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生贄の羊

「利益なら最初に提示しただろう? あたしらが(・・・・・)アンタの技術を売るんだよ。

 例えばこの村にも、ね」


 サヴが提示した俺の利益は、スケープゴートの役割だった。

 もし他の貴族が何か言ってきた場合、サヴが矢面に立つというのだ。


「出来なさそうな依頼はどうするんだ?」

「出来ない理由なんていくらでも作れるさね。人の問題、物の問題、時間の問題、環境の問題。

 むしろ簡単にできない事の方が有難がられるのが新しい事だよ」


 ふむ、と俺は納得する。

 売る技術をこちらが選べる立場にあるなら、サヴが俺の盾になるのは悪くない選択だと思う。俺のデメリットはほとんど無い。強いて言えば俺が指導する必要があることぐらいか。

 今までというか今もだが、サヴではなくヨカワヤがグラメ村専属の商人だったから、周囲への誤魔化しも必要にならない。ヨカワヤがメッセンジャーだったと言えば済むのだし。説得力は申し分ない。



 こうしてサヴはグラメ村に支店長としての移住が決まった。

 王都の方はもう引継ぎを済ませてきたらしい。失敗したらどうするんだ?


「ただの住人として住めばいいさね。上がいつまでも居座ったら下が育たないさ」


 いや、その場合サヴちゃん(ロリ)に割り振る仕事が。あんた、娼婦の仕事は出来ないだろ。

 って、魔法使いの仕事を割り振ればいいのか。





 話がまとまり、今回の積み荷の(おろし)と毛皮などの購入が終わったヨカワヤが王都に戻る事になった。

 帰り際、ヨカワヤはすすっと俺に近づき、こっそり耳打ちする。


「あんなこと言ってましたけどねー、本当は美味しいものが食べたかっただけだと思いますよー。

 母様、食い意地が張ってますからー。王都に居たのもそれが理由ですしー」


 ほほう。昔はあんまり気にしていなかったが、そんな人だったか?

 なんでヨカワヤがそんな情報を俺に流したかは気になるけど、いい事を聞いたと思っておこう。ある意味、俺の同類か。

 でも、そうなると食べ過ぎには目を光らせておくべきか? 油ものとか高カロリーもあるし。デスクワークばかりだと太りそうだ。



 ヨカワヤは周囲にサヴがいない事を確認すると、俺が口にしないでおいた、言ってはいけない事まで口にしてしまった。


「でもー、食べさせ過ぎちゃだめですよー。いくら幼児体型でもー、お腹がポッコリからでっぷりになったら――」

「なったら?」


 美味しい物を独り占めされる嫉妬からか、ヨカワヤがちょっと軽口を叩こうとしたところでサヴが現れた。

 噂をすれば影、それともマー○ィーの法則か。それがお約束と言わんばかりのタイミングでヨカワヤの肩が背後から叩かれる。


 振り返ることなく走り出すヨカワヤ、裸足で追いかけるサヴ。

 どうやらヨカワヤの出発は遅れるらしい。


「待たんかゴルァ!」

「たーすーけーてぇーー! えっ!?」


 あ、捕まった。

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