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3.ゲーム開始





二日後、ネオンズにはプレイヤー総数のうちの実に半分以上が集結していた。

ネオンズのプレイヤー総数は、大体五千人程度なため人数だけ見れば十分だろう。

(ノームコア)のいう"ゲーム"とは何なのか──私らの得意な土俵ではあるが、ネオンズのメールシステムをハッキングできるのなら、他のゲームシステムに干渉することだって不可能ではないはずだ。

ちょっとした疑問だったが、ちょうどアキと出会ったところなので、ふらっと話題を振ってみる。


「なぁアキ──ノームコアが、もしネオンズの他のシステムにも干渉出来たとしたら……最悪なケースは何だと思う?」


自分でも、突拍子のない質問したな──とは思ったが、アキは少しばかり思考した後に

「えっと、ログアウト出来ないようにされること?そしたら、いくら現実よりネオンズ(ここ)の時間の流れが遅いとはいえ──現実の身体は飲食すら出来ないから……そしたら、私たち終わりだよね」

「あー……なるほど、そういうこともあるっちゃあるのか」


私のゲーム脳には浮かばなかった考えに、私が反応あやふやに返すとアキは小首をかしげた。


「そういうことって……逆に、レノの思う最悪なケースって、どんなの?」

「アキの言ったことより単純なこと──現実とネオンズ内はさ、感覚共有されてるワケじゃん?痛みの値は大分軽減されてるけど……つまりだ、そこら辺の感覚のシステムもノームコアがいじくれると仮定した場合、ゲーム内で死ぬダメを受けたら、痛みのショックで現実の私らが死ぬ可能性があるだろ?まぁ、要するにあれだ──よくあるゲームの中で死ぬと現実でも御陀仏になる系のやつ」


「あーね」と、結構重大な危険のある可能性を、アキはまるで道すがらの雑談みたく軽く受け流した。まぁ、あくまで仮定だ──そもそもネオンズ運営が対策を講じないなんてヘマはやらかさないだろうし、杞憂なのかもしれない。

そんなこんなで時間が過ぎ、メニュー画面のデジタル時計が十二時へと表示を変えた時だった。


「はい注目~!ネオンズプレイヤーの人達、始めましてー」


突如として、数千に及ぶプレイヤーの集団の上空にノームコアが出現した。

手をパパンと鳴らして身体を一周させ、群衆の視線とその他諸々を一身に受けるようにしてから、両手を上向きに広げた──支配者のポーズと呼ばれる姿勢を取り、思いっきり私らを見下しながら口を開く。


「俺がノームコアだよ──まぁ、俺が直接君らに手を加えることはないから、そこは前提として今からする話を聞いてくれ」


ノームコアは、その眼下で今にも攻撃をおっ始めそうな血気盛んなプレイヤー達に釘を刺すよう、そっちを睨むように一瞥した。


「さて、君達は俺と"ネオンズを賭けたゲーム"に参加してくれるプレイヤー達……それで合っているね?」


誰も頷くものはいない。

もちろん、ノームコアはそれを気にも留めず話を続ける。


「じゃあ今から、俺が執り行うゲームの詳細を説明しよう──まずはゲームジャンル、これは君達の得意な戦闘を主としたものとする」

「次に形式だが、ステージ制となっていて、一つのステージをクリアするごとにインターバルを取る。その間は、ネオンズへの出入りをフリーにする──今は俺の方で、ネオンズから出られないようにしてあるけど」

「最後に君達が戦う相手だが、俺の方でバッチリ用意してある……それが、コイツらだ!」


ノームコアが指をパチンと鳴らすと、両隣の空間が破壊されてポリゴンが飛び散り、その奥から何匹かの生物がのそのそと這い出てきた。

生物というのだけが辛うじて分かるだけで、その見た目は生物とは言いがたく、何かに例えるなら妖怪やユーマ方面の、あの形容しがたい独特な不安感を放つ感じのものだった。それぞれ姿形は異なっている。

プレイヤーの集団が、そのバケモノ達から少し離れていったところでノームコアは空中から降り立ち、科学者が実験結果のプレゼンでもするように、饒舌になることを隠せない様子で話し始める。


「コイツらは俺がこのネオンズ内で作った敵MOB──それぞれ姿形の異形なバケモノ、革命侵略者(イノベーダー)だ!」

革命侵略者(イノベーダー)達の知能は高いし、フィジカルも見た目から分かる通り人間より遥かに強い!まぁ、その分作れた数も少ないし、ゲーム中にしか君らを襲わないから悲観的にはならなくても良いよ」


そこまで一息に喋りきったノームコアは、一度息を入れると、また空中に浮かび上がった。


「さてと……ここまで粗方説明してきたけど、何か質問等はあるかい?」


何やら不適な笑みを顔面に張り付けながら、質問を待つノームコアへ、一人ばかり手を挙げた。

ネオンズプレイヤーなら誰もが知る青髪の男、ランキング一位のシップだ。


「ノームコア、一つだけ聞きたいんだが……現在のネオンズのゲームシステム"そのまま"で、お前とやるゲームは行われるのか?」

「流石、ランカーは抜かりない!結論から言うと、バトルに関係するシステムは色々いじくり回した」

「その"色々"の中身を教えてくれたりは──」

「まさか?こっちが不利になること、公表するのかって話だよ」


誰にでも態度の柔いシップ相手だから少し調子に乗ったか、呆れた笑みを浮かべた腹立つ面で、ノームコアは言葉の節々に冷笑を含ませながら肩をすくめた。

少しばかりイラッときた私は、ノームコアの言葉に続いた僅かな沈黙を押し退けるように──普段より少しだけ乱暴な言葉で、一文字でも聞き逃さぬよう声を張った。


「おいノームコア!こちとら、お前の吹っ掛けてきた勝負に乗ってやったんだ……やるってんなら、フェアがお約束じゃねーの?」

「それにだ──お前のいう、その革命侵略者(イノベーダー)とやらの攻撃手段、数、その他諸々が公表されてない時点で、既にこっちは不利を被ってるワケ……これ以上、ワガママの上塗りはやめな」


後から冷静に見れば、自分でも少し変なこと言ってるなとか、完全にノームコアの情頼りの揺さぶりだったなと思えるが、恐らく腐っても奴はゲーマーの一人──仄かにではあるが煽られたことを、意地でも貫き通せる情緒はない。

数秒間、私とノームコアでお互い真っ直ぐに睨みあった後、奴は鼻につく態度で片側だけ口角を吊り上げた。


「はっ、そんな安い挑発には乗りたくないけど……確かに君の言う通りだね、ランキング三位、PN(プレイヤーネーム) レノ」

「まぁ良いか、特段俺は意地悪でもないし──いじくったゲームシステムを公開してあげよう」


ノームコアの言ったシステムの変更点は、ざっと三つに分かれた。

まず全マップの結合、次に痛覚上限値の引き上げ、そして最後に、私らには聞き慣れないゲーム用語が飛び出してきた。


「スキルの追加だ──簡単に言うなら、ネオンズプレイヤー全員と、革命侵略者(イノベーダー)全てにランダムで一つずつ、戦闘中のみ発動する特殊スキルを付与させてもらったよ」


ネオンズでは武器(ウエポン)を元にした能力(アビリティ)を使って戦闘を行う。例えば、私なら武器(ウエポン)は脇差、もとい短刀で能力(アビリティ)は、装備中に身体機能バフと移動速度バフがつくといった感じだ。

能力(アビリティ)は、当人の持つ武器(ウエポン)によって大方の効果が定まるが、ノームコアの口ぶりからするに、スキルは完全ランダムといった感じになりそうだ。


「特殊スキルの効果と配布対象は完全ランダムだ、君たちネオンズプレイヤーだからといって弱いスキルを配るわけじゃないし、その逆も然りだ……これで、色々と文句はないかな?」


名指ししたわけじゃないものの、明らかに私の方へ流し目に説明を締めた。

特段、奴とのゲームをやるうえで他に追求したいこともなかったので、私は何も言わず──結局、他のネオンズプレイヤーも聞きたいことは粗方聞けたようで、ノームコアに対して口を開く者はいなかった。


「じゃあ、慣れるための前哨戦って意味も込めて……最初のステージはレイドバトルといこうか!」


瞬間、半径に大体プレイヤー十人ほどが収まりそうな大きさの円が、プレイヤー達の間を縫うように隔てながら地面から急速にそそり立った。

恐らくはプレイヤーを数十人ほどに分別するためのものだろう──出てきた壁に突き上げられたりした者も、私のいる円の中にはいなさそうで何よりだった。

そして、円の中の空間がポリゴン粒子となってバラバラに崩壊し、円の中の私らは別の空間へと転移させられた。






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