第97話 惑わせ
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一方、俊哉達と別れた大輝達は別のルートで苦戦を強いられていた。それは魔物の数もそうではあるが、それ以上に......
「分かれ道が多すぎる」
大輝はもう何度目かのため息を吐いた。すれは目の前に広がる分かれ道。その数は五本。しかもこの数は段々と増えていっている。運がいいのかこれまで四度正しい道を進んできたが、次はどうなるかはわからない。もちろん、正解の道を進みたいのだが、それを判断するにはあまりに情報が少なすぎる。
なので、先ほどから全く進んでいない気がする。しかも、一体どれだけ時間をかけてしまっているかもわからない。そのどうしようもない焦りがこの道の選ぶ判断を狂わせる。というわけで、先ほどから精神的疲労が溜まり続けている。
「エミュ、どっちかわかるか?」
「う~んとね.......こっちな気がする」
そして、先ほどからこの道を決めているのはエミュだ。困った時の神頼みならぬエミュ頼みのおかげで正解の道を進んでいる。だが、そのエミュも直感だけでその道を選んでいるようではなく、匂いやその道の地形から少ない情報を探ってのことらしい。そして、もう一人、その正解の道選び続けている者が......
「セレネもこっちでいいか?」
「......(コクン)」
セレネは大輝の首筋に抱きつきながらエミュと同じ方向を指さした。セレネに限ってはおそらく子供の感覚故の直感のみだろう。だが、その正解率は100%なので案外侮れない。
「それじゃあ、その道に行くか」
そして、大輝達はその道をすすんでいく。今まで通ってきた道もそうだったが、この道は非常に狭い。なので、エミュは当然竜化ですることはできない。エミュ曰く、「竜化できれば、もう少し匂いとかで判断材料が増えるのになあ.....」とのこと。まあ、これに至っては仕方ないことだろう。ここで無理に竜化してしまったら生き埋めになりそうだし。で、それはそうと.......
「二人とも、もう少し離れてくれ......」
「何言ってるのよ、狭いんだからしょうがないでしょ」
「そうそう、細かいことは気にしなーい」
「......(コクコク)」
この道は狭いと言ってもそれは人が三人並んで歩ける幅はある。だが、それはあくまで詰めれば三人というだけだが。そして、この狭さを逆手に取ったのがエミュと香蓮だ。その二人はわざわざ大輝の横に詰めて入り並んで歩いていく。なので、当然密着する。
大輝はそのことに顔を赤らめながらも疲れたため息を吐く。ここしばらく、二人のこういった小競り合いに巻き込まれている気がする。「どこのラブコメだ」と叫びたいが、言ったところで二人が止まる訳ではない。このどうしようもなさは心にするりと入って滞留し続けている。
しかもそれでいて真面目な時はちゃんと真面目なのだ。俺がそれを気にしているのがバカみたいに。特に香蓮に至ってはその差がハッキリしている。もともとキッチリと済ませるタイプだったが、あの日以来こうも変わるこのなのか。香蓮は昔の姿を知ってるからこそ、こういった積極的な態度を示されるとどうにも反応が困る。
それに、香蓮が変わったせいかエミュも変わった。これまでこんな時にまで対抗意識を見せていなかったのだが、こんな時にまでこんなことをするようになった。もちろん、もともとエミュは積極的とはいえこうも密着してくることはなかった。だが、今は......あ、やばい。両肘から胸の柔らかさがダイレクトに伝わってくる。両肘に全意識が集中していく――――――――――
「いふぁ!」
するとその時、背中にいるセレネが無言で大輝の両頬を叩いた。大輝は思わず声を上げたが、それは痛みより驚きの方が近かった。しかも、無言でプリプリと怒りながら大輝の頭をバシバシと何度も叩く。
これも先ほどからこんな感じだ。セレネはあの時の「うん」という返事以来、何も言葉を発していない。ただ、あれ以来感情の自己主張は激しく、大概はセレネの表情でわかるようになったが、基本的になぜかわからないが怒ったような、すねたような顔をしている。そして、その感情のまま大輝の頭を太鼓のようにバシバシと叩く。
子供ながら相手にされていないのが気に食わないのだろうか。それにしても叩き過ぎのような気がするのだが。まあ、仕方ない。我慢するか。
そして、辿り着いたのは案の定六つの道。するとその六つの道からは多くの魔物が飛び出してきた。だがこれはわかっていたこと。だが、ここで予想外のことが起きた。それは大輝とエミュ、香蓮と別れるように突如として壁が降りてきたのだ。
「エミュ、香蓮!大丈夫か!」
「うん、大丈夫だよ」
「私も問題ないわ。大輝も無事のようで安心したわ」
二人の安否が確認できると大輝は背後に気を付けながら、目の前にいる魔物を素早く切り伏せていく。魔物のはずがいつもより多い。ということは少数に分断して、確実に少ない方を潰していくということなのだろう。だが、逆に言えば、これを耐え抜けばこのトラップは解除されるはず。
大輝は聖剣で目の前の一匹を切り伏せると横に飛んで背後から襲ってきた魔物を避けた。そして、その魔物に魔剣で頭を跳ね飛ばすとその勢いのまま横にいる魔物に回し蹴りをした。するとセレネが大輝の陰から<陰の手腕>を出現させ、大輝の周辺にいる魔物を殴り飛ばしていく。
「いいぞ、セレネ!」
「(コクコク)」
セレネは「当たり前よ」と言わんばかりに頭を軽く叩く。そんなセレネに大輝は「叩くのはやめて欲しい」と思いながらも、それ以外の魔物を切っていく。
そして、全てが終わると大輝の予想通り壁は開いた。それから再びエミュとセレネに道を選んでもらうとその道を進んでいく。
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「おかしい.....」
「エミュ、どうかした?」
エミュは大輝と再会したもののすぐに飛びつこうとはせず、むしろ距離を取って上がっていった壁を見た。そして、その壁があった跡を見ると再び「やっぱおかしい」と呟くながら香蓮に答えた。
「この壁のあった位置がおかしいんだ。それにこの空間も狭くなっている気がするし」
「でも、道はちゃんと六つあるわよ?まあ、この空間が狭くなったって言うのは同意するけど、ちゃんと大輝もいるわけ......」
その時、ふとセレネが幻想であったことを思い出した。エミュの感覚が正しいなら、当然この場はエミュの言った通りになっているはず。それにここは災悪がいるダンジョン内。ただ、分断するだけでは済まない可能性がある。
香蓮はそう思うと一つ咳払いをした。そして、大輝らしき人物に質問する。
「大輝、今から質問するけどいいかしら?」
「ん?どうしたんだ?別にそんなことをする必要はないだろ。それよりも早く進もうぜ」
「そうね、確かに必要なかったわ。本当は質問内容で判断しようかと思ったけど、その返しだけでわかったわ。......大輝の偽物だってね!」
香蓮は大輝に向かって走り出すと間合いを詰めて一気に抜刀した。それに対して、大輝は聖剣と魔剣でガードしようとするが、その両剣はその攻撃で真っ二つに分かれてそのまま胴を切られた。すると大輝はゆらゆらとその体を陽炎のように揺らして、やがて一体のゴブリンとその肩に乗った鳩の魔物が現れた。
「大輝の真似をしようだなんて、私達にケンカ売ってるの?」
「そうだね。大ちゃんのいつもの匂いがしない時点でおかしいと思っていたけど、これには私もカチンとくるかな」
「「逃がすか!」」
エミュが香蓮のそばに近づいた途端、その二体の魔物は二手に分かれて逃亡しようとした。だが、それを目の据わった二人が逃すはずがなかった。香蓮の流れるような刀さばきはたやすく鳩の魔物を捉え両断し、エミュのマッハの如くの速い拳はたやすくゴブリンの頭を撃ち砕いた。
「ふぅー、スッキリした」
「そうね。大輝を語ろうなんて極刑ものね」
「けど、だとすると本物の大ちゃんはどこなんだろうね~」
「「......ああああ!!!」」
二人は慌てたように叫んだ。
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「痛い、痛い、痛い、痛い......どうしたってんだよ、セレネ」
大輝はセレネにポカポカと叩かれる頭を手でガードしながら、セレネに聞いた。だが、セレネは何も答えず頬を怒ったように膨らませながら叩きまくる。まるで何かを伝えているような気がした。
それからまた、セレネは大輝の両端にいるエミュと香蓮を大輝に近づけさせまいと黒い手で一定の距離感を保たせていた。
「どうしたんだろうね?」
「大輝、何かしたんじゃないでしょうね?」
「何もしてねぇよ。それは近くにいたお前らもわかっていただろ?」
大輝は香蓮の見当違いの言葉に疑問を感じながらも、深くは考えなかった。すると今まで黙っていた聖剣と魔剣が大輝に話しかける。
「主様、なんか二人の魔力がいつもと違うんじゃが......」
「それになにか企んでいるような目をしてるなの......」
「魔力が違うのはさっき戦闘したからじゃないのか?それに企んでいるような目はまた狭い道でのあれを考えているんじゃないか?」
その言葉にフランとドリィは答えなかった。それはそうとも言えるし、違うとも言えたからだ。なので、自分達の主に憶測を伝えて惑わせるようなことは避けなければいけない。しかし、この違和感。拭う方法は他にないものか
すると大輝は台座のある場所へと辿り着いた。しかも、そこには道がなくここが最終地点らしい。そこで大輝は宝石を手に取る。おそらくこれが最初の台座にはめるものなのだろう。
「いたたたたたた!」
その時、セレネがさらにバシバシと叩き始めた。そして、大輝が思わずセレネに目を向けるとセレネは自分の目を指を使ってクワッと開かせる。大輝はその行動に怪訝に思った。......これはもっと目を使え、いや、<精霊の瞳>を使えってことか?
大輝は首を傾けながらも示された通り、<精霊の瞳>を使うと.......
「え?」
ゴブリンがいた。それも二体。しかも、その肩には鳩の魔物が。それでいて、エミュも香蓮もいない。え、え!?どゆこと!?するとその鳩の魔物がしゃべりだす。
「どうしたの、大ちゃん?」
「さっきからセレネも様子が変だし......」
「わああああああああ!!??」
大輝は思わず絶叫した。ゾゾゾッと嫌悪感を抱いた。エミュと香蓮がいなくて、代わりに話しかけていたのはゴブリンのと鳩。トラウマレベルだ。大輝の衝動のままにゴブリンを切り伏せるとしばらく呆然としていた。
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