスタと歩き出す吽刀に目を丸くする。吽刀は無表情のままフィオナの前にシュタッとお座りしたのだが、その尻尾はブンブンと振られていた。
「はい、どうぞ」
パクッとクッキーを咥える吽刀、尻尾の回転速度がさらに上がる。
「くっ、、この裏切り者め、、」
「あとーちゃんも、おたべよー」
アズリがテーブルの上にあるクッキーを手にとってトテトテと歩き出し、阿刀に近づいて差し出した。
「いるか!」
パシッ! アズリの手が阿刀の筋肉質な前足にはたかれ、クッキーがテンテンと転がる、、
「う、、う、、うわぁぁぁあああああんん!!!」
水精霊のアズリが号泣する! 目から大粒の涙が放物線を描いて次々に飛び、空気中に水気が充満しはじめた!!
「まずい! テリクスに水の気が充満し始めたぞ!!!」
焦るビリディエット
「阿刀! あやまんなさい!」
「う、ぐ、、 あーーおいしいなー! アズリがくれたクッキー、おいしーなー!」
阿刀が床に落ちたクッキーをぱくりと喰わえ、目を泳がせながらわざとらしくほめたたえた
「……ほんと?」
「あーほんとだよー、おいしーなー」
目があさっての方向を向きながら答える阿刀
「アズリを泣かせるなんて、、テリクスを水没させるつもり?! この駄犬!!」
「ぐっ、、」
「……阿呆刀、、」
「なっ! 吽刀まで!」
「で、どうすんの? あんたは?」
「ぐ、、」
ちらりとアズリの方をみる阿刀、、青い髪と服の幼女は両手を胸の前に組んで、今にも泣きだしそうだ、、
「、、賛同する」
阿刀の言葉にアズリがぱあっ、と花の咲いたような笑顔を浮かべると、がばっと阿刀に抱きついた。
「あとーちゃん大好き!!」
(……ワシは苦手じゃこの娘、、もっともこの娘は水の聖霊、ワシは火の聖霊だしな、、)
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