知識チート、運営術
その日は気持ちの良い朝だった。
空は青く晴れ渡り、太陽がサンサンと大地を照らしている。昼になれば疎ましく思える日差しも太陽が昇ったばかりの朝のうちは心地よく感じる。風があり、それなりに涼しく感じるのも気分が良い。
俺は屋敷を出て、いつものように広場へと向かった。
広場に着くと、すでに女性陣による食糧配給が始まっていた。小さな村だ、全員が顔見知りである。挨拶を交わしながら朝飯を貰いに行く。
この村の飯は全員一括で作っている。金銭による購入などはごく一部の嗜好品、主に酒ぐらいだ。基本は給食である。
並べばオートミールのようなスープ粥を渡された。それをテーブル近くに並べられている椅子に座り、食べる。使うスプーンは日本の飲食店の様にテーブルに置いてある。
木でできたスプーンでアツアツのスープ粥を冷ましながら食べる。あまり美味くは無いが、不味いと怒る程でもない。この世界の平均から見れば上等な部類なのだから。用意している彼女たちは頑張っている方だろう。
村民の腹が満たされたら、毎朝の日課だ。
俺は広場の中央にある壇に上り、周囲を見渡した。よし、全員飯を食べ終わったな。
「おはよう! さて諸君。今日もいい朝だ」
「「「おはようございます!!」」」
毎日の事なので、みんなもすでに慣れている。俺の方に注目して「おはようございます」を唱和する。
雨の日なんかはやらないので、台詞にバリエーションが少ない。が、いちいち気にする事でもないだろう。
「仕事の方は引き続きだ。特に変化はない」
日本式企業運営法を俺は村の運営に取り入れた。
日本人的にはブラック企業だが、この世界全体で見たらホワイト企業と言える方法で皆を支配している。
「ではいつものをいくぞ! おはようございます!」
「「「おはようございます!!」」」
「ありがとうございます!」
「「「ありがとうございます!!」」」
「失礼します!」
「「「失礼します!!」」」
「すみませんでした!」
「「「すみませんでした!!」」」
朝には朝礼。
ついでにオアシス運動。
朝礼は作業を効率よく進めるため朝一番に全体の予定を提示し、やる事を確認する事。
オアシス運動は挨拶運動の事だ。やはり円滑な人間関係は挨拶から始まる。挨拶を軽視してはいけないのだ。
その後、グループごとに分かれて作業の確認、KY活動をしてから作業に移る。
危険除去もばっちりだ。
この国というかこの世界で、俺のやり方は異端で異質だ。始めたばかりの頃はなんでこんな事をやるのか理解されなかった。というか、今も理解されていないだろう。
しかし、やった分だけ効果は上がっていると思う。何をやるのかの把握と、その際に発生する危険の確認とその対処法。知らないままやらせたら大惨事になる事も、知っておけば何とかなるのだ。
だから俺はこのやり方を押し付ける。
理解されずとも構わない。
「今日も一日、安全に!」
「「「ご安全に!!」」」
人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。
領民を守るのが領主なのだから。




