商売の話(上)
この世界には本当に神様がいる。俺も会ったことがある。
神話の類もあるけど、こちらは眉唾。会った事があるから分かるが、本当とはとても思えない。
この世界の神話はこうだ。
大地と海と空の世界。そこに1柱の女神が降り立った。
母神と言われる彼女は孤独を厭い、その世界と交わり12柱の神々を作った。
新しく生まれた神々は母に倣って多くの生き物を生み出した。
今ある動植物、人間はこの時作り出されたと言われている。
世界は命で満ち、全ては安泰かと思われた。
しかし、平和は続かない。
かつて母神が降り立ったかの如く、悪神が姿を現した。
悪神は母神を襲い、その体を使って多くの魔物を生み出した。
これを知った12柱の神々は協力して母神を弑た悪神へ戦いを挑む。
悪神は強大だったが、12柱の神々全てを相手取れるほどではなかった。長き戦いの果てに神々は悪神を討ち滅ぼす。
悪神を滅ぼした後、神々は魔物を地の底に封じて平和を取り戻そうとした。
悪神は滅び、魔物が封じられて。
しかし、それですべてが終わったわけではない。
悪神は生れ出た命全てに悪影響を及ぼしており、争い合うようになったという。
初めて聞いた時「ここで終わりかよ!?」って突っ込んだのはいい思い出だ。
「まいどー。ヨカワヤですー」
そうそう。
なんでこんな事を思い出したかというと。
「今日はスペシャルゲストもいますよー」
「坊主ー! 久しぶりやなー!」
サヴちゃん、登場。
「ちゃん付けすんなやゴルァ!!」
ヨカワヤの所のボス、サヴが来たからなんだよ。
このロリババ……へうっ!!
「だれがロリババアじゃ!」
口が悪く暴力的だけど、サヴは商売の女神様の神官なんでね。神様の事とか神話とかふと思い出したんだよ。
俺って神様とかどうでもいいっていうか頼る気ゼロだから考えていなかったけど、普通の奴には寺とか神社とか神殿とか教会とか、宗教が必要なのを忘れていたよ。
「祠の一つも無い村なんぞ、初めて見たわ。つーかお前、この規模の村に? 村?
まぁええやろ。
村で神様を祀らんとか、民心の安寧ちゅうもんを考えーや。神様がおらんと先の事とか、不安に思うやろ?」
いや、仕事があって飯が腹いっぱい食えて、寝るところに困らず遊びがある。病気や怪我は俺がいれば安心安全、魔法で全部解決だ。
これだけ条件を整えれば神様なんて誰も気にしないぞ。
「なんちゅう身も蓋も無い……」
現世利益、最優先!
「アホかぁっ!!」




