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「いつも、ご苦労様」
「では、私はこれで失礼します」
「ええ、またお願いすると思うわ」
蜂蜜がかけられているらしい焼き菓子がたっぷりと詰められた籠を、使い走りのプリニウスから受け取って、自室に戻る。
焼き菓子はまた、妹たちに振る舞うことにするとして、私は無心で焼き菓子を掘り返す。
籠の底には、いつも通り、手紙が収められていた。
これは、報告書だ。
焼き菓子に蜂蜜がかかっているということは、これは良い結果を知らせる報告書のはずである。
そういう細かい所に気を回す男なのだ。
報告書を広げ、気軽に目を通す。
幸いなことに、私とクラウディア様の小さな陰謀は、上手くいったようだ。
ティベリアだけが頻繁にローと外出するならば、下世話な邪推を受けるかもしれない。
しかし、ウェスタ神殿が主導して、ローに言葉を教えるために、手すきの巫女が日替わりで、言葉を教えながら外出している。ということにしたらどうだろう。
もちろん姉妹たちには、そういった事情があると、不自然にならない程度で言いふらすように頼んである。
ローが姉妹たちにうまく受け入れられたおかげで、嫌がったのは、そもそも外出したがらないアントニアだけだった。
そして実際に市民の反応はどうか確かめるため、プリニウスにはローの外出を監視して貰っていた。
報告書を見る限り、特に妹たちの活躍が目覚ましい。
幼く可愛らしい妹たちに連れまわされる、言葉は拙いながらも優しい雰囲気をまとった男。つまり、ローの評判は上々だ。
これで、妹たちは息抜きができる機会が増え、ローは正式にウェスタ神殿に勤めるローマ市民であると認知される切っ掛けができた。
何事も、隠すから裏の意図を勘繰られる。
だが堂々と行えば、不思議と好意的に受け止められるものである。
「まあ、ティベリアはちょっとだけ不満そうだけどね」
クラウディア様の特別指導の成果が出たのか、表立って私に何かを言うことはなかった。けれども、ユリアが私の楽しみにしていたおやつ盗った。みたいな、じとっとした恨みがましい視線を未だに頂戴する。
理解はしたけれど、納得はしていない。と言ったところか。
小さい子供か。まったく、とうに見習い期間も過ぎているのだ、私たちは。
大きく息を吸って、深く吐く。
まあ、結果として、問題はないことがわかったのだから、良しとしようか
今回は短いので、もう一話あります。




