153. 雪の日の贈り物
テイヤマでの『地を砕く脚』との戦いから1年とちょっとが過ぎた。
「「「「行ってきまーす!!」」」」
「ああ、行ってらっしゃい、気をつけてな。」
「「「「はーい!!」」」」
雪がちらつく寒い朝、屋敷から学校へ向けて登校する子供達を見送る。雪を踏みしめながらはしゃぐ子供たち。
みんなすっかりでかくなったな、、
特にレオルは、あと1年もすれば俺よりでかくなるんじゃ、ってぐらい身長が伸びていた。獅子獣人の特徴であるタテガミも、若獅子といっても良いぐらい生え揃えてきた。聞いたところによると、学校では優しく頼れる上級生のお兄さんで通っているらしい。
ちなみに、タテガミと半円形の丸くて可愛らしい耳をモフるのが、うちの大人たちでの中での楽しみとなっている。モフられている間、本人はおとなしくしているのだが、実に微妙な顔をしている。
シェリーもエルフ特有の美しい容姿の女性に育った。若い兵士たちの間では結構噂になっているらしい。俺が怖くて、手が出せないみたいだが、、
まあ手を出そうとしたら、『付き合いたかったら、まず俺を倒せ!』と出ていくつもりだ、
はっはっは、求む勇敢なる若者よ、全身全霊で相手してあげよう。
一方、アユミだけは、、
出会った頃から身体的成長は全くなく、小学校高学年ぐらいの身長のままだった。体の線も細いままだ。今では年下のルルやロイスの方が身長が高いぐらいだ。
召喚戦士は、基本的に容姿が変わらない。乱暴な言い方だが、アユミは、メシを食って普通に暮らしていれば育つ普通の子供達とは違う。
セントレオンのようにかなり長い年月を経て『歳をとったな』と感じれば髪が白くなっていったり、シワが増えたりする事もあると聞いたが、アユミのように子供の体で召喚された場合、成長は難しいということだ。
俺やトモナリのような脳筋な連中は、戦闘における強いイメージなどもあり、筋肉の増減などの多少の変化はあるのだが、、
「さて、今日も働くかあ! 」
テリクスの砦の執務室で気合いを入れる。
「はいニャ、今日の予定は、午前中、『転移の石板』でシンガット、テイヤマの順に周り、『ビスラ侵攻』からの復旧状況の確認ですニャ、
お昼はテイヤマでイシュナ王女達と取る予定だニャ、」
メイン秘書のレパーラが今日の予定を読み上げる。
ヒナコは『地を砕く脚』戦によるダメージが大きく、療養に専念させている。今頃は屋敷で目覚めた頃だろうか?
「そうか、久しぶりにケビンやイシュナに会えるな」
「はい、楽しみですニャ、」
そうして俺の1日の仕事が始まる。
「あなた、ちょっとお話が、、」
その日の晩、仕事から帰ってきて、みんなとの夕食後にエリスが話しかけてきた。
夕方ごろから雪が降り始め、日が沈んでからはずいぶんと冷え込んできた。
暖炉には薪がくべられ赤々と燃えており、ときどき、パチッ、チッ、と乾いた音を立てている。
「なんだい? エリス?」
「ええと、、」
みんなの居るところでは言いづらい話なのかな?
食器の後片付けや洗浄は子供達の仕事だ。
椅子から立ち上がって、エリスに微笑みかける。
「書斎で聞こうか?」
「はい、」
ランプをもって、二人で書斎に入る。
「それで、お話って?」
「あの、、、、ちゃんが、、」
「ん? 」
「赤ちゃんができたみたい 」
うお、一瞬頭の中が飛んだ!
「エ、エリス、本当かい?」
「はい、、ヘレンにも見てもらって、、間違い無いって、」
ヘレンはテリクスの教会の神官だ、ヒーラーであるとともに、こういった事を診断することも仕事としてやっている。
「あ、」
「? 」
「あ、、、」
「あなた? 」
喉が詰まって、言いたい言葉が出てこない
やばい、涙が出てきた、
そして、やっとの思いで一言、
「ありがとう、エリス、、」
そう言ってエリスをそっと両手で包むように抱きしめた。
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