魔法植物(上)
イタチという臨時収入を定常化させるために、森から地底湖までのアクセスを分かりやすくしておく。
これまでは2mの壁をわざわざ乗り越えた勇者級イタチしか来なかった訳だが、専用のルートを作り、平民級イタチでも迎え入れられるように工夫する。今更丘や地底湖の位置はずらせないので、丘の周辺をかえし付きの壁で囲い、新たに森へ抜ける地下通路を設置したのだ。
ウェルカム高級毛皮。我々はいつでも君たちを歓迎するぞ。
地底湖の利用法が当初の想定と大きく違ってしまった気がするが、有効活用できているのだから気にしなくていい。
それよりも、壁の中にある地底湖にイタチが棲み付いたことをもっと問題視すべきだった。壁は地下3mまで埋めてあるので、穴を掘られても問題ないはずなんだけど。
外から石でできた村の壁を確認してみると、植物の蔓などが張り付いており登りやすくなっていた。ダメじゃないか。これは定期的なメンテナンスが必要だ。もしくはメンテナンスフリーになるような周辺の改善をしないといけない。
俺は森に面している部分だけだが壁の上の方にかえしを増設し、表面の蔓は焼き払っておく。ついでに壁の近くの草も焼き払う。あとは地面を一体成型の陶器みたいになる程加熱する。壁から数mは植物の生えない不毛の大地にした。
何もしないよりはマシだろう、きっと。数日後にはその上に植物が押し寄せている絵しか思い浮かばないけど。
それから2週間ほど過ぎた。
農地や実験植物は相変わらず。大きな変化は見られない。果樹も露地とハウスで順調に育っている。
甜菜の栽培方法だが、夜に氷を置き糖分を増やすやり方が一月程度で限界一杯と分かったぐらいか。個体差があるかもしれないけど、それ以上は甘みに大きな変化が見られない。
イタチの方はあれから2度の増員があり、俺達に多くの毛皮を提供してくれた。集まった毛皮はコート3着分。俺達に高級毛皮など必要ないので、全て売却予定だ。
念のため、イタチの毛皮に関しては全て男だけで作業をしている。普段だと鞣しの工程などで女性の手を借りる事もあったが、ヨカワヤの反応を見る限り、止めておいた方が無難だろう。イタチの毛皮を処理している事は隠していないが、触らせてはいない。
そんな小さな成功と平穏を噛み締めていた俺に、特大級の爆弾が投げつけられた。
地底湖内部で、魔法植物が発見されたのだ。




