製鉄③
溶鉱炉を実際に使ってみる。
俺は監督兼保護者枠で付いてきた。やるのは皆だ。俺は指示以外の事をしない。
まず、火種を入れる。火をつけた木炭だね。それを平らに並べる。
次に、鉄鉱石を入れる。これも平らに並べる。
たまに石灰を撒く。
それを繰り返しながら溶鉱炉いっぱいまで入れたら蓋をする。蓋は完全に密閉するわけではなく、発生する高温ガスを抜くための、そのガスを再利用するためのパイプがつながっている。
あと、鉄鉱石や石炭を追加する穴もある。
送風口にフイゴを使って新鮮な空気を送り込む。1人でやると大変なので、3人がかりだ。
溶鉱炉内に送り込まれた空気が火種の熱を周囲に伝播し、溶鉱炉内の温度を高めていく。
炉の内部温度がどんどんと高まっていく。
透明なボーキサイトでは中で発生した光が漏れて何かと危険なので、ボーキサイト二重構造の外に石でできた壁を2枚設置してあるが。この2枚の壁を貫いて中の熱さが漏れ出てくる。今は真夏という事もあって、参加者は全員フンドシ以外の着衣をしていない。
「出てきたぞ!」
空気を送り込み始めてから1時間。溶鉱炉から鉄が出てきたらしい。
熔けた鉄は直視できない。そんな事をしたら目が潰れる。
しかし、熔けた鉄を運び出さないと、鉄が冷えて固まり、出銑口が塞がってしまう。ついでに、最初の方に出てくる鉄は純度が低いスラグ混じりの鉄でしかない。これをできるだけ意識して分離しないと駄目だ。
目視してはいけないものを、どうやって見て判断するというのか。
しょうがないので最初から作る量を決めておき、専用の穴に落とすに任せることにしている。熔けた鉄が通る穴とそこまでのルートはほぼ完全に石で覆われていて、目視できないようにしてある。
スラグ混じりの鉄用に、真っ直ぐなルートで落とす小さな穴を一つ。
本命の鉄用に、駄目な鉄の穴の奥にもう一つ大きな穴を作った。
一つ目の穴にスラグが混じった鉄が落ちる。落ちた先には氷水が張ってあり、熔けた鉄に触れて水蒸気爆発をする。先ほどの「出てきたぞ!」という発言は、その水蒸気爆発を確認したという意味だ。穴のある方に目を向ければ、もうもうと立ちこめる湯気が見えた。
穴をふさぐために、係の者がどんどん水を流し込む。入れた端から水蒸気になってしまうが、それでも水を足す。一つ目の穴を塞ぐためにも。
「本命、入ります!!」
立ちこめる湯気が太くなった。本命の鉄用の穴に溶けた鉄が辿り着いたらしい。周囲からわっと歓声が上がる。
一つ目の穴に落ちた鉄が穴を満たし、屑鉄が冷やされ固まったその上を通り、本命の鉄が次の穴に流し込まれているのだ。そちらの穴にも水が少し入れてあって、再び爆発した事で穴に鉄が入ったことが分かったのだ。
そうなると、もう一つ目の穴に水を流し込まなくてもいい。
忙しいのはフイゴ担当者ぐらいだ。
「あとは出来次第かな」
ここまで出来るのは、予想通り。そこまで難しい話ではない。
残るは鉄の状態である。




