第47話 討伐後の宴#3
勝手ながらまたまたあらすじを変更させていただきました。よく考えたら「大輝、魔法陣の謎とか全然探ってねぇじゃん」とか「そのことに一切触れずに答えわかっちゃったわ」と思いまして、とてもシンプルにしました。まあ、読んでくださっている方にはあまり関係ないことですけどね(笑)
「大輝、こんなところにいたのね」
「ん?......香蓮か、どうした?」
「少し空気を吸いたくてね」
香蓮は気持ちの良い風に髪をかき上げる。そして、大輝の隣に静かに座った。
しばらくの沈黙が続いた後、香蓮が口火を切った。
「......生きてるね」
「ああ、生きてるな」
「ごめんなさい、私のせいで......」
「謝んな。生きてる......それだけでいいじゃねぇか」
「......そうね」
香蓮はその言葉に心から安堵した。だが、同時に罪悪感も生まれた。正直、どんなに責められても仕方ないと思った。私たちを助けるために大輝は一度死にかけた。幸い、無傷であったがもし......もし、何かあったら。そう思うと震えが止まらなかった。だから、何言われても全て受け入れるつもりだった。
だけど、私は罪を犯した。大輝と自分の関係を利用した。大輝の優しさにつけ込んだ。そして、責められることもなく私は許された。
私は責められたかったのかもしれない。責めて、「お前が自力で対処出来てれば、俺はこんな怖い目に会わなかった」と。けど、結局、自分が可愛くて、甘えて、庇護して、許された。......そんな自分が私は嫌いだ。
勇気出して謝ってもそれはただ言葉を並べてるだけで、本当は許されるのを望んでいた。
大輝は優しい。無鉄砲で、変な時に頑固で、変態だけど優しい。それは昔っから知ってる。
『言いたいことははっきり言わないと後悔しちゃうよ?』
不意にエミュの言葉が蘇る。言いたいことは言った。でも、大輝の優しさに甘えて伝わらなかった。
『香蓮ちゃんなりに言葉で気づかせないと』
どうやって?私の言葉って何?どんな言葉を送れば大輝に届くの?
『諦めるの?』
諦めたくない。ちゃんと謝りたい。でも、一度失敗した。
『諦めないわ』
香蓮は自分が言った言葉を思い出した。今は迷っているが、あの時の言葉は本物だった。そうだ......諦めたくない。ちゃんと謝りたい。大輝はきっと私のせいとは思わないだろう。それでも!
「大輝、改めてちゃんと言わせて......ごめんなさい」
「......それが、お前の愚痴か?」
「え?......そうね、愚痴ではないけど言いたいことであるのは確かよ」
「そうか、ならちゃんと受け取った。俺はその上で香蓮を責めるつもりは無い」
「そっか」
香蓮は心が晴れていくような気がした。より風の気持ちよさを感じ、より木々の自然な匂いを感じる。すると、香蓮は「そういえば」と言い始めると言葉を続けた。
「大輝はこの森の精霊のこと知ってたの?」
「もしかして気づいているのか?」
「ええ、おそらくね。この森の精霊はあの蜘蛛達だったんでしょ?」
「ああ、そうだ。だから、俺は精霊とのコンタクトの件を自ら引き受けたんだ」
大輝はそう言い切ると残っていた酒を飲みほして、容器を空間宝物庫にしまった。
香蓮はそんな大輝の優しさが誇らしく感じた。わざわざ聞かなくてもその真意はわかる。おそらく、エルフの人々を傷つけないためだ。長年、信じ続けてきた精霊の正体が「蜘蛛でした」なんてことを知ってしまえば、大きなショックを与えてしまうだろう。だから、大輝はそれを自ら引き受ける形でうやむやにした。言わば、優しい嘘だ。
香蓮はそんな大輝に優しい笑みになる。最近、こんな表情になることが増えた。いや、きっと遡れば、この世界に来てからだろう。
「お主らよ、もうすぐ時間じゃ」
「キャッ!」
「ん......ああ、もうそんな時間か」
大輝は「ん~」と大きく伸びをしながら立ち上がると香蓮に手を差し伸べた。その行動に香蓮は思わず目をパチクリさせる。
すると大輝が良い笑顔をしながら告げる。
「これからすげーの見られるらしいんだ。どうせだったら、一緒に見ないか?」
「ええ、是非!」
そして大輝と香蓮は歩き進むと崖の淵までやってきた。丁度、別のキングトレントに落とされた場所だ。するとその張本人が話しかけてきた。
「お、お主らか。あの時は済まなかったの」
「あれは簡単に許せるもんじゃないんですが」
「なら、許してもらえるよう本気を出すかの。」
そう言うとキングトレントは他のキングトレントに交信したときと同じように幻想的な光を灯らせた。
「お主ら、儂に見惚れてないで。ほれ、前を見よ、前を」
「おお~~~~!」
「......きれい」
促されるまま前を見た大輝と香蓮は思わずその光景に目を奪われ、感嘆な声を上げる。
まるで蛍の光のようなオーブが空中を漂い、崖下に見える森から聖樹に至るまでその葉を黄緑色のネオンライトに輝かせている。一生かけても見れるかどうか。とにかく「すごい」とか「きれい」という単純な言葉しか出てこない。それ以外どう言葉で表せばいいかわからない。
でも、この言葉だけは伝えなければ。
「大輝、ありがとう。誘ってくれて」
「ああ、誘った甲斐があったもんよ」
大輝は香蓮に向けていたずらっぽく笑った。その笑みに香蓮も頬を緩める。鼓動が高鳴る。やや顔が熱い。
その時、香蓮の口から思わぬ言葉が出た。それは香蓮自身も考えてもいなかった言葉であった。
「ねぇ、大輝。エミュのこと、どう思てるの?」
「......」
大輝は少しの間、何も言わなかった。それはたった数十秒のことであったが、それだけで香蓮の心を締め付けるには十分であった。
大輝は口を開けると一言だけ言った。
「......大切な仲間だと思ってる」
「......そう」
大輝の言葉を聞いた香蓮の心に小さなひびが入った。
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「クソッ!やられた!」
フードを被った男は愚痴を吐きながら、地団駄を踏んだ。このままでは俺が殺されてしまう。
「何をミスったんだ?ちゃんと言われた通りに作り出したはずだ」
フードの男はその時のことを鮮明に思い出そうとする。だが、思い当たる失敗点などない。むしろ、成功してもいいはずだ。ただ......
「予想外だったのは、思ったより恐怖値と生贄が集まらなかったことだな。せっかく目覚めさせたっつーのに、全然動きやがらなかったからな」
「これ俺のせいじゃないよな」と思いつつも何か挽回策はないかと考える。そして、そこでパッと閃いた。
「あの、聖樹に巣くっている蜘蛛を変性させてしまえばいいんじゃないか?」
「それは嫌ね。」
「......!」
フードの男は咄嗟に後ろを振り返るとその声がした方から距離を取った。するとその木の裏から一人の妖艶な女性が現れた。
女性は「ふふっ」と余裕の笑みを浮かべながら、フードの男に近づいていく。
「お前が、まさか......」
「ええ、私がこの森の守り神で全ての蜘蛛を統べる女王よ。あなたは私をお探しでしょ?」
「そうだな。......人間に変身できる魔物か、これはいい。最高物件じゃねえか」
フードの男は高らかに笑うと腕を軽く振って袖からダガーを取り出した。
「ちっと、痛てぇから覚悟してろよ!」
フードの男は蜘蛛の女王に突貫するとダガーを思いっきり突き刺した。その攻撃に蜘蛛の女王は自身の腰辺りから六本の蜘蛛の足を出すとその足で攻撃をさばく。
フードの男は攻撃が通らないとすぐさましゃがみ込んで足払いをした。だが、蜘蛛の女王は六本の蜘蛛の足で自身の体を浮かすことで避けた。
だが、フードの男は追撃とばかりに自身の太ももに携帯していたナイフを投げる。
蜘蛛の女王は腕を伸ばすと手から蜘蛛糸を発射し、そのナイフを捕らえて回収した。その全く戦闘する気がない態度にフードの男は腹を立てる。
「おいおい、お前は俺を排除したいんじゃないのか?」
「ええ、したいわよ」
「なら、なぜ戦わない」
「あら、これほどまでに美しい景色をあなたの血肉で汚したいとはわからない人ね」
そういいながら蜘蛛の女王は辺りを見回す。きれいな黄緑色のネオンカラーがこの森をより幻想的に色づかせていく。その光景に思わずうっとり。
フードの男は増々青筋を走らせていく。この魔物風情がぁぁぁ!
その瞬間、四方八方から突如として蜘蛛糸が向かってきた。
「!」
フードの男は蜘蛛の女王に目を向けすぎて、反応が遅れ捕まった。その糸の先には大小さまざまな蜘蛛たちの姿が。蜘蛛の女王はその男の無様な姿を見てあざ笑う。
「て、てめぇ!」
「あら、腹を立てるのかしら。私は戦うとも言ってないし、戦わないとも言っていない。けど、あなたは勝手に攻めてきた。なら、正当防衛するしかないじゃない?」
蜘蛛の女王はゆっくりとフードの男に近づいていく。
「それにお忘れかしら。これが本来の魔物との戦闘よ。あなたが勝ってに私の容姿から人間扱いして戦い方を変えていただけ」
「くそがぁ、解きやがれ!」
「そう言って、解くものがいるとでも?ましてや襲ってきた相手に。」
蜘蛛の女王はフードの男の前に立つ。男は威張り散らしながらもそれはもはや虚勢の域でしかなかった。なぜならその顔は青ざめている。
「あなたは直情的でとても誘導しやすかたわよ。その点で言えばあの勇者ちゃんの方がまだ冷静だわ」
「お、おい、やめろ」
「それじゃあ――――――――――」
蜘蛛の女王はその姿を本来のものに変え、20メートル近くの大蜘蛛になった。その姿にフードの男は後悔した。俺はなんて化け物に手を出したのかと。
「―――――――いただきます」
「あああああぁぁぁぁぁ!」
フードの男は蜘蛛の女王によって欠片も残さず美味しくいただかれた。
食事を終えると蜘蛛の女王は再び人型へと戻る。そして食った男の魂を供養するかのように手を合わせた。
「それで、一体いつまで隠れ続けるつもり?」
蜘蛛の女王はどこかに向かってそう言うと一人の男が返事を返し、その姿を現した。
「まあ、気づくよな。でなきゃ、俺の部下に気づくはずねぇし。しかし、まあ、勇者すら気づかせなかった魔道具を使って気づくとは、感服しかねる」
「当たり前でしょ?この森は私の手のひらの上のようなものよ。ならいくらコソコソしようと気づかないはずないじゃない」
「ま、そりゃそうだ」
男せ戦闘意思はない。だが、上手く隠しているかもしれない。そして、戦えば確実に強い。
そう思った蜘蛛の女王は軽く脅しをかけた。これで大人しく帰ってくれればそれが一番いい。だが、帰らないというなら全身全霊で戦うのみ。
「それで、あなたはどうするの?あなたも私のお腹に収まりたいのかしら?」
「そりゃあ、ごめん被る。......もうちょい時間稼ぐか」
男はそう言いながらこの森を去っていく。蜘蛛の女王はその男を警戒しながら見送った。
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これで第2章は完結になります。明日は新章です!
それではまた次回




