第82話 討伐開始
5章山場突入ですね
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「俺はそのことを気にするなとはいはない。けど、罰を与えることもしない。だってもう罰は与えられてるからな。ただその努力は俺は評価したいと思っている」
大輝は女性が経験した過去を聞いて率直な思いを述べた。正直、聞いて村長が災悪であることが確定的になったのはとてもショックが大きい。なんせこれからその人を討伐しなければならないから。俺だってあの村長と会話したのは前のアレぐらいしかないが、それだけで好意が持てる凄い人であることはわかった。だから、討伐しに行くことがとても心苦しい。
その女性は大輝の言葉を聞いて思わず驚く、そして声にもその感情を表しながら大輝に聞き返す。
「評価......ですか?」
「ああ、俺はこの世界じゃ勇者だが、元の世界じゃただの凡人なんだ。俺より才能がある奴なんてざらにいてそいつがこの世界に来た方がもっと上手くやれてたんじゃないかと思う事だってある。俺は勇者だけど、勇気はそこまで持ったりはしてない。大抵ビビらないように勢いでその壁に立ち向かってるだけ。それも時間制限付きで。だから、自分の意思で立ち向かっていくって凄いと思うんだ。それはカッコいいことだと思う」
俺は挫折した人間だ。俺は小、中とサッカーを続けていた。そして、本気でプロになるためにスポーツ雑誌や動画、自分よりも上手い奴を見て研究したりもした。遊びも同年代よりは少なめにして、その時間を練習に当てた。そのおかげか俺は上達していった。周りの仲間を引っ張っていけるような存在にもなった。努力は必ず報われるその言葉を体感した。
だが、それはあくまでその時だけだった。努力が必ず報われるとしても「何に」報われるかはわからない。そして、それは大抵自分が願っていることには報われないものだ。何が言いたいかと言うと俺より当然上手い奴がいるただそれだけだ。そして、そいつとの間にあるのはほとんどが女性が言ったように「才能」という壁だ。そして、それを俺は高校に上がってすぐに嫌というほど思い知らされた。
そこで俺の夢は潰えた。それはあまりにもでかすぎて見るのが嫌になった。この時ばかりは香蓮も俺に何も言わなかった。きっとそれが香蓮なりの優しさだったんだと思う。実際、そのことに触れられなかったことは凄く精神的に楽だった。
俺がいた世界にも、この世界にも「才能」という言葉はついて回る。そして、たったそれだけに人生が大きく揺さぶられる。なんせ自分が望むことには大抵のその望むことに対する才能がないのだから。そして、どうでもいいことばっかりその才能を開花する。望むことが手に入らず、どうでもいいことが手に入る。自分が望むことに才能が開花することなんて稀だ。だが、有名な人ほど望んだ才能が手に入っていることが多い。きっとその人達も努力して得てものだという事はわかっている。しかし、そう思うよりもまず嫉妬という不快な感情が思考を支配する。
人を批判する時間を掻き集めたら一体どれほど多くの時間が稼げていたであろうか。人の批判をスルー出来ずに無駄に噛みついて消費してしまった時間はどれだけあっただろうか。その時間があったらもしかしたらその望みに対する才能が見つけていたかもしれない。もちろん、それは希望的観測であることには間違いない。だが、誰しも望むこちに対しては希望的観測で見ているのではなかろうか。こうなったらいいな、こうであって欲しい......そんな気持ちが。
夢というのはなんのだろうか。夢を叶えても幸せとは限らないし、夢を諦めれば後悔が残る。だが、そのくせ夢を見つけると追いかけたくなる。無理だとはどこかでわかっていてもその夢に才能があったりするのではないかと試したくなる。それから夢を叶えた人はカッコよく見える。それに憧れて真似ようとすれば失敗するとも知らずに。
そう考えると夢というのは一種の呪いではなかろうか。まあ、これはあくまでも俺の自論でしかないからきっとそうは思わない人もいるだろう。けど、そこで俺は思う。その夢を必死に追いかけて辿り着かなた人が評価されないのはどうかと。もちろん、どの世界も結局は結果論であることはわかっている。だが、挫折を味わって夢を諦めた俺だからこそそう思う。
だから、俺はこの女性を評価したい。私情混じりだけどな。
「俺は言い方が悪ければただ勇者であっただけだ。魔法陣に入ってあの四人の中でおそらく一番勇者の素質に近かっただけ。俺が災悪を倒す理由もこの世界の人々を救いたいっていう壮大な願いもあるけど、自分がもとの世界に帰るためにやっているという気持ちもある」
まあ、自分で好奇心のままにこの世界にやってきといて何言ってんだとは自分でも思うが。
「俺は努力が出来なかった。大きな壁を目の前にしての努力が。だから、理由がなんであれその壁に果敢に挑んでいった君には俺は凄いと評価したい。勇者ではなく凡人の大輝というただ一人の人間として」
「......ありがとうございます」
女性は大輝の言葉に優しい笑みを浮かべながら感謝の言葉を返した。大輝の言葉が嬉しかったのか自然と涙が流れてくる。ずっと求めていた自分を評価してくれる人物がいる。それが勇者であったことが尚嬉しかった。
「なあ、もし良かったら君が抱いている村長への気持ちを俺に託してくれないか?戦う俺が無理やりにでもぶつけていくから」
「はい、ありがとうございます」
「うぉ!?」
女性は扉を横に引くと大輝の背中に抱きついた。そして、湧き上がる感情のままに泣いた。大輝はそんな女性に背中を貸しながらただ泣き止むのをひたすら待った。
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「俊哉、その情報は確かか?」
「ああ、精霊の言うことだから間違いない。それにお前自身もわかっているだろう?」
「まあな、うようよいてキリがないし。それに時が来るのを待っているかのように動かないのも気になる」
そう言いながら大輝は森の方へと目を向ける。その方向から感じる気配はまるでアリの大軍を見ているような気分だ。そして、それは森の5か所から確認できる。こっちの準備も出来たことだし、動かれる前に動いた方がいいよな。
「それじゃあ、簡単に説明するとこの村を囲むように五か所に多数の強い気配が確認できる。そして、俊哉の精霊によって調べてもらったことによるとその5か所には魔法陣があるらしく。その魔法陣から魔物が湧いて出ているらしい」
「それって......」
大輝は思わず呟くユリスを見てバツが悪いような顔をした。もしかしなくても気づいているのだろう。昨日話したあの女性からの話だとあの女性と村長しか召喚魔法を使わない。その女性が使えることを知らなくても村長が使えることはきっと知っている。となれば、そちらに思考が傾くのも仕方がない。.......やはり確証が無くても伝えておくべきだっただろうか。そっちの方が心構えという点では変わってくるのかもしれないし。それに気づくのは時間の問題。だったら伝えるべきだろう。
大輝はあの夜に話せなかったことを話そうと動き出した瞬間、ユリスから待ったの声がかかった。
「大輝さん、先に全ての内容を話してからにしてください」
「......分かった」
そして、ユリスの言葉通り大輝は説明を始めた。召喚のためにかく魔法陣には解除方法が存在する。弱い個体を召喚するタイプのものだったら魔力を流し込んで暴発させることで解除できるが、今回のような効果が強いタイプは同じようなことをすると桁外れな大爆発を起こす。そのためその魔法陣を解除できる人が必要になる。それも繊細に魔法が使える者に限るが。
そして、現在大輝達の中でそれが出来るのは魔術師である茉莉のみ。それからクリシュナ達の四人。魔法陣は5つあるので必然的に茉莉とクリシュナ達はわかれることになる。そして、クリシュナ達からの提案で大輝とユリス、俊哉とクリシュナ、香蓮とリズベット、茉莉とセレネ、ライナリーゼとエミュの組み合わせで別れた。
組み合わせが決め終わると大輝はあるものを全員に渡す。
「大ちゃん、このキレイな石は?」
「爆弾」
「へー、ばく.......え?」
「「「「「爆弾!?!?!?」」」」」
大輝の言葉にセレネ以外の全員が反応した。当たり前だろう、勇者が見せたものが爆弾と言われれば誰だって驚く。そして、様々なことを言われて問い詰められながらも大輝はセレネにしたのと同じような説明をする。すると全員にため息を吐かれた。
「それならそうと早く言いなさいよ。突然爆弾なんて言われれば、驚くことはわかってたでしょう?」
「いーや、南。大輝はさすがにそんなことがわからないような奴じゃない。つまり、わかっていて反応をその反応を楽しんでいたんだ」
「おい、俊哉。さすがに俺はそんな奴じゃない。真面目に忘れていただけだ」
「大ちゃん......イジワル」
「待ってくれ、エミュ」
「全く、これだから勇者は」
「おいセレネ、お前は知っていただろうが。というかお前も俺と同じで当事者側だろうが。なにしれっとそっち側に混ざってんだ。戻ってこい、いや戻ってくれ。そして、助けてくれ」
「ふふふっ、イジワルな子にはお仕置きね」
「クリスさん、それだけはやめてくれ精神的に来るから」
「なら、じょそ――――――――――」
「リズさんのは却下で」
「わらしは甘い物がらべらいなー」
「まあ、それぐらいなら」
「なら、私は聖魔術師のローブが欲しいです」
「ユリス、何でも買ってあげるとは言ってないぞ。それに俺、それがいくらか知ってるからね。高すぎて度肝抜かれたこと覚えてるからな」
「ははは、面白いね~。全員にツッコミ入れちゃって~」
「冷静に見てないで、止めてくれ」
大輝は全員のある種の能天気な発言に今度は大輝がため息を吐いた。だが、そのおかげか変に肩に入っていた力が抜けて気持ちに少し余裕が出来た。そして、大輝が一回咳払いをすると全員が真面目な態度に戻る。それを確認した大輝は告げた。
「それじゃあ、討伐開始だ」
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