突然変異(仕込み)
チマチマと時間がかかる選別や交雑はその通り時間をかけて行うとして。
突然変異に関しては、すぐにでも進めて行こうと思う。
「半径5㎞から半径10mに紫外線を抽出。時間は……とりあえず10分でいいか」
紫外線は可視光線ではないので、収束しても目に見えるわけではない。そもそもオゾン層に阻まれて弱い光でしかないのだから、本来は大したものではない。
しかし万倍を超える収束により多大な熱量を伴ってしまえば、それは熱線攻撃に等しい。
俺は冷却を行い、熱ダメージが発生しないようにバランスを取りながら照射を続ける。見た目の上では甜菜に変化はない。
紫外線の照射が終わり、見た目だけはそのままの甜菜が残る。急激な変質や熱によるダメージはなさそうだ。
今回の対象になった甜菜は10株。そのうち5株に回復魔法をかける。回復魔法が遺伝子へのダメージ回復に有効かどうかの実験もついでだからやっておくのだ。人間相手ではまた違った結果になるかもしれないが、何も調べないよりはいいだろう。
次に、キメラ化実験をしようと思う。
使うのは俺がアブラナだと思っていた甜菜の仲間だ。たぶんこいつらは雑草化した元・甜菜だと思う。栽培種の近くには雑草種が生じるものだ。それこそ大麦に対するライ麦のように。
あとは全く違う植物を混ぜた時の反応も見てみよう。
雑草化の特徴は「育ちやすい」事と「収穫性が悪い」の2点だ。
生き残るために生命力を強くした反面、根の部分は細く可食部位が無くなるほどに変わっている。蕾の近くを野菜として食べたりしてみたが特に問題なかったけど、甜菜のように葉の部分まで食すにはあまり向かない形をしている。
キメラ化は互いの特徴がモザイク状に発現するパターンと、全く違った方向に発現するパターンがある。そしてどんな結果が出るかは試してから考えるしかない。
畑の近くに甜菜とアブラナもどきを並べて植えてみた。
そして地上に出たばかりの茎の部分を切断する。
そして甜菜とアブラナもどきの茎を入れ替え、回復魔法で繋げる。人間の腕だって千切れた物をくっつけながら回復魔法を使えばくっつくんだ。植物のように切られた程度じゃ死なない生き物であれば、これぐらい簡単なのである。
くっつけたばかりですぐに何かあるはずもない。これについては時間経過を待ち、見守るしかない。
ついでにライ麦やニンジンを使って同じことをしてみた。根っこはライ麦やニンジン、上だけ甜菜とか。はたまたその逆パターンとか。
これらがどんな成長をするのかは全く思いつかない。ただ、やってみると意外と楽しく、テンションが上がる。
人間、未知への挑戦ほど楽しい事は無い。
倫理観などで縛ってみても、好奇心は抑えきれない。
これの生育具合、成長速度を考えると1週間もあれば一つぐらいは形になるかな? 結果が出るかな?
明日という日が実に楽しみであった。




