第66話 狙わせねぇぞ
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「なあ、エミュ。本気で言ってんのか?」
「私はいつだって本気だよ」
「いや、そんなもの見せながら言われてもなぁ.....」
大輝はエミュに見せられているそれを見て実に嫌そうな顔をする。一方、エミュは実にランランとした目で大輝を見つめていて、フランとドリィは不思議そうな表情を浮かべている。一応、大輝の部屋にはセレネと俊哉もいるのだが、その二人はニヤニヤとした笑みを浮かべている。
大輝はエミュからそれを渡されると村でリュークとラドフとバカやっていた頃を思い出した。そして、その後の罰を。まあ、詰まるところ大輝が渡されたのはゴスロリだ。これには一応理由がある。獣王からの話だと狙われれるのは女性だ。言い方を変えれば、男性は狙われないし、攻撃なんてもってのほか。となれば勇者である大輝は男だ。勇者の力が無ければ災悪は倒せない。ならば、どうするか?ここで逆転の発想だ。大輝を女にしてしまえばいい。そこで登場したのが例のゴスロリだ。そういうわけで現在に至る。
「ねぇ、いいから着てみなさいよ」
「そうだそうだ」
「クソォ。他人事だと思いやがって.....」
「大ちゃん、早くしないと着せ替えちゃうよ?」
エミュの高圧的な笑みが大輝を襲う。そして、大輝は最終的にその笑みに負けて渋々着替え始めた。それから着替え終わるとエミュが慣れた手つきで大輝を化粧して、金髪のかつらを被せる。
「「ほぉ......」」
大輝(女装)の姿を見てセレネと俊哉は思わず感嘆の声を漏らす。予想してのよりも数倍にも完成された女装に目を見開きながら。
「大ちゃん、ほら、声も」
「もうどうにでもなれ......」
大輝は若干やさぐれながらもエミュが持ってきた水の入ったコップを手に持つと一口含み、声を調整した。そして、ミックスボイスという発声法で女声を出した。
「これでいいか?」
「「お~~~~~~!」」
「主様が女勇者になったのじゃ!」
「マスターが同じ格好してるの!」
大輝の女声によってエミュ達の目の前にいる大輝はほとんどその面影を無くしていた。その姿にフランとドリィは興奮が冷めやまない。とはいえ......
「もうちょっと、良い顔をしなさいよ。せっかくの美人顔が台無しじゃない」
「そうだな、少し不愛想だぞ?」
「お前らまだ注文を付けるつもりか......」
こいつらの目がマジになっている。まさかさらに美を追求させようとでも言うのか。それに俺がこんな態度を取るのはなにもこれに限ったことじゃない。これで戦いに出向くのはもちろん嫌だが、なにより嫌なのはこれで香蓮と会うことだ。気まずいったらありゃしない。だが、あの理由もわかってしまうので、引き下がることも出来ない。もう半分諦めているが。
「それじゃ、行きましょ」
「行くか」
「行こう―」
「はあ~~~~」
大輝はもうすでに疲れたようなため息を吐くとゆっくりと立ち上がる。そして、フランとドリィを剣に戻すとエミュ達の後ろを追って歩いた。
「それじゃ、ペアを決めよう」
エミュは番号を隠した短い木の棒を持つと大輝達に向けて手を出した。そして、大輝達はそれぞれ一本ずつ引いていき、番号を確認していく。
「それじゃ、見せて」
エミュの掛け声で大輝達は番号を見せていく。そして、番号が1番で決まったペアはエミュとセレネ。2番で決まったペアは俊哉と茉莉。そして、3番で決まったのが.....
「俺と.....」
「......私」
大輝と香蓮はそれぞれ気まずそうな顔をする。これにはセレネ達も何とも言えない表情になる。だが、これは純粋な運で決まったこと。変更も出来なくはないが、エミュがそれをさせないだろう。セレネはそんなことが予想出来、思わずため息を吐いた。
「もう諦めなさい」
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獣王国を出て、しばらく災悪がいるという山道を歩いていた。なにもない無言は耐えかねたので俊哉は先ほどの結果について尋ねた。
「なあ、あれどう思う?」
「月島君の恰好?」
「まあ、それもそうだが......」
なんか本気でわかっていないような顔をしている茉莉に俊哉はため息を吐いた。それにしてもこれはなんという運命の巡り合わせだろうか。よりにもよって関係性がぶっ壊れた大輝と南が一緒になるとは。
今更だが、大輝達がペアに分かれたのは敵を見つけやすくするためだ。魔物はなんであれ基本少人数だと狙って襲ってくる率が高くなる。それを利用して、誰かが災悪を見つけたら空へと合図を送って仲間を呼んで討伐。これが今回の流れだ。だが、これにはもちろんリスクも伴う。それは仲間が集まるまでに数分かかるということだ。つまりは見つけた者たちがその場で災悪を足止めしなければならない。しかも今回の災悪はそいつを筆頭に集団でいる可能性の方が高い。それを考えたなら分かれる必要も無かったかもしれないが、それはどれほど時間がかかるかわからない。しかし、少しでも早くこの国を安全にするために大輝達はリスクを承知でこちらの方法を取ったのだ。
俊哉は精霊から周囲の情報を聞きながら茉莉に話しかける。
「そういえば、ここに来るまでの数日間で何かわかったことはあるか?」
「わかったこと~?」
「感情面でだ」
俊哉は茉莉に定期的にこの質問をしている。早くこのまどろっこしい関係をどうにかしたいというのもなくはないが、どちらかというと茉莉のことを思ってのことだ。ここに来るまで大輝と香蓮はかなりわかりやすい感情の出し方をしている。もし、教室に仲の良かったカップルが互いを無視していたなら「もう確実にケンカして、結構終わってるな」ぐらいのレベルまで。「さすがにわかるだろう」と思っている俊哉に茉莉は少し頭を傾ける。
「そうだね~、話したいのに話せないって感じは伝わってくるんだけど、そこでどうして動けないのかはわからないんだよね~」
「どうしてってそりゃあ、ケンカしたからだろ?それでいつもの距離感がわからなくなって、普段の接し方がわからなくなって、困ってるってことだろ」
「それって話せばわかっていくものじゃないの~?」
「それはあくまで会話を始めた時の話だろう?あいつらはそれ以前の問題だ。茉莉にはその経験ないのかよ?」
「私は無いかな~。まともに仲良くなったのがみなちゃんだし~」
「お、おう、そうか......」
俊哉は思わず口ごもったような返事をした。そして、なんかサラッと重たい話を聞いてしまった感じがして自分の発言に後悔している。まともに......か。なんか茉莉の中学以前のイメージが休み時間に一人で読書というイメージしか浮かばない。さすがに失礼なイメージだとは思うが、あながち間違っていないような気も......
俊哉が自己嫌悪に陥っている一方で、言った茉莉はあまり気にしていない......いや、全く気にしていない様子だ。今が楽しければそれでいいといった感じで。
「ウォン!」
「どうしたの、レオ~?」
「どうやら敵さんのお出ましのようだぜ」
レオ(大)が突然吠えたことで驚く茉莉に、俊哉は精霊から聞き入れた情報を口にする。そして、すぐさま戦闘態勢に入った。茉莉もレオ(大)の背に乗ると弓を構えた。
「ウキキキキッ!」
「ウキー、ウキウキー」
そして、現れたのはもとの世界でよく見る猿に似ているが、ゴリラのような筋力量の体躯にどこで奪ったのだろうかと思われる軽装備を身につけた3メートルもの巨大な猿の魔物が二体、そしてその二体の周囲を囲うように多数の普通サイズの猿の魔物がいる。
「いきなりか!」
「レオちゃん避けて!」
すると小さい方の猿が手に持っていた石を投擲してきた。俊哉とレオはそれぞれ左右に分かれて避け、そのまま挟み撃ちにしようと動いた。だが、その行く手を阻むように猿(小)が手に短剣を持って立ちはだかる。
俊哉はその猿に<全力衝突>をかまして吹き飛ばすとそのまま猿(大)に向かって切りかかる。
「ウキ――――――――――!」
「なっ!」
だが、猿(大)は宙に舞った猿(小)の足を掴むと俊哉に向かって振り下ろした。俊哉はそのあまりに非情な攻撃に思わず動きを止めてしまった。しかし、当たるわけにはいかない。俊哉は複雑な感情を抱きながらその猿を切る伏せる。その瞬間、俊哉の四肢に他の猿(小)が纏わりついてきた。そして、身動きが取れなくなった俊哉の腹部に猿(大)の思い拳が突き刺さる。
「ぶはっ!」
「俊哉君!?」
「ウォン!」
猿(小)ごと吹き飛ばされる俊哉を見て茉莉は思わず叫んだ。だが、すぐにレオから「あいつは大丈夫だから、目の前の敵に集中しろ」と叱咤された。茉莉はその声で我に返ると魔力せ生成した矢をつがえた。
「やっ!」
「キキッ!」
「ウギャ―――――――――――!」
レオ(大)は眼前へと迫る猿(小)に斬撃を飛ばして、切り裂きながら他の猿達を牽制する。そして、開いた距離を使って茉莉が矢を放っていく。その矢は軌道を変化させながら的確に猿(小)を射抜いっていった。するとその射抜かれた猿を鷲掴んだ猿(大)は茉莉とレオに向かって振りかぶると投げてきた。
「レオちゃん」
「ウォン」
「キキ――――――――――!」
「え?」
「キャウン!」
茉莉はレオ(大)に素早く後退の指示を出すとレオ(大)は指示されたように動きながら投げられた猿を避けていく。その瞬間、頭上にある木の枝から気配を隠していた猿(小)が強襲してきた。茉莉はその猿の存在に気づかず、体を捉えられるとそのまま地面へと押さえつけられる。
レオ(大)は茉莉を助けようとその猿を追い払おうとするが、横からタックルしてきた猿(大)によって吹き飛ばされる。そして、その猿は茉莉に腰にある剣で切りかかろうとする。
「俺を無視すんじゃねぇ!......精霊の刃!」
「ウギャ―――――――――――――――――!」
俊哉は行く手を阻む猿達に<全力衝突>で強行突破しながら、茉莉に切りかかる猿に後ろから切りかかった。切られた箇所は火傷して爛れていく。さらに、吹き飛ばされたレオがその猿を吹き飛ばし返した。
「仲間は殺させねぇぞ」
「ウォン!」
俊哉とレオは茉莉を庇うように前に立つと戦闘態勢を立て直した。
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