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知識チート、成功の記憶

 知識チートは失敗することもあるが、たまには成功することもある。



 料理関係で感謝されることが多かったのは、保冷による食品保存関係の知識。王都では保冷庫を作っていた。壁を二枚挟んで断熱効果を持たせ、内部を冷やして保冷という魔法瓶などでよく聞く構造を利用したものだ。

 冷却部分は人力というか魔法使い任せだけど、今までは穴を掘って地下に造っていた保冷庫を地上に作れるというのは画期的な事だったのでそこそこいいお金になった。


 氷室のために地下室を作るのは難しいし、時間がかかる。立地条件からたまに作れない事情もあるから、氷室を諦めていた貴族はこぞってこの保冷庫を購入した。

 ある程度稼いだら情報を売ってさらに金を稼ぎ、今では俺の手を離れているけど。これのおかげで氷を作れる魔法使いの需要が高まったからか、ちょっとしたコネが出来たのは嬉しい誤算だったな。


 保冷庫があると食品の鮮度を維持しやすく、食の安全を高める事になる。

 ついでに保冷車の構想も売ったので、流通関連の改善にもなったと思う。



 他に広めた知識は、製紙関係と海苔づくり。


 まずはわら半紙のような、パピルスのような植物紙を作るための基礎知識を広めた。

 植物紙は王国内では流通しておらず、一部の他国で独占的に生産されていた。金のなる木というか、製造方法が秘匿されていた。ごくごく当たり前の話だな。

 すでに存在が知れ渡っているが、作り方が分からない。だから俺はさも機密情報を盗み出したかのごとく振る舞い、製紙に関する情報を王国で売ったわけだ。


 これに関しては、ものすごい額のお金になった。

 報酬は金貨1000枚相当の宝石たちで支払われ、この功績で俺は貴族になったと言っても過言ではない。

 それまで使われていた羊皮紙よりも薄く軽く書きやすい。広まるのは一瞬で、王国が製造に関する情報を秘匿せず公開した事もあり、王国のみならず周辺国家に一大ブームが巻き起こった。王国はこの件で他国から多くの金を巻き上げ、恩を売り、外交上の優位を得た。

 王国が情報を広めたのは秘匿した場合の生産量と消費量を考えたうえで、隠し通すのが難しいと判断したって事情もあるけど。あと、製紙産業を独占していた国への意趣返し?


 ちなみに。俺が領主をやっているのは、俺がこの件で恨まれているから。

 他国との国境に面していない魔境最前線送りにすれば、しばらくは手を出されないだろうという判断だ。



 製紙の技術が広まったついでに、海辺の町で海苔づくりができるように頑張ってみた。あと、寒天。


 やる事は基本的に同じ。

 紙と同じく細かくして、洗って、乾かすのを何度もやるわけだし。

 追加で焼いたり味付けしたりする工程を加え、魚醤に替わる調味料の一つとして海苔の事を教えてみた。


 寒天については天草があったので、ついでに。

 煮込んで「ところてん」を作るところまでがワンセット。押し出す道具までは伝えきれなかったけど、切って似た様な形状にできるわけだし、そこは自分で思いつくことを期待しよう。


 海苔と寒天は好評だったので、これもそれなりに広まった。保存もきくし、今では王都でも買えたはずだ。

 俺がいろいろと教えた事ではあるが、成功するまで試行錯誤には付き合わせたので対価は現物で受け取っただけ。現金はいくらあってもいいものだけど、それよりも海苔と寒天を広めて根付かせる事を優先した。





 他にも試せることはいくつもあるけど。知識を再現するのに物が足りない。それで諦めたことがたくさんある。

 今は村の事もあるし、生産系知識チートは試す時間が足りない。


 もっとも。

 知識チートは生産よりも「体制」の方が重要だと思う今日この頃。

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