第45話 討伐後の宴#1
大輝たちが朝に目覚めると蜘蛛の魔物がセコセコと作業していた。そこには大小さまざまな大きさの蜘蛛の魔物がいて、主にGの焼き焦げた残骸と大ムカデの魔物の死骸処理をしていた。
大輝たちはなんとも不思議な光景を見ながら、朝食を終え帰ろうとすると頭上から大きな気配を感じた。大輝は咄嗟にその方向を見ると今いる蜘蛛の魔物の中で一番大きい、おそらく大ムカデの魔物と変わらないぐらいの蜘蛛の魔物が聖樹の枝の上からこちらを覗いていた。
その蜘蛛はピョーンと枝から飛び降りると空中で次第に形を変え始めた。そして、その姿は人型であった。その蜘蛛の魔物はスタっと着地するとこちらに向かって歩いてくる。
「私はこの森で聖樹に住み着いています。この蜘蛛を統べる女王でございます。今回の『災悪』の討伐、本当にありがとうございました」
「......」
妖艶な雰囲気を漂わせる蜘蛛の女王は丁寧なお辞儀をした。大輝はその蜘蛛の女王のある部分を思わずガン見してしまった。そう、胸だ。蜘蛛の女王は豊満な胸をしており、さらに胸元がパックリ開いたドレスのような衣装を着ている。それでどうして見ずにいられようか、否、見る。見てしまう。
その視線に気づいた蜘蛛の女王はその胸を見やすいように上げるとグラビアアイドルのようなポージングをし始めた。そして、言う。
「お好きなのですね。私で良ければ、お礼はなんなりと」
「な、なんなりとですと!?」
「「「ジ―――――――――――――ッ」」」
「.........ハッ!」
思わず本音が漏れた大輝に後方から鋭い視線が突き刺さる。痛い、痛い。まるで針にチクチクと刺されているようだ。
大輝は咳ばらいを一回すると勇者モードにチェーンジ。とにかくこの空気をどうにかしようと話を進めた。
「問題ないですよ、それが俺たちの仕事ですから」
「そうですか。それは残念ですね、この際お近づきになれると思いましたのに」
......う、エロ可愛い。たとえ中身がばかでっかい蜘蛛だとしても、今は人型だ。だが、出来ればこの流れは勘弁していただきたい。
「大ちゃんのスケベ」
「大輝の女の敵」
「変態、勇者が」
三人の割と大きめな呟き声が聞こえる。こいつらわざと聞こえる程度の大きさで言っているな?だが、正論なのでなにも言い返せないが。......やめてくれ、その汚物を見るような目だけは。
そんな大輝を見て「ふふふっ」と蜘蛛の女王が笑った。大輝はその様子に気づき思わず見る。すると蜘蛛の女王は妖艶な笑みで返した。......なるほど、俺はからかわれたと。男の純情を弄びやがって!
だが、その割には大輝の視線は8割がた胸にいっているが。
「ははは、ご冗談を。それでは俺たちはもう行きます」
「あ、少し待って下さる?」
「ん?どうしまし......たあ!?」
そう言うと蜘蛛の女王は大輝にそっと近づき、首に腕を絡めたかと思うとカプリと大輝の首筋に噛みついた。大輝は思わず首筋を抑えながら、その場を離れる。
「な、何を!?」
「安心してください、悪いものではありませんよ。それは私からのお礼と思ってください」
蜘蛛の女王の言葉を聞いた瞬間、大輝の脳内にメッセージが流れた。
『女王蜘蛛の加護 敵から察知されなくなる
スキル 蜘蛛糸 』
大輝はこのメッセージを聞いて、「なるほど」と納得した。道理であの時、蜘蛛がどこからともなく現れたように感じたのか。それに、蜘蛛糸ってもしかして俺はスパ〇イダー〇ンにでもなれるってことか?
そして、話しているとなんだかんだでこの森の入り口、つまりはエルフの国があるところまで送ってくれるということになった。そして、大輝たちは元の姿に戻った蜘蛛の女王の背に乗るとそのままのんびりと帰っていった。
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「勇者様にこの森引いては聖樹を救っていただいたことを祝してカンパーイ!」
「「「「「カンパーイ!!!」」」」」
エルフの村長による音頭によって、災悪討伐の祝勝会が始まった。
現在、大輝たちはエルフの国の中央広場にて宴が催されている。主役はもちろん大輝たち勇者一行。そして、大輝は村長の隣を座りながら、エルフの美女に酒を注いでもらっている。
村長は目の前にいるエルフたちの方に手を向けながら、大輝に話しかける。
「あの踊りが我らエルフの伝統的な踊りです」
「へ~、きれいですね」
「そして衣装がなかなかにエロティックですね」という言葉を大輝はグッと飲み込んだ。
目の前にあるステージでエルフの美女が踊っている踊りは独特のアレンジがあるものの基本的にはフラダンスに近いものであった。故にフラダンスを踊る際に着るような衣装を美女が着ているとなると興奮するに決まっている。
「今回は本当にありがとうございました。精霊様も無事であったと聞いて我ら一同、とても安心しました」
村長は踊りを見ながら、大輝に聞こえる程度でそっと呟いた。精霊に関する情報は大輝が蜘蛛の女王に送ってもらっている際に送ったものだ。きっと俺から離せば信じてくれるかもしれないが、人種と魔物は相いれない。それがこの世界の常識であり、教えである。なら、無理に話して拗らせることもないだろう。
大輝は酒を一口飲むと「それは良かったです」と答えた。
宴もたけなわ。大輝は広場から少し離れた場所を歩いていた。酒の力も借りて、この宴を盛大に楽しむのもありだったが、どうにもそこまでの気分にはいられなかった。
大輝は森の入り口まで歩くとその近くに倒れていた大木に腰かけた。そして、ここに来る際に一緒に持ってきた酒を一口飲む。
「なんじゃ、儂には酒は無いのかの?」
「欲しいですか?なら、先に詫びが欲しいですね」
突然話しかけてきたのはキングトレントであった。大輝はその存在が分かっていたようで、空間宝物庫からトレントの雫を取り出すとチラつかせる様に見せながら、返事を返した。
「それは......儂の同胞たちが失礼なことをした。代わりに詫びよう」
「まあ、それでいいですよ」
大輝は立ち上がって、キングトレントの根元まで行くとそれを根元にかけ始めた。
「お~お~、染みるわい」
「それにしても、あれ意外行く方法は無かったんですか?」
「ないな、空を飛べるならまだしも。ただ、あれは本来、気持ちも準備出来て初めて行くんじゃがの、どうにもあやつはイタズ好きでああいったことをすることが多いのじゃ。」
「......燃やしていいですか」
「すまぬ、やめてくれ。後生の頼みじゃ」
大輝は思わず本音が漏れた。殺意も漏れた。幸い何も見えなかったから良かったものの、見えてたら間違いなくセレネにぶちのめされていたのはこっちだ。
そんな大輝の怒りにキングトレントは申し訳なさそうに謝った。
「そういえば、キングトレントさんってこの世界のことどれだけわかります?」
大輝は唐突にそんなことを聞いた。それは単純にこの世界のことを知りたい、知っておきたいと思ったからで、長生きだという植物系の魔物であるキングトレントなら他の人には知り得ないようななにかがあるのかと思ったからだ。
その問いにキングトレントは答える。
「儂にもわからないことはある。なんせこの地に根付いてしまったからの。じゃが、それでも儂らよりも時間が有限である人種よりはなにかと知っているかもな」
「そうですか。なら、『災悪』ってなにかご存知ですか?」
大輝はこの旅最大の疑問を聞いた。別に知っていなくてもこの旅に影響は少ないのだろうが、なんとなく知っておいた方がような気がした。初めて「災悪」を倒した今は特に。だが、それを確実に知っていそうな女神様とは今はコンタクトはとれない。だから、聞いてみたのだ。
その問いにキングトレントは少し考えるような素振りを見せると言葉を並べた。
「そうじゃの......それを一言で簡単に言い表すなら、『世界の不純物』かの」
「不純物......」
「ああ、そうじゃ。誰しもが持っていて、やがて溢れてくるものじゃ。それがこの世界で言えば『災悪』となって現れる」
「そういう......ことでしたか」
大輝はどこか納得したような顔をした。初の災悪である大ムカデの魔物はどこか禍々しい雰囲気を感じた。まさにこの森を破壊せんとするほどの。幸い被害はまだなかったが、もう少し遅ければこの自然豊かな景観は破壊しつくされていたのだろう。そう思うと倒せてよかった。ようやく実感がわいてきた。
大輝は喜びを噛みしめるようにグッと手を握って、その拳を額まで持っていった。
するとそんな大輝にキングトレントは話しかける。
「そうじゃ、もう少しで儂らが感謝を込めてすごい光景を見せてやるが、どうだ?見て見ないか?」
「はい、せっかくなんでみたいです」
「ならはよう、女子を連れてくるんじゃの」
「.......へ?」
「ん?だから、女子を―――――――」
「いや、それは聞こえています」
大輝は思わず頭を抱えた。このキングトレントは急に何を言い出すのか。仲間達全員で見ればいいじゃないか。
そんなことを思う大輝にキングトレントは言葉を続ける。
「儂らの見せる景色は特別な日にしかやることはなくての。それはそれは素晴らしいデートスポットなのだ。この景色を見た男女は9割成功すると言われている」
「その情報をどうして俺に?」
「なんじゃ?勇者である前に一人の男であろうが。好きな女子はいないのか?」
「......」
キングトレントの言葉を聞くと大輝は口を閉ざし、少しだけ寂しそうな、悲しいような顔をする。そして、そっと答える。
「......いませんよ。だから、感謝している仲間に見せたいと思います」
「......そうか。どうやらお主にも思うところがあるようじゃの」
そう言うとキングトレントは口を閉ざした。そして、大輝も倒れた木に座ると酒を一口飲む。その時の大輝はまだ哀愁が漂っていた。そんな時、遠くから声がかけられた。
「大ちゃん、少しとなり.....いい?」
エミュは優しい笑みでそう言った。
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それではまた次回




