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第65話 どうにでもなってはいけないこと

評価、ブックマークありがとうございます。励みになります(*^-^*)

「神託が下りました。場所は【獣王国 カザフィリア】です。それでは此度の討伐任務、ご健闘お祈り申し上げます」


「おう、任せろ」


 ミリアは恭しくお辞儀した。それに大輝は元気よく返事する。だが、ミリアは大輝の顔を見ても晴れやかとはならなかった。なぜなら大輝と香蓮の様子が明らかにおかしいことを知っているからだ。そんなこと人から伝えられなくても見れば普通に。


「大輝様!」


「ん?」


 大聖堂を出ていく大輝をミリアは思わず引き留めた。本当にこんな調子で行って大丈夫なのか。でも、この国のためを思うと「行ってはいけない」とは言えない。そんな切実な思いが大輝に届いたのか大輝はミリアにサムズアップをする。


「大丈夫だって、心配すんな」


「ですが......」


「あー、いろいろ迷惑かけちまったみたいだな。この詫びは必ずするよ。約束する」


「.......」


 ミリアは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どう言ったらいいかわからない。でも、なにか言った方がいいとも思っている。そんなどっちつかずの自分に嫌気がさしてくる。


「なあ、ミリア。そんな考えることはねぇよ。俺達がいつも通り帰って来る、それだけを願っていてくれ」


 大輝はそう言いながらそっとミリアの頭に手を置いた。安心感を与えるためかどうかは大輝自身もあまりわかっていない。だが、こっちの方が言葉よりも伝わる気がした。


 するとミリアはあまりに突然の行動に体を硬直させながらもその顔を赤く染め上げていく。そして、数秒後に「き、急に何するんですか!?」と慌てながら大輝から距離を取る。なんでかわからないが以上に心拍数が高いような気がする。そんなミリアの表情を見て大輝は満足そうな顔をした。


「うんうん、やっぱミリアにシケた顔は似合わねぇな」


「は、早く行ってください!皆を待たせてますよ!」


「ははは、そうだな。そんじゃ、行ってくる」


 大輝はミリアに手を振りながら大聖堂を出ていった。ミリアは「もうなんだか心配して損した」と思いながらもその表情は明るかった。


**********************************************

 数日後、大輝達は王の間にて獣王に謁見していた。獣王の姿は獲物を狙う鋭い目つきにフッサフサの毛並みをしたザ・ライオンといった姿であった。ただ二足歩行で椅子に座っているというどことなくシュールさを感じるのを残して。


 獣王は一回咳払いをすると大輝達に声をかけた。その声は渋くダンディーであった。


「まずは勇者、大輝殿。来てくれ感謝する」


「滅相もございません。私達の目的は『災悪』の討伐ですから」


「その言葉を聞けて嬉しく思う。貴殿らの部屋は用意した。好きに使うがいい」


 すると獣王はあいさつはこれまでといった感じで本題を切り出した。


「さて、今回貴殿らに討伐して欲しい災悪、実はこちらですでに調査してあるのだ」


「本当ですか!?」


 大輝は獣王の言葉に思わず反応した。これまでの二回の討伐、事前情報がなかったから(エルフの国の時の情報は違っていたし)実は結構困っていたのだ。大きさ、形、攻撃、知能の有無などの情報はさすがに望みすぎかもしれないが、それらが少しでもあるだけだいぶ変わる。こっちの一発本番的な戦い方、つまりゴリ押し戦法をしなくて済むのだ。まあ、といいつつも結局はごり押し戦法になってしまっているが。


 そして、大輝はその情報の内容を聞くと獣王が答えたものは以下の通りだった。


 獣王が編成した調査部隊によると今回の災悪の正体は猿の魔物であることが高いらしい。その理由はというとここ最近、猿の魔物が異常増加して、その魔物による被害が増加しているという。しかもその猿は単体で行動することなく、集団戦法を主とする攻撃をするらしい。となるとそれを統括する存在が必要だ。それに魔物は基本的に同じ種族としか群れない。それらの情報から災悪が猿の魔物であると判断したらしい。


 それから重要な情報がもう一つ。それはその猿に知能があるということだ。その根拠としては、猿に襲われた人の性別が全員女性であるという点でだ。丁度、調査部隊を編成している時に足りなかった人数を女性の兵士で埋めたことで発覚した。


 その部隊が目撃情報の多かった場所に向かうと多くの意思がその女性の兵士目掛けて投げられた。もちろん、これ以外にも多数の情報によってその猿が意図的に女性ばかりを狙っていると言ことがわかった。差別的な言葉になってしまうかもしれないが、やはり男性と女性では筋肉量、つまりは力の部分に大きく差が出てしまう。すると、その猿からすれば女性は弱い存在として映って見える。そして、女性を意図的に狙うということは判断できる知能が無ければならない。ということで、知能があると判断したらしい。ちなみに、男性兵士にははなから勝てないと思っているのか、それとも男だから興味がないのかわからないが被害は全くと言っていいほどなかったらしい。


「我が調査部隊からの報告は以上だ。無論、嘘偽りなどは一切ない」


 獣王は一気に話したせいか大きく深呼吸して呼吸を整えた。その少しの間、大輝は思考していた。


 猿の魔物ということは動きは人に近いかもしれない。人に近いとはつまり道具を使うということだ。それは今まで戦ってきたゴブリン、オーク、オーガなどの人型種の魔物と変わらないが、問題は知能があるということ。それらの魔物には他の動物に比べれば知能的なものは見られたが、ほとんどは直線的な攻撃しかなかった。だが、猿の魔物であれば少なくともそれらの魔物よりは知能が高い。


 加えて、それに関してもう一つ考えなければならないことがある。それはどこまで知能があるかだ。これまで戦ってきた「災悪」は力任せな戦いが多かったが、優先して先に強い者かまたは弱い者のどちらかを確実に潰そうと動いていた。それだけでゴブリンどもよりも知能がある。だが、今回はたださえ知能がある魔物がさらに知能をつけたという話だ。ならば、ほとんど人と戦っているのと変わらないかもしれない。一応、対人戦は何回かある。だが、そもそものスペックが違ってくる可能性もあるのでこれには実際に戦って測る必要があるかもしれない。あとは......


 すると獣王は大輝に声をかけた。


「大輝殿、どうか我が国のことはよろしく頼む。祝いの席は盛大にやってやるからな」


「期待しています」


「そうかそうか、がははははは!」


 獣王は大輝の言葉を聞くと盛大に笑った。どうやら期待にそえた回答が出来たらしい。そうして、謁見が終わった。


 大輝達はそれぞれ与えられた部屋へと入っていく。そして、大輝は部屋に入ると装備を外しながら一直線にベットへと向かった。


「はあ~~~~~~」


 それからそのままベットに倒れ込んだ。だいぶ疲れたようなため息を吐きながら。とはいえここまでに魔物に襲われたということはなく旅自体は実に快適だった......あることは除いて。


「.......」


 大輝は仰向けに体勢を変えると目を腕で覆った。思い出すは香蓮とのあの日のこと。実はあれ以来香蓮とは全く話していない。未だどう話しかければいいか迷っている。強引にいっていいものなのか。だが、香蓮は明らかにこちらが近づくことを拒絶している。なら、今近づくのは得策ではない。しかし、そんな悠長なことを言っている時間もないだろう。


「一体、どうすればいいんだ......」


 この世界に来るまでのことだが、中学に上がった時に似たようなことがあった。だが、あれは中学生という多感な時期に周りの男子からからかれるのを防ぐためだ。だが、今思えばあの時よくそのまま疎遠にならなかったと思う。なぜか知らないが、その時はやたら香蓮が世話をやきに来たのだ。だから、今もこうして一緒にいる。


「香蓮は俺のことをどう思ってんだ......」


 先ほどから考えるたびに独り言が漏れてしまう。だが、仕方がない。あれだけのことをしておいて簡単に忘れられるはずがない。そして、香蓮の伝えたかったことが上手く理解できない。なぜ二回も俺のエミュに対する思いを聞いてきたのか。そして、なぜわざわざ比較するような質問をしてきたのか。香蓮は香蓮、エミュはエミュで思いの尺度は違う。本来、比較すべきものではないのだ。そして、あの時俺は嘘をついたが、香蓮はどう答えて欲しかったのか。きっと自分の気持ちを押し殺して香蓮と選択しても、俺と小さい頃からいた香蓮が俺の言葉を聞いて嘘をついているかどうか見抜けないはずはない。その選択をしてもきっと失敗してた。


「香蓮は俺のことが好きなのか?」


 なぜかふとそんなことを思ったが、すぐに頭を振ってその思考を拭った。それはただの自惚れで驕りだ。幼馴染だからって小説みたいにそんなことになるはずがない。全く自分が嫌になってくる、いや、もうあの時から自分のことなんて嫌っているか。香蓮の気持ちも考えずこっちの都合であんなこと言えるんだからな。これが向き合うということなのかどうかすらわからないが、ここで止まるわけにはいない。ユリスと約束したってのもあるが、俺自身がこんな不完全燃焼な形で終わりたくない。


「さて、どうするか......」


 逃げるのはやめだ。考えろ。考えつくせ。そして、その言葉は決して嘘偽りであってはならない。俺自身が抱く香蓮への気持ちを。けど......


「香蓮とは釣り合う気がしねぇ.....」


 これだけはなぜか揺らぎなかった。固く誓い過ぎて自分の言葉じゃビクともしなくなっている。きっとここが香蓮との関係性を決める決定的な場面であるだろう。それはセーブなどもちろん出来るはずはなく、一発本番。少し間違えてだけでも一瞬でもうなにも伝わらなくなるかもしれない。だが、もうやるしかない。うだうだ考えるのはもうやめだ。


「とりあえず寝よ」


 大輝は体と気力を休める意味で泥のように眠った。

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