16話「妹だって大変なんです!②」
安全地帯で、魔法の特訓をしていたヒノリは地に膝を着き、頬に伝う汗を手の甲で拭った。けれど、その矢先に額からポタポタと汗の粒が落ちていく。
『あるじ、まだ完成してないゾ。もう一回だ』
「ヒノリ、まだあたしの魔法も控えているんだ。頑張ってくれ」
「っ……はぁ……はぁ……う、うん!! がんばる……」
頭がクラクラしてきた、吐き気も増してきている。
魔力が欠乏しかけている。
(これで成功させないと。リアさんの魔法も覚えなくちゃいけないのに……。ルーくんを召喚し続けるための魔力もなくなっちゃう……)
これで最後だというつもりで、残り少ない魔力回復薬が入った小瓶を煽った。
【星々の加護】は、召喚獣を通じてヒノリ自身が発動させる魔法だった。
いつもはルーくんがヒノリの魔力を基に魔法を展開させているところを、自分で発動させなくてはいけない。魔力の循環操作と慣れない魔法展開動作に、ヒノリは苦戦していた。
「ルーくん、もう一回お願い」
『よしきタ!!』
すぅ……っと息を吸って、ルーくんへと魔力を送る。
そこで神獣との繋がりを強く意識して。
———どちらが自分なのか分からなくくらいに、混濁させて、一心同体だと認識していく。
「【月の光よ、星の輝きよ、どうか私の呼びかけに応えて欲しい。我は神獣と絆を結びし者。月の奏者を担う者】……」
月が歌ってきた詩よ、星が紡いできた物語よ、絆の詩を、光の唄を奏でましょう、紡ぎましょう。過去と今、今と未来を結びましょう。
お願い、私に力を貸して。
「【祈り、願え】」
ヒノリとルーくんの足元に出現した金色の魔法陣が、重なり、元より一回り大きな魔法陣を生み出す。
「——— 【星々の加護】」
金色の魔法陣が青白く輝き、立ち昇った青白い炎がヒノリとルーくんを包み込んだ。炎はやがて雄々しい獅子の形になっていく。
「成功した……!!」
青白い炎の獅子は喋ることなく再び炎の形に戻ると、ヒノリの右手首に巻きついた。
「…… 赤黒い炎と、対抗しているように見えるけど……ルーくんこの魔法って一体……」
『【星々の加護】の獅子星——レグルスを一回で当てられたみたいダナ。さすがあるじ!! 』
「えっと……?」
戸惑いを隠せないヒノリに、ルーくんは胸を張って答える。
『【星々の加護】は、いろんな星から加護を貰う魔法なんダ。レグルスは、あるじに恩恵のあるオレのスキル強化と、浄化魔法を発動してくれるんダゾ』
「じゃあなんだか体が少し楽になったのは……浄化魔法と、ルーくんのスキルが強化されたおかげって……ことなのね……」
『おうとモ!』
なるほど……と、ヒノリは納得する。
ルーくんにはヒノリとは異なるスキルが二つ存在している—— その二つのスキル名は、《魔力回復》と、《神獣の恩恵》。《魔力回復》は、ルーくん自身のためのもので、《神獣の恩恵》は魔力回復のスキル効果を、召喚者にも一定割合お裾分けするもの。
魔力消耗が激しいせいで直ぐに体調を崩してしまうヒノリの体が楽になったのは、赤黒い炎の呪いの効果が浄化魔法で薄くなっただけではなく、ルーくんのスキルが強化されたことで受けられる恩恵が増加し、ヒノリ自身の魔力回復が早まったおかげでもあった。
(……当たった……ってことは、星ごとにそれぞれの効果があるってことよね。……まぁ、今はそれぞれの加護の内容は置いておいて……)
手をグーパーさせて新たな魔法について考えながら、体調を確認する。よし、これならいけそうだ。
「ちょっと、元気になったし……次はリアさんの魔法ですね!! 頑張れそうですっ」
「あたしの魔法は、直ぐに使いこなせるようになるよ。じゃあ、あたしもビシバシいかせてもらうな」
「お願いします……!!」
魔法を発動する感覚を理解したヒノリは、この調子ならばと再度意気込みを見せる。
果敢に取り込もうとするヒノリのその姿勢に、リアもどこか嬉しそうに微笑み、魔法を教授するべく口を開いた。
「じゃあ、まずは————……」




