第93話 砂漠の国の子供達
砂漠って実際はどのくらい暑いんでしょうかね?
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「うおおぉぉ!きもちぃぃぃぃ!」
「風って偉大なのね。こんな所で感じるとは思わなかったわ」
香蓮は生ぬるくはあるが、それでも確かに感じる風にしみじみと感想を述べた。
大輝達は今、風になっている。というのも、砂漠専用の馬車に乗っているのだ。馬の変わりにワニのような生物が引いている。あの村で一泊し、また砂漠を歩いていくのかと思っていた大輝達に最初に話しかけてきた老婆が親切にもこういう乗り物があると教えてくれたのだ。これが速いこと、速いこと。「もっと早くから乗れていれば」と思ったのは言うまでもない。
「あ、後ろからでかいのが三つ追いかけて来てるぞ」
「「「「「え?」」」」」
「ギィシャアアアアア!」
「「ゴオオオォォォォ」」
「「「「「わああああああ!?」」」」」
大輝がサラッと魔物がついて来ていることを言うと全員が思わず呆けた声を出した。それはこの乗り物に乗ってから早二日、魔物の一切と出会ってないからだ。なので、言ってしまえば完全無防備状態。すぐに戦える準備などしていない。そんな時に魔物が来ているとなれば、驚くのも無理はない。
しかも、その追いかけて来ている三匹の魔物は一匹はサンドワーム、もう二匹は砂をまるで海のように泳いでいるセイウチのような魔物だ。その三匹の魔物は少しずつこちらの距離を縮めながら向かってきている。
「んじゃ、今度は俺が相手するかな......フラン、ドリィ」
「うむなのじゃ」
「はいなの」
「大輝が行くなら私も行くわ。あの時、私も戦ってなかったしね」
大輝はフランとドリィを剣に戻すと馬車の後方へと立った。そこは追いかけて来ている三匹の魔物がよく見える位置だ。その近くに香蓮も立った。そして、まず大輝が構えると斬撃を二体のセイウチに向かって飛ばした。だが、それは簡単に避けられる。
だが、これは相手の機動力がいかほどか調べるものだ。適当にやったわけではない。そして、相手が相当素早いことがわかった。なら、その機動力を殺してしまえば、こっちのもの。すると大輝は両手を伸ばすと広範囲にバラまくように蜘蛛糸を飛ばした。加えて、その糸は粘着性にしてある。
「「ゴオオッ!?」」
すると案の定、二体のセイウチは引っかかった。やはりあまり頭は良くないようだ。そして、動けなくなったその二体に再び斬撃を飛ばし、両断した。
「ギャシャアアアアア!」
だが、サンドワームはそんなものは関係ないとばかりにこちらへと突っ込んでくる。すると今度は香蓮が今すぐ抜刀できるように刀を構えた。
相手はでかい。なので、外すことはないが生半可な攻撃では止まることはないだろう。だから、香蓮は静かに目を閉じて集中する。軽く深呼吸をしてさらに深く。
「はっ!」
「ギィシャアア!?」
そして、一気に抜刀。香蓮が描いた刀の軌道の数十倍の大きさの斬撃が、サンドワームに向かって放たれた。そして、その斬撃はサンドワームをの頭を跳ね飛ばした。それからその頭と胴体は砂煙を上げて砂漠に倒れた。
「さすがだね、二人とも」
「それに二人のおかげかしら?遠くに国が見えて来たわよ」
セレネがそう言ってその方向を指すとタージマハルのような壮大な建物が見えてきた。大輝はその建物を見て思わず「すげぇ」と呟いた。
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それから、入国すると大輝達は思わず目を疑った。なんせ目の前に広がる光景は溢れんばかりの子供、子供、子供、時々大人。しかも、その子供は総じて小学生ぐらいだ。視界に捉えられる範囲で言えば、9割が子供を占めている。明らかに大人に対する子供の人数が合っていない。
「これはおかしくないか?」
「ああ、もしかしたらこれが災悪のもたらしている被害だったりするかもな」
大輝の疑問の声に俊哉はおそらく答えであろう返事をした。それはおそらくそうなのであろうことは大輝もわかっている。そして、この子供達を何とか養っているのか、大人達の顔はわかる範囲で全員やつれている。
すると一人の少女が大輝達に向かって走ってきた。
「お兄さん達、だーれー?」
「ん?......ああ、遠くから来た旅人だ。良かったらわかる範囲でこの国のことを教えてもらってもいいか?」
「えーとね。あそこの白くて大きいのが王様が住んでいるところで、私達はこの周りで住んでるの。そして、よく私達みたいな子がこの国に迷い込んでくるの。それで気づいたらこんな多くなってたの」
「そっか、ありがとな」
大輝はその少女の貴重な情報に褒めると頭を撫でた。そんな大輝の後方ではエミュと香蓮が熱い視線を送っている。セレネは一部で甘い雰囲気になっていることに何とも言えない顔をすると一つ咳払いして、進むよう促した。
そして、進んでいくと多くの子供達が珍しいものを見るような目で視線を送っている。まるでヒーローになった気分だ。まあ、勇者のようなものなのだが。
しかし、ある程度見渡していると大輝はあることに気づいて思わず顔を暗くする。それは子供達の健康具合だ。大人が見る限り圧倒的に足りてないせいなのだろう。子供達の中でも太っている子はまずいなく、健康そうな子供もあまり多くない。ほとんどの子が頬をこけさせている。そのことが大輝には辛く感じた。
しかし、それはどうしようもない。働いている人が少ないのだ。その人全員が農業に従事したとしても、まかなえることは出来ない。そのくせ、子供達はあの村と同じ現象で増え続けている。つまり、これが続いていけば、間違いなくこの国は潰れる。
大輝は城に辿り着くと兵士に王の間まで案内してもらった。そして、王様に会うと膝をつける。
「よく来てくれた、勇者殿。頭をあげてくれ。まずはそのことに感謝させて欲しい」
「いいえ、とんでもございません。これは勇者として当たり前のことなので」
「さすが、勇者殿。では、早速だがこの国の現状を見て、率直にどう思う?」
ターバンのようなものを頭につけた王様は大輝に唐突にそう聞いた。その言葉に大輝は先ほどの現状を思い出だす。不健康な多くの子供達。痩せ細っている大人。その比率が9:1。明らかに異常なことだ。そして、そのことに王様は素直な感想を聞いている。なら、答えるべきは......
「そうですね。一言で言えば、非常に危険な状態ですこれが」
「やはり、そう思われるよな。明らかな異常なまでの子供の数。そして、その子供に比例するように消えていっている大人達。この国は滅亡一歩手前なのだ」
「大人が......消えている?」
大輝はその言葉に思わず引っかかった。すると王様はその大輝の疑問に答え始めた。
この国ではある日、外から一人の子供が迷い込んでくるということがあった。だが、その時は不信には思っていなかった。この国では時々そういった子供が現れるのだ。大抵はどこかの家族がこの国へと向かっている最中に砂漠の魔物に襲われはぐれるというもの。その際、その子供の両親が子供の前に現れることはまずない。
またある日、今度は三人の子供がこの国に迷い込んだ。その時はさすがに不審に思った。なんせこんな数は初めてだ。しかし、そうは思いつつもあまり気にすることはなかった。双子という形で迷い込んでくることがごくたまにあったりしたからだ。なので、一人ぐらい増えてもどうとでも想像は出来ようものだ。
だが、問題はその翌日に起こった。なんと今度は五人もの子供が迷い込んできたのだ。これは明らかに異常な数だ。ここは場所が場所だけに人さらいが現れることもない。それにこの国はあまり豊かではない。ならば、その周辺の村なら尚更。なので、一家族にこれほどの子供が生まれることはない。
これにはさすがに調査隊を出した。国の外に砂漠で何かが起こっている可能性があると。そして、調査隊が編成されてから数日が経ったが、その調査隊は一人残らず帰って来ることはなかった。代わりに不気味なほど調査隊として送り出した兵士と同じ数の子供が、この国にやって来たのだ。
この事には王様も頭を悩ませた。だが、原因がわからない以上対応が出来ない。なので、仕方なく、前回よりも少ない数の兵士で調査隊を編成し、再び送り出した。しかし、結果は同じ。これ以上は危険と判断し、原因はわからずじまいとなった。そして、この国から出ないよう国民に伝えた。
だが、それが必ず全員が守るとは限らない。それは行商人だ。行商人は国や村を行き来してお金を稼いでいる。しかし、それが出来ない、さらにこの国からも出れないとなると一日二日ならまだしも期限も未定なこの状況にその命令を守る者はいなかった。そして、こっそりと出ていった行商人が子供となって帰ってきた。
加えて問題はこれだけではなかった。なんといくら経ってもその子供達は成長することが無かった。しかも、迷い込んできた子供全員が。そのことは大きくこの国の首を絞めた。非力な子供が出来ることは数少ない。しかも、その子供の多くはもと大人だ。となれば、必然的に他の大人の負担が増えて中には死んでしまう者も少なくなかった。
「故にこの国は危機的状況なのだ。だが、この状況を打破する方法は一つだけあった。それがなんだかわかるか?」
「申し訳ありません。わかりません」
「よいよい、別に怒ることはない。なんせ本来ならそのようなことを考える必要はないのだからな。それで、その方法はというと『口減らし』だよ」
「くち......べらし?」
「この国の状況で言うならば、子供を殺すことだ。それも大量にな」
「!」
それはあまりに衝撃的な言葉であった。国が維持できないそれはこの国に住む全員が命にさらされるということ。それを防ぐためには酷い言葉だが、役に立たない子供を減らさなければこのくには飢えてしまうということ。それはあまりに残酷なことだ。
しかし、王様はその言葉を否定するように言葉を放った。
「それはこの状況で言えば最善策なのかもしれない。労働力である大人がこれ以上減ってしまえば、この国の機能は止まってしまう。だからといって、子供達を殺すことは出来ない!たとえ私が愚王と呼ばれようとも!その子供達に罪はないのだから!」
「......」
「しかし、私の力ではどうにもできない。だからどうか、力を貸して下さらないか?勇者殿」
王様は深々と頭を下げる。その声は少し涙ぐんだ声にも聞こえた。......この国がこんな状況なのは災悪のせいで間違いないだろう。なら、答えるべきは一つ。
「俺達がその原因を突き止めます。どうか任せてください」
大輝は揺るぎもなく言い切った。
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