【最終回】小説家になろうを歩いてみよう
Illustrated by 糸さま
『――――というわけで、いよいよ、ねこが導く小説家になろうの歩き方~初心者編~最終回ですよ』
「……何がというわけなのかはわかりませんが、最終回なのですね。本当にいきなりですけど」
『いえいえ、最初から投稿する前までが私の役目。ここから先は、酢ライムさま自身の足で歩いてゆくのです。足、ないですけれど』
「ふふふ、足ありますよ?」
そう言ってびにょーんと細長い脚を伸ばす酢ライムさま。うん、アンバランスで可愛くない。
『実際に出店(新規投稿)するのは、ご自身で頑張ってもらうとして、一つだけ初心者がやりがちなミスを指摘しておきますね』
「は、はい!!」
『出店手続きの途中で、オーナー名(作者名)を入力する項目が出てくるんですが、そこには絶対に入力してはいけません。それは罠です』
「え? 何でですか、普通に酢ライムと入力するんじゃないんですか?」
『あの項目はですね~、ユーザー名以外をペンネームとして使いたいとき、例えば、店ごとに店長名を変えたい、カレーのお店を出すときは、激辛スライムに名前を変えたい場合に使うのです』
「……面白そうですけど、駄目なんですか?」
『別に駄目じゃないんですけど、ペンネームだとリンクが付かないので、作者のマイページへ飛べないんですよ』
「……???」
『実際に見てもらった方が早いですね。酢ライムさま、適当に私のお店の情報を見てください。店名(作品タイトル)とオーナー名(作者名)が出ていますよね?』
「は、はい」
『オーナー名(作者名)を押してみてください』
「はい、押しました――――って、うわっ!? こ、ここは?」
『ようこそ、私の家へ。つまりオーナー名(作者名)から、お客様はここへ来ることが出来るのです』
「そうか、お店美味しかったら、同じオーナーの他のお店もチェックしてくれるかもしれないんですね!」
『その通りです。お気に入り登録してくれるかもしれませんしね。ところが、先ほどの作者名にペンネームを入力すると、その作者名リンクが使えなくなるんですよ……』
「……かなり深刻な機会損失になりますね……」
『はい、わざと使っているベテランも多いですが、最初は必要ないと思いますので、ご注意ください。私からは……以上です…………』
「ね、ねこ先輩!? だ、大丈夫ですかっ!? なんだか顔色が悪いような……呼吸も荒くなって……」
『ふ、ふふふ、ごめんなさい……もう限界なのです(お腹が空いて)私のことはいいですから、早く出店準備を……』
「そんなっ!! 怒りますよ? こんな状態のねこ先輩を置いて行けるわけないじゃありませんか!!」
ほほう……怒りで全身がダークブラウンに……。
『……わかりました。それなら一つお願いがあります。あの食器棚に大き目のカクテルグラスがありますから、ここへ持ってきてください。結構重いので、酢ライムさまには無理かもしれませんが……』
「馬鹿にしないでください!! これでも男ですからね、余裕です!!」
にゃふふ……さらに色が濃くなりましたね。
Illustrated by 空野奏多さま
「くっ、いやコレマジで重過ぎ……」
酢ライムさまが自分より大きいカクテルグラスを運んできました。ご苦労様です。
『……乗って』
「……は?」
『……グラスに乗ってください……(食事前の)最後のお願いです』
「わ、わかりましたよ、乗ればいいんでしょ? 乗れば!!」
――――ちゅるん――――
くふふ……酢ライムさまオンザグラス。まあ……なんて美味しそう……じゅるり。
私は酢ライムさまが乗ったグラスにブランデーを注ぎます。
「あ、あの……ねこ先輩っ!? 何をしているんですか?」
『……癒しのポーション「ブランデー)を注いでいるのです。私からの出店前祝ですよ』
「……そう……なんですね。てっきり食べられてしまうのかと……」
にゃふふ、アルコールを全身から吸収して寝てしまいましたね。
では、いただきま~す。
うんうん、苦みがほどよくて、口の中に入れた瞬間にとろける新食感……チョコとブランデーのマリアージュ♡ たまらないのですにゃあ……。
Illustrated by 秋の桜子さま
******
「あれっ!? 俺は……一体……?」
目を覚ますと、そこは俺のマイページのベッドの上だった。
たしか、ねこ先輩の部屋で……うっ!? そこから先の記憶は無い。まるで二日酔いにでもなったかのような酷い頭痛だな……。
でも……なんだかとても良い夢をみていたような気がする。
猫耳の美少女に食べられている夢だ。あれってもしかして……いや、そんなわけないか。
Illustrated by みこと。さま
「さてと、いっちょやってやろうじゃないの」
俺の夢はまだ始まってもいないけれど、でも、この世界は確実にそこへ繋がっている。
今日から俺も、小説家になろうを歩き始めよう。この素晴らしき世界を己の意志で、自分の足で、まずは一歩踏み出すんだ。夢と希望と信念を、想像力というかばんにパンパンに詰め込んで。
Illustrated by みこと。さま
◇◇◇◇◇◇
これで、ねこが導く小説家になろうの歩き方~初心者編~完結となります。
拙い文章で、足りない部分や蛇足もたくさんあったかと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。皆さまの応援があったからこそ、最後まで書き終えることが出来ました。
私がこのエッセイを通してお伝えしたかったのは、この小説家になろうという場所は、無限の楽しみ方があるということです。
ポイントを稼いで書籍化へのチャンスを掴む。それもこのサイトの魅力の一つではありますけれど、文字を愛し、本が大好きな人々が集まっている、それこそが、このサイトの最大の魅力なのです。
ゆっくりとこの世界を眺めてみてください。いつも全力で走っていては疲れてしまいますよ。
各地を巡り、貴方の足跡をこの世界に刻み込んでください。待っているだけでは何も得られませんよ。読者と書き手、そんな二元論に思考が凝り固まってはいませんか? 書き手は読者であり、読者もまた書き手でもあるのです。
読まれないなら読みましょう。評価されないなら、積極的に評価してみましょう。
貴方が行動すれば景色は変わる。
落ち込んでいる暇なんてありませんよ? こうしている間にも、第二第三の酢ライムさまが、やってくるのです。
最初は初心者だった私も、そして今はまだ初心者な貴方も、すぐに先輩になるのです。さあ、見かけたらそっと手を差し出して、導いてあげてください。そうすることで、貴方もまた導かれると思うから。
無数の小説家のたまごたちが、いつかヒナとなり、そして羽ばたけるように、誰もが気軽に読めて、創作に参加できる場所を用意してくださったヒナプロジェクトさまに敬意と感謝を込めて。
そして、最後になってしまいましたが、このエッセイに色を添え、命を吹き込んでくれた素晴らしいイラストたちに抱きしめたいほどの愛情を。そしてそのイラストを生み出した四人の女神たちに祝福を。
空野奏多さま、みこと。さま、糸さま、秋の桜子さま、おかげさまでとっても楽しかったです。本当にありがとうございました~!!
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「ねこ先輩! わからないことがあるんですけど……って大丈夫ですか?」
『うっ……気持ち悪い、頭痛い(私アルコール駄目だったのにゃあ……)』
「続編のお願いに来たんですけど……今は無理そうですね……?」
『……気が向いたら。ねこは気まぐれだから……おぇっ……』
「……水、持ってきますね」
『うむ、持つべきものは可愛い後輩か。水よりもポ〇リスエットが良い』
「え……でも、ポ〇リスエットなんてどこにあるんです?」
『にゃふふふふ、あるじゃない……そこに』
「へっ!? い、いやあああああ!?」