第81話 災悪の正体
だんだんと物語が盛り上がっていく感じは、どんな話でもたまらないですね
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「はあ......疲れたぁ......」
大輝はその言葉通りにやつれたような顔をしていた。原因は当然大輝が現在も尚作っている聖魔石だ。このせいで多くの時間と魔力を消費してしまっている。一応、仲間達には大まかことだけ説明して周囲の警戒をしてもらっている。だが、あまり時間をかけるわけにはいかない。......いかないが魔力を回復させるためには時間を待たなければならない。なんとももどかしいことだ。
それとは別になるが説明していた時にエミュがニコニコっとした笑みを浮かべていたのが気がかりだ。香蓮のこといい最近は笑みを浮かべていると何かを企んでいるのでは?と疑ってしまう。けどまあ、ほとんど外れているがな。だから、俺の勘違いという線の方が可能性としては高いのだが、どうにもその勘違いが拭えなくて困っている。
「それにしてもいい場所だな」
大輝がいるこの村は森にほぼ隣接した場所にある。そのためその森にあるマイナスイオンのおかげか実に居心地が良く、気持ち良い。ここ最近の心の疲れも癒えていくようだ。するとある小屋で人の気配を感知した。その小屋は森に近い方にありもう何十年も使われていないような廃屋であった。そんな小屋の中からどこか弱弱しい気配を感じる。そのことを怪訝に思った大輝は一応警戒しながらその小屋の扉の前へと立ち、その扉をノックした。
「誰かいるのか?」
「ひっ!」
大輝が声をかけるとその声に驚きと恐怖が混じったような声が聞こえた。どうやら正常な人であるらしい。もちろん、ここでの意味では災悪に取りつかれていないという意味だ。しかし、そう考えると逆にこの反応が気になってくる。もしかしたら昨日、仲間達やクリスさん達に避難誘導された時に近くにいなかったのか?まあ、あいつらもクリスさん達も護りながら戦っていたわけだから全てを把握している訳じゃないし、そういう人もいるのかもしれない。なら、早く教えてあげないとな。
そこで大輝はむやみに刺激しないように扉越しから声をかけた。
「俺は勇者の大輝だ。昨日の襲撃は無事に収まり、この村に敵はいない。だから、安心して外に出てきていい」
「勇者......様?」
大輝の声に反応した女性らしき声は震えた声で聞き返した。そして、その女性は扉の前に近づくとその扉を思いっきり叩いて叫んだ。
「勇者様、お願いがあります!どうか私を殺してください!」
「......え?」
大輝はあまりの衝撃的な発言に一瞬聞き間違かと思った。だが、その言葉は自分がそう思うよりも確実にハッキリ聞こえていた。そして、思わず思考が停止して何と言ったらいいかわからなくなった。こういう時は確かいきなり否定から入らず、先にその訳を聞いた方がいいんだっけ?
大輝は一つ小さく息を吐くとその女性に聞いた。
「どうしてそう思うんだ?」
「この襲撃の原因は私です!私が招いたことなんです!その罪は重く、死ですら生ぬるいかもしれません!ですが、今の私には死んで詫びることしかできないんです!だからどうか、この私を殺してください!勇者様!」
女性の悲痛な叫びはその声からも懺悔の意思が伝わってくるようであった。そして、その言葉に対して大輝は何も返すことはなかった。いや、返す言葉がまだ見つかっていなかった。なんせ女性は肝心な原因の内容を言っていない。その女性がこの襲撃を起こすきっかけを作ったことはわかった。だが、きっかけの始まりを話してくれなければ声のかけようがない。まあもちろん、聞いたところでどうこうするつもりも特に考えてないが。
大輝はその場で腰を下ろして扉を背もたれのようにして座った。女性も意図せず大輝と同じような姿勢になる。
「ゆっくりでいい。俺に聞かせてくれないか?どうして自分が原因だと言う理由を」
「はい......わかりました。私が経験した全てを話します」
そして、女性はこの襲撃に至る経緯を話し始めた。.......今か2か月ほど前、その女性は悩んでいた。その理由は自分の魔法としての才能に関して。その女性は小さい頃から物語に出て来る魔女に憧れていて、その魔女は頭脳明晰、魔法も簡単に大魔法を使いこなし、尚且つ美人であった。美人は無理かもしれないけど、頭が良くて魔法なら結構使えると意気込んだ女性はこの村にやって来て村長に弟子入りした。そこで必死に頑張った、その憧れを現実にするために。それに自身もあった、その女性がいた村ではその女性が魔法に関して一番優秀だったからだ。
だが、現実は無情という言葉があるぐらいその女性は憧れからは程遠い圧倒的に大きな壁にぶつかった。それはありていに言って「才能」である。その女性は確かに魔法に関して才能があった。だが、その上に行く才能を有している人は当然いて、その人達は自分と同じような気持ちを抱いてこの村にやってくる。するとどうなるか、当然努力量が同じであれば才能の差が上下を決める。そして、その女性は才能という言葉で片付けられるほど簡単に追い抜かれた。それも自分よりも年下の子達に。ユリスだってその一人だ。
女性は絶望した。自分が乗り越えられないでいる壁を年下がさも簡単かのように乗り越えていく。それは憧れという幻想をぶち壊すほどに。当然だ、その子達の方が憧れに近いのだから。自分が一年もかけて乗り越えた壁を弟子入りして間もない子がたった1ヶ月で乗り越えた時にはさすがに目を覆いたくなった。どんなに頑張っても無意味という言葉が女性の脳内に過り始めた。
するとそんな時村長がその女性に話しかけた。そして、一冊の本を渡した。それは村長が昔研究して完成させたという召喚魔法。そして、その本を渡されたときに女性は気づいた。自分の目的がとっくに変わっていたことに。昔は憧れのために魔法を研究していた。だが、年齢を増すごとに追い越される子供達のうも増えその憧れはいつ間にか消えていた。
そして、出来ていたのが承認欲求。つまり周りから認められたいという気持ちだった。「自分はこんな昔から才能もないけど腐らずに頑張っている。だから、見て!」という気持ち。それを察した村長はその女性に昔研究していた本を渡した。その本はまだ誰にも手をつけさせてない研究テーマらしく、これでアピールしたらどうかというものだった。女性はそのことに感謝するとすぐに研究を始めた。
とにかくその本に書かれていることを全て試した。基礎から簡単だと省くことなく、難しすぎて出来ないと思ってほとんどの人がやらないであろう応用をも全て。必死に必死に必死にやってやってやりつくした。それは自分には意味は違うけどちゃんと「才能」があると知らしめたいために。
そして、その女性にとって運命が訪れた。それは森の開けた場所で描いた巨大な魔法陣、その中心に立って長い詠唱を魔力を注ぎながら言った。するとその魔法陣は眩い光を放ち、そしてその光が収まった時にはその女性の前には大人の手ほどのサイズの人型の生物が浮いていた。いわゆるウンディーネのような精霊の姿だ。
その精霊を見た瞬間、女性は涙した。自分はついに村長に次いで最も難しい召喚魔法を成功させたのだと。そして、この成果を見せれば私は周りから認められるのだと。そのことがとにかく嬉しすぎた。涙がれて前が見えなくなるほどに。
するとその精霊はその女性に優しく話しかける。人懐っこいのかとてもフランクな話し方だった。そして、その精霊と話していくうちに仲良くなって、いろんなことを話した。まずは自分の事、食べ物や文化の事、召喚魔法の事、この村の事、そして偉大なる村長の事。その中で精霊が最も興味を示したことはなんと村長の事だった。しかし、女性にとって精霊と話せること自体が喜ばしいことだったので、聞かれて知っていることは全て答えた。
それが間違いだったと気づいた頃には何もかもが遅いとは知らずに。
ある日、女性は精霊の提案で「村長にその研究成果を見せてみないか」と言われた。その女性は精霊の言葉にすぐに頷いた。それは女性の中でも周りの子達よりも一番最初に見せたいのは村長であると決めていたからだ。そして、その翌日に女性は実行に移した。成功させたとき同じように魔法陣を抜かりなく描くと魔力を注ぎながら詠唱を開始した。その時、村長はすぐに見抜いた。そ召喚は成功しないと。なぜなら注いでいる魔力が明らかに足りないからだ。
しかし、そんな村長の考えとは裏腹に魔法陣は眩い光を放ち、まるで地獄に住むような怪物を召喚させた。これには女性も予想外という反応を示して、思わず放心状態になる。一方、その女性の隣にいる精霊は醜くほくそ笑む。
それからはその怪物と村長の激闘であった。村長は女性と村を護るため必死に戦って命からがら勝利した。するとその瞬間、精霊が化けの皮を剥がした。女性はその時、その精霊が言った内容の記憶がない。それはあまりに辛辣でバカにして嘲笑うかのような内容だったからだ。信じていた、仲良くしていた精霊に裏切られた時の記憶を無意識のうちに思い出さないように閉じ込めたのだろう。
そして、その時女性は同時に逃げた。いや、逃がされた。村長が召喚した獣によって。だから、村長とその精霊との間で何があったかわからない。そんな不安を抱きながらも村に戻ると先に村長がいた。そのことに女性は安堵した。精霊は人には使えない魔法を使うという。なので、戦ったとして瀕死に近かった村長の勝てる見込みは低くかった。だが、こうして無事なら問題はない。自分は悪いことをしてそのツケを村長に支払わせてしまったことは申し訳ないが、これで平穏な生活ができる。
だが、それはぬか喜びに過ぎなかった。それに気づくのはそう遅くはなかった。なぜならその村長から話しかけて、事の全てを話したからだ。もちろん、その女性だけに。その村長はもういつも知っている村長ではなく、あの精霊によって体が支配された村長であったからだ。
女性はそれを聞かされた時には絶望した。自分のせいだという気持ちが体を押し潰すがごとく背中にのしかかった。もうその事実だけで吐きそうになり、意識が朦朧とするぐらいに。
女性は周りの人にその村長が偽物であることを言おうした。が、言えなかった。それを邪魔したのは自分の認めて欲しいという欲。ここでこんなことを言って信じてくれる人は一体どれだけいるだろうか。おそらく、ほとんどいない。発言力も低ければ、そもそもこの村での地位も低い。それにきっと村長の皮を被った悪魔に阻止される。そんなどうしようもない日々を過ごした時に現れたのは勇者パーティ。そして、起きたこの村を襲う攻撃が。
全てを話し終えた女性は嗚咽が混じりで喉を鳴らしていた。おそらく泣いていたのだろう。そんな女性に大輝は優しく声をかける。
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