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寄宿  作者: すいか公爵
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第一話 風呂

僕はていねいに頭を洗う、鼻歌なんぞ歌いながら。

ここは静岡、熱海の湯~♪

僕の風呂は長い、家族も愚痴をこぼすほどだ。

僕は不安なのだ。一回だけじゃ頭を洗えてない気がして、二、三回洗ってしまう。祖母なんかは僕を潔癖症だと少し呆れた(てい)で言う。

クソ、ここ最近はなんだかこの洗えてない感覚がひどい。もう五回も流しているのに。ベッタリとついているような、しつこいシャンプー。いつもは二度ほど流せばきれいさっぱり落ちているはずなのに、最近になってぜんぜん落ちない。原因の一つとして、僕が髪を洗うのが下手だというのもあるかもしれないが、これほどまでにシャンプーが落ちないというのは今までになかった。熱海を歩いて回ってたくさん汗をかいたからだろうか。ああ、なんだか鬱陶しい。

僕は半ば諦めで風呂を出る。脱衣所にあがると、このベトベトするものをどうにか拭き取ろうと、自分のかごの中のタオルを手に取り、それを強く頭に押し当てた。

僕はタオルが泡まみれになっているのを覚悟して、頭から離してそれを見てみた。ところが、そのタオルにはシャンプーの泡はおろか、何もついていなかった。水気を吸った毛羽立ったタオルが手の中にあった。

そこで、今度は目で確認しようと洗面スペースの鏡の前に立った。姿勢を前方に傾けて、鏡に頭を映す。僕は上目遣いで自分の気になったところを確認した。

しかし、鏡には真っ黒な頭があり、白い泡は一つも見つからなかった。おかしい、と思って僕は頭を手で触って見た。シャンプーのあのベトついた感触はない。そして、それから頭を掻きなでて見たが、全く泡の感触はなく、触った手のひらも水で濡れているばかりだった。

きっと、勘違いだったのだ。

僕はそう考えて無理やり納得した。脱衣かごの前に戻り、全身をバスタオルで拭いてから着替えを済ますとすぐに大浴場を後にした。

大浴場は地下にある。上へ行くには階段とエレベーターがあるが、僕の部屋はいくぶん5階なので、エレベーターを使う。少し古めのエレベーターであるため、動くときと止まるときに若干震動が来る。僕はそれが来ることに多少ビビりながらも、軽い足取りでエレベーターに乗る。

ガクッ、ガウン。

箱はやはり揺れた。

五階に着くと、僕はさっさと降りて、自分の部屋へと向かった。

もう最初の延長から3日も経つ。休み明けには大学が始まるのだが、僕はまだまだ余裕と、滞在期間を延ばしていた。運良く僕の部屋への他の予約はないようで、ホテルの人も快く了承してくれた。

初め延ばそうと思ったときはかなり緊張したものだったが、馴れてしまえば、朝に予定を軽く告げるだけでサクッと延ばしてもらえた。

熱海はいい場所である。ゆっくりするのにはちょうどいい。かつて、数多くの文豪もここを訪れ、羽を伸ばしたり、執筆したりしたらしい。

今日は海に行った。昨日は魚市場で大きな魚たちが横たわっているのを見た。明日はどこに行こうか、趣向を変えて山にでも行こうかな。

そんなことを考えながら歩を進めると、いつの間にか自分の部屋の前に着いていた。サッと部屋に入ると、敷いてある真っ白な布団が僕を迎えてくれた。ドカッとそこに倒れ込むと、熟睡してしまった。少しほこりのにおいがした。

これから一週間以内の次話投稿を目指します。長くはない小説なので、完読いただければ嬉しい限りです。

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