海のスポンジ
爺さんとの交易関係の話を終えると、しばらくは代り映えの無い日々が続く。
そんなある日、俺は食器洗いをする女性の手に、ありえない物を見た。
「それ、何?」
「海岸で拾った物ですよ。食器洗いに便利なので使っていますが……駄目だったでしょうか?」
彼女が手にしていたのはスポンジ状の何か。
女の手のひらよりも小さく白いそれは、俺の目にはスポンジにしか見えなかった。
これからも使い続けていいと許可すると、彼女は安心して食器洗いを再開した。
その傍らで俺は自分の考えをまとめてみる。
まず、魔法で似たような物を作ろうとしても軽石が限界である。それでは意味が無いと作る気も起きなかった。あれの用途は風呂のあかすりが限界である。
だからあのスポンジは天然由来のものだろう。
似たようなものとして、俺はヘチマを思い付いた。
つまりあのスポンジはヘチマかそれと似た何かと言う事になる。うん、実例が一つあるから特に不思議な話ではないよな。
彼女は海岸で拾ったと言っていた。
もしかすると海岸には同じものがまだ落ちているかもしれない。
それと、海岸に落ちていたという事は海を由来にする何かという事かな? ま、海岸を探してみれば分かる事か。
俺はどこに落ちていたかを確認すると、適当に子供数人を労働力として確保し、海岸に向かう事にした。
「りょうしゅさまー、ありましたー」
「こっちにもあったよー」
結論から言うと、スポンジは大量に落ちていた。
これまで誰も拾おうとしなかった事もあり、手付かずだったのだろう。そして食用に向かなければ鳥なども手を出さない、と。
たくさん落ちているのをありがたいとばかりに俺は袋に集められるだけ集めさせ、後でクッキーを焼いて配ると子供たちに約束すると歓声が沸いた。
落ちていたスポンジが何を原料にしているのかは分からないが、海岸に集まった理由は海流の都合だろう。
スポンジの原料は海の生き物で、その死骸から食えない部分であるスポンジを残して他の部分は腐り落ちたのだろう。
魚ではないと思うので、海藻かヒトデのような生き物ではないかと思う。
まぁ、海洋生物は上手く繁殖させられるかも分からないし、何でもいいけど。
こうして俺はスポンジを手に入れた。
数日かけて集められるだけ集めたが、量が少ないので利用方法は限られる。それに洗い物をする奴らからスポンジを取り上げる形にならないようにある程度はそちらに渡す必要があるな。
さて、何に使おうかね?




