4話 笑顔が一番
読んでいただいてありがとうございます。ゆっくり進みます。
コンビニの袋を下げ、歩いていると見慣れた家が目に入り、俺の母親に見つからないように小走りであかりの家の前に行く。
久しぶりにあかりの家のインターホンを押し、変な緊張感を味わいながら、誰かが出るのを待つ。
『和平君ね…どうぞ入って…』インターホンから一方的に話し掛けられ、返事を返す暇もなく通話を切られる。
インターホンから聞こえた声はあかりの母親のものだと分かるが、声に明るさと言うか元気さが無い事に緊張感を感じつつ、玄関に向かい扉を開ける。
『お邪魔します』そう声を掛けながら扉を開けると、依然見た時と比べて痩せ細ったあかりの母親が俺を出迎えてくれる。
『いらっしゃい。和平君…』そう声を掛けて来るあかりの母親だが、無理やり笑顔を作ったように笑いかけて来る。
『どうもお久しぶりです…』俺の言葉に突然あかりの母親は涙を流し、ごめんなさいごめんなさいと繰り返しながら泣き始める。
『え?え?だ、大丈夫ですか?』戸惑いながらも声を掛けるとあかりの母親は涙を拭い、あかりに俺が来たことを告げると何も言わず奥へと歩いて行く。
俺が知らない間にあかりの家庭で何が起きたのか分からないが、戸惑いを隠せないまま、靴を脱ごうと玄関の段差に座り込むと、あかりの元気な声が聞こえて来る。
『カズ君なの?上がって上がって!それと…ちゃんと買って来た?』『お、おう。言われた通り買ってきたけ…ど…』
靴を脱いで立ち上がり、緊張しながら振り向くと、そこには化粧をして大人びてはいるが昔の面影を残したあかりの姿が見えるが、何故か車椅子に乗っている。
ドラマの様な驚いて袋を落とすみたいな展開は無かったが、体が固まって動くことが出来なかった。
『ん?何?どうしたの?早く私の部屋に行こうよ』あかり本人は何も気にする様子もなく、元気に話しかけて来るが戸惑いが隠せない。
『ま、ま待って。あかり?その車椅子は?』『ん?これ?私の部屋まで押してくれたら教えてあげるよ!』
そう言って器用に旋回すると車椅子をポンポンと叩きゴーゴーと元気よく声を上げる。
あかりのテンションには付いて行けないが、言われた通り車椅子を押すが、昔のあかりの部屋は2階だったのに今は1階の部屋になっていて、車椅子でも動きやすいように広々とした部屋になっていた。
『早速だけど…買って来たブツを貰おうか…』部屋に着くと早々にそう言いながら、車椅子を自分で動かして慣れたようにベットに移る。
『あかり待ってくれ!先に車椅子の悦明をしてくれ!』感情がおかしくなりそうになりながらあかりのペースに吞まれないように無理やり話を変える。
『いいでしょ~?オーダーメイドで作ったの』そう話すあかりに俺が聞きたいのは何故、車椅子が必要な事だった。
『いや…そうか…オーダーメイドなのか…それは凄いけど……』『でしょ!ここが特注になってて………』
あかりは嬉しそうに車椅子の説明を始めたが、あかりがこうなったのも過去に起きた事故が原因ではないかと思ってしまう。
あれは、今から3年前の事で俺が17歳であかりが16歳の時だ。俺は学校帰りのジムでロードワークに出た時、帰宅途中のあかりの後ろ姿を見つけた。
あかりとは、中学までは一緒の学校だったが、思春期であかりと遊ぶことも少なくなっていった。
高校からお互い違う学校に通い、家は隣だがあかりと会う事も無く、気付いたら疎遠になっていたので、気まずさで道を変えようとした時にあり得ない事が起きた。
俺の後ろから車が歩道を走行するというあり得ない事が、それも俺とあかりが居る歩道に車が突っ込んで来たのだ。
あの時、一瞬で避けれると判断出来た自分に驚いたが、体は別で気付いたらあかりを助けようと走り出していて、咄嗟にあかりに抱き着いて、守る様に身を固めた。
あれが最善だったか分からないが、車に轢かれてからの記憶がないまま病院で目を覚ました。
車の速度がそんなに速く無かった事と受け身を取ったことが救いだったと医者は言ったが、腕や足はズタボロでボクシングは続けれないと言われた。
だが俺はそんな事よりあかりが無事かどうか尋ねると、医者は笑顔で無事だと言われたが、あかりと会う事も無く、退院した。
退院してからあかりの家にも行ったが、あかりとは会えず、あかりの母親からは無事だと言われ続けて、1年が経ちボクシングに復帰する事も無く高校の卒業と共にそのまま俺は働き出したのだ。
(まさか…事故の後遺症で車椅子生活になってしまったのか…)
満足そうに車椅子の話しが終わったあかりに話しかける。
『なぁあかり、その車椅子はやっぱり…あの事故のせいなのか?』『そうだよ…でもまぁ…一日中ゲーム出来るし、いいかなって!』
冗談めいて明るくそう話すあかりに、少し笑ってしまうとあかりも笑顔で話し出す。
『まぁ少し不便だけど、ゲームの世界だとちゃんと歩けるから、気にならないよ!ていうか!早くその袋を渡せって!』
元から明るい性格のあかりだからこうなのか、昔のままで変わらないあかりに少し肩の荷が下りる。
そんな、あかりにコンビニの袋を渡すと、袋を逆さまにして中身をベットに広げる。
『これこれこれ!あー久しぶり!てか、なんか少し袋が小さくなってない?』『そうか?こんなもんじゃ無かったか?あとそれを買った時に店員に凄い目で見られたぞ』
あかりが俺に買って来てと頼んだのは駄菓子で、昔はよく二人で食べた記憶があるが、その中であかりが一番好きだった駄菓子は女児向けのアニメがラッピングされたお菓子で、それを大量に買わされたのだ。
『ごめん…こんな足だから……外に…』『あかり…それは言っちゃ駄目だって…』『フフフッ確かにこれは駄目だね。フフッ』
あかりはニヤニヤ笑って話すが冗談のレベルがブラックなせいでいちいち疲れる。
ゲームを題材にしてるのに全然ゲームの話しに行かねーな…




