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俺達の出会い

番外編です!

紘斗達3人の出会い編!どうぞ!



「そういえば、ヒロトとユーカとシューヤは生まれた時から仲良かったの?」

突然、シリティアがそう言い出し、俺達は顔を見合わせた。

「何だ、突然」

夕花が決まり悪そうに少し顔を背ける。

まぁ、夕花はなぁ。結構、大変だったからなぁ。

俺と秋弥は苦笑する。

「それ、私も知りたい」

紅葉が身を乗り出した。

「いや、実は中学に入学してからなんだよな、オレ達が連むようになったの」

秋弥がそう言って、なぁそうだよなと

目で確認してきた。

俺は頷いて返す。

「チュウガク?」

シリティアが首を傾げる。

「あーそっか。えーっと、日本では義務教育があってさ。最低でも子供に9年間は勉強させてやれーってやつが。1~6年目までは小学校、その7年目から9年目までは中学校に通うわけ」

俺がそう教えるとシリティアは感心したように目を丸くした。

「じゃあみんな勉強できるの?すごい国ねぇ」

「俺達にとっては結構当たり前だったんだけどな」

ここに来て、当然じゃないと気付いた。

恵まれてたんだよなぁ、俺達。

「オレら3人全員クラスが同じになってさ」

クラスはくくりのこと、とシリティアに教える。

「そんでオレと紘斗はすぐ仲良くなったんだけどさ、夕花がなぁ、ふぐっ」

「秋弥!!」

夕花が珍しく慌てたように秋弥の口を塞いだ。

「ちょっと、ユーカ!!邪魔しないの!!話聞けてないのよ!!」

シリティアが夕花に言う。そしていつもならやり返す夕花もこれまた珍しくうろたえていて、素直に秋弥の口から手を離した。

「う、ぐぐぐ……!!」

何か堪えるような呻き声を出している。

俺は苦笑してあの日を思い出した。

「たしか…」



────3年前、季節は春の半ば。

俺は中学に入学し、それなりに満喫した生活を送っていた。

中学入ってすぐに秋弥と仲良くなり、クラスの男女両方共とほぼ満遍なく話せるようになっていた。

そう、ほぼ。つまり、完璧ではない。

その話せていないのが、夕花だった。

「黒井って話しかけにくいよな」

秋弥に話しかけるとうんうんと頷いた。

「なんか、他の女子とも連んでねぇし、なんでかな」

なんか、当時の夕花はいつも1人で、誰かと連んでいるのを見たことがなかった。そのせいか、クラスの中で孤立し始めていた。女子の中では夕花を目の敵にしてハブるような奴もちらほらと出てくるようになった。

原因は、夕花に無視されたから。

それは確かに凹むけど、ハブるまではいかねぇだろ、とか思った。

一度話し掛けようとして、俺を見るその目にすごすごと引き返したのは悲しい思い出だ。

なんつーの?こう、「何を気軽に話しかけてきてんだよ、あぁ?あたしは誰とも連まないからな」って目だった。

そんなある日、総合の時間に薄い冊子が配られた。

そう、それは入学して一番最初の行事である、宿泊研修のしおりだった。

「6人を目安に班作れー」

先生がそう言うとクラスは騒ぎながら班を作っていった。

俺は秋弥と他男子3人と組み、5人になっていた。

しかし、ここでも女子のグループ社会。

夕花が1人あぶれるというパターンに陥った。

「あーどこかの班、黒井入れてもらえないか?」

先生が女子の方を見て言った。

「えーでも先生ー、私らもう6人でいっぱいなんですけどー」

クスクスと笑い声が上がる。

うっわー嫌な奴ら。こんなん俺でも泣いちゃうって。

俺は夕花が泣きやしないかと夕花に目をやって────文字通り、固まった。

ピンと背筋を伸ばして、泣くどころか笑った女子達を冷ややかに一瞥していた。

女子の笑い声が止む。

ふん、と鼻を鳴らして夕花が皮肉気に唇の端を吊り上げた。

俺は思わず笑う。

いい。あいつ、超いいじゃん。そこらの女子なんかより、ずっとお近づきになりてぇよ。

「あのーどこか…」

「はいっ」

俺は手を挙げた。

別に男子の班に女子が入っちゃいけないなんてルールはない!!

「俺達の班、一人分空いてます。入れるよー」

夕花に向かって笑って手を振る。

「おいおい紘斗っ」

同じ班の男子が俺の肩を掴んだ。

「いいじゃん、いいじゃん。空いてるのオレ達の班だけだし、女子いたほうがムサくないし」

秋弥が隣で茶々を入れる。

秋弥ならそう言ってくれると思ったぜ!!

「あー確かになー」

男子の意見、総一致。

「黒井はそこでいいか?」

先生が夕花に確認をとる。

俺は期待を込めて夕花を見た。

夕花と目が合う。

「────はい。構わないです」

夕花が俺達の班まで歩いてくる。

俺の隣の空いている席に座ると俺を見てボソッと呟いた。

「助かった」

ほらね、やっぱ正解だろ?



でも、現実は甘くなかった。

宿泊研修が始まっても夕花は一人で行動した。

待て待て待て待て!!何のために班編成したんだよ!!

「ちょっ、黒井!!先々行くなって!!」

「お前らとどうせ現地で顔を合わせるんだから、どんなペースで行こうと構わないだろう?」

「宿泊研修の意味考えてー!!」

思わず叫ぶ。

マジかよ。この社交性のなさ、幼稚園児以下じゃねぇか!!

「お前、ちょっとはオレらと歩こうぜー?せっかく同じ班になったのにさー」

秋弥が頭の後ろで手を組みながら言った。

うんうんと頷く俺を見て夕花がふん、と鼻を鳴らした。

「くだらない。あたしは、そういうグループ社会が大嫌いなんだよ」

ピシッと俺の脳内自己映像にひびが入った。

夕花が背を向けて歩き出す。

結構遠くに夕花の背が見えだした頃、動かない俺を見て秋弥が俺の肩を叩いた。

「紘斗ー?おーいっ」

「…の野郎…」

「は?」

顔を上げて夕花を見る。

ふざけんなよ!!

「何が何でも引っ張り込んでやる!!」


人間、一人で生きていけると思うなよ!!


次、夕さん!

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