夢の中のあなたと
夢を見ている。来たことのない砂浜だが見覚えはある。目線を動かし、海を見る。そこには白いワンピースの少女がこちらを見ている。声を出そうとしたが、音が出ない。少女は俺を見つめた後、海の方に一歩ずつ入っていく。いや、それはまずいでしょう。足を踏み出そうとするが、空気を蹴り、地面に身体がついてしまう。夢なのに痛い。いや、今はそんなことより彼女を助けないと。腕を伸ばそうとするがこちらも感覚がない。腕が、、、無くなってないか。だんだんと海に沈んでいく。見ることしかできないのか、俺は。ぐぐっと顎に力を入れて、前に進もうとする。
「ごめんね」
そんな声が彼女から聞こえた。ブチっと頭の何かが切れた、マジで。
ふざけんな!
ガバッと起き上がる。あれ?起き上がってる。
自分の尋常じゃないくらい汗をかいていることに気づく。夢?夢にしては感覚がありすぎる。
冷たいシャツの感覚、足の指が冷えていく。
隣のベッドを見る。放は落ち着いたような顔をして寝ている。それだけを見て安心してしまう。どうしてだろう。このままもう一度寝るか?いや、寝ても微妙だな。時計は5時を指している。なるべく音を立てないように靴下と靴を履く。これで起こしたら悪いもんな。ゆっくりと扉を閉めて、外に出る。
ー
ぼくは彼にとってなんだろうと思う。幼なじみ?友達?それとも、、、なんてことのないただの他人?
それにしては彼は命を賭けすぎてないかな。最近だってジョニーと一緒に色々やってたらしいけどさ。
ずるくない、デートとか。彼女になりたいのかな、ぼくは。いやそんな資格はない。彼には悪いことを沢山した。あんな言葉を吐いて、さらには傷つけたのだ。全然平気そうな顔をしてるのがタチが悪い。ぼくの前の時だけ痛そうな顔をして欲しい。だってその方が罰を受けているその感じが強い。周りの人だって普通にしてもらっているのだから。それが怖い。こんな自分だって嫌いなのかもしれない。
ブンブンと首を振り、窓に顔を向ける。太陽が明るい、目を細めるくらいには。小さい点が動いているのが見てとれた。いや彼じゃないか。こんな朝から何してるの?頭の中に一つ思いついてしまった。もう身体が止まらない。このタイミングを逃すと二人きりにはなれないんじゃないか。ここしかない。靴を履いて、外に出る。彼に確かめてもらう、私のことを。
ー
「パジャマは暑いんじゃない?ランニングに?」
普通にツッコまれた。
「いや、その洗濯に出すから汚れてもいいかなって」
息を切らしながらぼくは話す。頭が回ってないから自分でも何言ってるのだろう。
「うん、そうかな」
だいぶ引いてる気がする。顔がへへっとなっている。こういう時の顔はどうしたらいいのだろう。
「いや、そのね、うん。」
言葉がうまく出てこない。話したいことが沢山あるのに。風船みたいに膨らんで空気が出ていかないそんな感じがしている。でも話さなきゃ、話して私の価値を彼に決めてもらわないと生きる意味がない。
「好き」
今、何を言ったの?ボクは?いや、違う、違う。彼に言いたいことはそれじゃない。ボクの気持ちを優先するな。これで彼が断ったらボクはきっと壊れてしまう。口が開くのが見える。ダメ、ダメ。
「難しいっなぁ〜」
「へ?」
答えとしては求めて無いものであった。
「いや、難しいよ。君に対してどう答えれば正解なのかなって」
変だ。彼はそんなことを言わない。もっとこうモニョモニョしたことを言う。
「夢なのかな」
思ったことが口に出してしまった。
あれ?ボクはいつからここにいるんだっけ?彼に対してほんとにそういうふうに思ってたっけ?心の中が分からなくなる。モヤが頭にかかっている気がして止まる。
『それでいい。夢の中で幸せな時間を過ごそう』
ー
朝になったら人間は起きないのか。そんな感情を覚えるくらい学校が静かである。休みでももうちょい人気があると思うんだけど。ちょっとばかし怖い。
部屋に戻り、放の顔を見る。眠りすぎじゃないか。
早く起きないと学校に遅れないか?彼女のスマホを見るとアラームがずっと鳴っている。変だと何か違和感を感じる。ガンガンと扉が叩かれる。
「おわぁ!」
この時間にノックをしてくるのは誰だろう。
ドンドンと音がまた聞こえる。
「えぇ」
ゆっくりと近づいて扉を開ける。そこには生徒会長ココロがいた。
「その、頼むから、早く出てくれ」
息を切らしている。
「すいません」
「君が思ってるより事態は深刻だぞ」
「そうなんですか」
「せやで」
ほんとに深刻?
「この学校全体を介して全ての人間が夢から起きていない」
会長に指を向ける。
「人に指を向けるな。私たち例外を除いて」
「思ってるよりでかいことになってますね」
「そうだ、人間はずっと寝ているとどうなる?」
なんか嫌な予感がする。
「それは」
自分が苦い顔をしているのが分かったのかズボンを引っ張る。
「分かってるなら行くぞ」
「えっ?どこに」
「作戦会議だ。それと起きてる奴を探しにな」
ー1時間後ー
正直言ってほぼ徒労だった。学園内にいる二人を除いて全ての人間が寝ていた。まぁ、寝てない人もいたが。チラッと目線を動かす。するとタブレット片手に目がギラギラな花がいた。
「フフ、フフフ、ハハハハ!」
だいぶハイになっているため期待ができなそう。
「そういえば会長はなんで起きたんですか?」
「聞くか、私にそれを」
えっ、聞いちゃいけない理由があったのか。
「別に喋りたくないならいいんですけど」
「いや、話させてほしい!話すしかない!」
こっちもハイだったか。
「聞きますよ」
笑顔が吊った状態になってしまう。
「仕事が終わらなかった」
ドヤ顔で会長が言った。
「なんで「なんでだと!」
被りながら大声で話しだす。
「そう思うなら手伝ってくれ!」
「でももうそういう関係じゃなくないですか」
「あぁ!そういうこと言うんだ!」
涙が出そうになっている。メンヘラかな。
「だって誰も手伝ってくれないもん!」
違うわ、なまじなんでも出来るからか。
「あの、後で手伝いますから」
その一言がいけなかった。会長の目が獲物を取る鳥みたいな目だった。
「絶対だぞ」
言葉も冷たく感じた。
「はい、、、」
ー
夢の中の彼は距離が近い。ボクのしてほしいことをしてくれる。昼食を食べる時だって
「ねぇ、これ持ってきたけど食べる?」
好物のいちごジャムに焼きそばを混ぜたパンを渡してくれる。正直見た目が終わりに終わってるのは分かってるだけどね。
「ありがとう」
嬉しいけどちょっと怖い。だってこれはまだ誰にも言ってない。伝わったらどうなるか分からないから。
「好きでしょ、これ」
あまりにも理想像すぎる。これ、後で彼に会った時にどう思うのだろう。ガッカリするのかな。
「食べさせようか」
「いや、そこまではいいよ」
ガブっと食べる。美味しいけどね。
「あのさ、今何時か分かる?」
彼は分からないような顔をしている。
「昼くらいでしょ。こんなに晴れてるし」
「そうかな」
右手がボクの頬に触る。おいおいおい、私こんなこと願ってるのか。
「もういいじゃん。素直になりなよ」
やばいな〜、私が思ってる彼。思ったより美化しすぎてない?自分で自分に疑問に思う。彼って思ったより自分勝手な気がして振り回されてる。
「何して欲しい?俺ならなんでもやれるよ」
「じゃあ、キスして欲しい」
ボクにとっては彼に言えない。夢の中ぐらいならこんなことを言って許されるのかな。
「いいよ」
迷いもなくそんなことを言う。ボクに近づいて頬を触る。夢の中なのに感覚がある。
「でも、ほんとにさ、するのは違うじゃん」
ぐっと顔が近づく。両手で彼の顔をぐっと触るる
「だったら辞めればいい。そう思わないなら否定すればいい」
「でも」
「でも?」
「こうされたいのは事実で」
「そう、だから」
「彼には何も言えなくて」
「夢のなかぐらいなら」
それは私にとっては甘い夢の中で、、、
ー
「手がかりがなさすぎる」
俺はあまりにも焦っている。みんなが眠っているし、近くにいる二人はハイすぎてちょっとなんというか。
「なんだ、使えないってか」
心を読むのやめてください、会長。
「それを言うならみんなそうだろ」
「え?」
「そうですね」
「え?」
花がタブレットをこちらに向ける。
「この学園の構造です。4階から1階にかけてのサーモグラフティをかけましたが、私達以外は起きてません。ただ屋上に反応があります」
「ほら」
あれ、あれ。
「使えないのは俺でした」
「まぁ、適材適所だからな。お前と私でこの後だからな」
「ありがとうございます」
「じゃあ、これで寝るから」
花はそのままの勢いで後ろに倒れる。
「いや、寝たらまずいのでは。なんならその勢いも身体に悪いよ」
「まぁ、寝かせてあげなよ。もうクマが思いっきりついてるからな」
自分で夜更かししてないかな、あの子は。
恐竜の叫び声が上から音がする。
「行くぞ」
「はい!」
ー
計画は完璧だった。人間どれだけ頑張ろうとも寝る時間は存在する。その隙をついた筈だった。だがイレギュラーが発生している。眠りの中でも暴れる奴はいたがこれは例外すぎる。ずっと悩んでいる。なんでも叶うのにだ。こんなに抵抗しているのはおかしい。しかも夢の中なのにこちらを見ている感じがする。ムカつくな。干渉してやるよ、私からのプレゼントだ。
「もういいじゃん。一緒に堕ちようよ」
夢の中のそいつは彼女にとって優しい言葉を投げる。表情が変わる。そうだ、それで落ちてしまえ。
「そこなんだ、いるの」
え?近づいた彼を背負い投げで地面に叩きつけていた。お互いに驚いている。なんで夢の中なのに抗えるの?寝ている奴らなんて幸せそうにしているのに。彼女は展開する。羽を生やし、こちらに向かう。まずい!バレている!機体をシャットダウンさせる。ガコンと暗闇に包まれる。
「ぷはぁ」
大型の装備を外し、目を開ける。ははぁ、ザマァみろ。こんな何もないやつに計画が崩されるわけないだろ。ドスンと地面が揺れた。冷や汗が背中を伝わる。まさか、そんなはずは。ゆっくりと後ろを振り向く。
「なんだ、意外と近くにいるもんだね」
恐竜の形をした何かがいた。ガチャンと人型に戻る。心臓が鼓動が早くなる。
「いや、やめて、、、」
「残念」
「馬鹿が!」
私のはオートマチックなんだよ!ガンッと彼女の身体を包む。勿体無いが、逃げさせてもらう。
屋上から飛び降りる。草むらにぶつかる。普通だったらとんでもない怪我になるが簡易的だか纏っている。それでほぼ無傷なのは助かる。上からとんでもない音が鳴る。何の音?上を振り向くとオートで動かして機体が上から落ちてきた。
「思ったより弱かったよ、それ」
なん、なんなんだよ、こいつ。
「ふざけんな、私をここでやったところで」
「いや、別にいいかな」
「へ?」
「ここでいなくなって問題はないかなって言ったの」
右手が変形して歯を纏っている。
「いやですぅ。いやぁ」
こんなところで終わるの、私の人生。ヒッと目を瞑る。暗闇になったその一瞬ガキンと音が鳴る。
「え?」
「なに、、、してんの」
ターゲットのそいつが私の前に立っていた。
「どいてよ」
「どかない」
「じゃあ、無理矢理どかす」
長い爪が左から飛んでくる。彼は抵抗する様子が見られなかった。
「聞くことがあるからさ、やめな」
レイピアが彼女の顔に触れる。こいつはこの学園の会長か。なんで起きてんだ。
「分かりました」
渋々とした顔で手を下ろしていた。
「良かったよ。彼女を殺してしまわなくて」
上から声が聞こえる。全員上を向き、その瞬間閃光が落ちてくる。
全員が床に伏せていた。
「ほら、帰るよ」
天使が私を連れて行ってくれる。
ー
「何が起こってる?!」
目の前にいるこいつは何?
「君はそこにいるのか」
俺の方を見て言ってくる。何の話だ?
「はぁ?」
「あぁ、ごめん。君には興味ないんだ」
ぐいっと首を掴まれる。力が強すぎる、機体を纏っているのに。
「あああぁぁ!」
大声で爪が飛んでくる。照が助けようとしているのか。だが届かなかった。何かに阻まれているみたいだった。
「やめなよ、無駄な抵抗は」
「黙れ!」
何度も叩きつけている。だがピクリともしない。
力が抜けていく、まずい。目線で動かし、武器を出現させる。右手にキャタピラを装備させ、彼女に向かってぶつける。それは不味かったのか。俺を地面に叩きつける。
「そんな変なの使うなよ」
「はぁ?」
「彼女はそんなの使わない」
「意味分かんない、よ!」
蹴りを放つ。横に避けられるが、関係ない。足に装備させるのはクレーンだ。足が伸びて彼女の腹に当たる。思いっきり転がり、壁にぶつかる。その衝撃で何かが解けた。
「大丈夫か?」
会長が横に立つ。
「はい、全然ダメです」
「マジか」
「硬すぎますね、あれ」
「そうか」
彼女はゆっくりと立ち上がり、こちらを見つめる。顔には鼻血が流れていた。
「なんだ、まだ嫌なんだ」
「何言ってんだ?」
「いや、君は分かるよ。そいつは自分が化物だって気づかせないようにしている」
「だから、それが、なに?!」
俺はイライラしている。自分を見ていないから、、違うな。夢の中のあの子は辛そうな顔をしていた。勝手なことを言うこいつはあまり好きじゃないかも。
「また会おうよ」
後ろに彼女達は飛ぶ。
「どっか、いくなぁ!」
照は羽をさらに展開させ、飛び立つ。ガンと音が鳴り、また何かにぶつかったようだ。
「くそぉ!」
「うざいな、この子は」
指を鳴らす、それだけで衝撃が飛び、飛ばされる。
「ごめんね、また来るよ」
「面倒いから二度と来るなよ」
会長はそんなことを言う。いいの?そんなこと言って。光に乗り消えて行った。
「なんなん、、、ですか。今の?」
「私に聞くなよ。まぁ、ああいう類は世界征服とかが目的だからな」
「はぁ?」
「分からないからな。もう休んで寝とけよ」
ふぁぁぁと欠伸をしてその場を後にする。この場に残ったのは照と俺だけだった。
「ありがとう」
その言葉が先に出た。
「え、あ、あ」
あまりにも動揺していた。
「そんなにうろたえる?」
「あの、別に、そんなことないよ」
目が上を向きすぎてる。
「俺は思ったんだ。一人じゃ何も出来ないんだって」
「それは」
「さっきも一人だとやられてたから」
「私だって、そうだよ」
フフと二人で向かい合う。
ー
そのはずだったんだけど、なんでこんなことに。
「ありえない」
「俺もそう思う」
二人で風呂に入るか、普通?!狭い浴室に背中合わせで入っている。
「あの人、馬鹿じゃん」
ボクはそんな悪態をつく。起き始めている為、みんなと時間を合わせる為に別の部屋に移動した。それがあまりにも悪かった。彼の眠さが限界に達していた。ガクンとガクンと風呂場に向かう彼を見た時、あまりにも怖すぎた。ボクが「手伝うよ」をそんなことを言ってしまった。馬鹿なのはボクだった。
「助かるよ、なんかもうボヤボヤして」
「限界じゃん」
「うん、だからさサッと入って出るよ」
「そう」
体育座りでゆっくり沈む。別に違うもん、彼の為にしてあげてるだけだから。
「ねぇ」
「何?」
「そのさ、ボクが君のことを好きって言ったらどうする?」
バシャンと沈む音が聞こえた。
「え?え?」
「あれ?そんなに凄いこと言ってないよ」
「そんなこと急に言われるとびっくりするっすね」
思わず敬語になってしまう彼。
「そうかな」
「そうだろ」
私は彼のことが知りたい。どういう気持ちなのかを。夢の中ではあんなことになっているのに。
「好きだよ」
「はぁ?!」
バシャンとお風呂から飛び上がる。彼はそのまま風呂に突っ込む。
「あ!ごめ!本当にその!」
風呂場から彼をあげる。
「大丈夫なんだけどさ」
「なんだけど?」
「その俺が悪いのは分かるから」
「?」
あぁ、自分が今どんな格好をしているか分かってなかった。裸でしたね、私。ぐいっと彼を抱き寄せる。あれ?私何してるの?
「あの、照さん?これはやりすぎじゃないっすか」
「いや、全然」
「そうなんっすね〜」
「もうちょとこのままでいい」
「いいよ」
お互いに心臓の音を聞きながら、私は思う。彼の出す言葉が私は好きなんだ。だから夢の彼に変な気持ちを持ってたのかな。今はこの音と暖かさが幸せだ。なおボク達はその後、普通に湯冷めして体調を悪く、授業には出られなかった。




