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3.ツーカー錠

('A`)「森の木々の傷つき具合から見て、ミノタウロスの行動範囲はおそらくこれくらいだ」


ドクオが壁にかけられた東の山周辺地図に、大きくいびつな丸を描く。


( ゜∋゜)「意外と広いな」


('A`)「ああ、だから特に傷や破壊のひどかった地域…南側に罠を設置することにする」


('A`)「奴がよく通ってると思わしき獣道…ここと、ここと、ここ。この3箇所には、一番有効であろう落とし穴式の罠を作ろう」


(・∀ ・)「落とし穴なんて掘ってられるのか?その間にやつが来たらどうすんだ」


自警団の一人、またんきが当然のことを訊く。


('A`)「そこで魔術師さんの出番よ。

   落とし穴の魔法は簡単だろ?俺も昔見たことがある」


ドクオは詰所の隅に座る女性を見やった。


ミセ*゜-゜)リ「…うん、まあそれくらいなら出来るけどさ」


村唯一の魔術師、ミセリの顔は非常に不満げだ。


ミセ*゜~゜)リ「でも、ミノタウロスってかなりデカいんでしょ?そんなサイズの落とし穴トラップとなると、私ができるとは思えないなあ…」


('A`)「やらずに出来ないじゃなくて、やってみて出来ないにしてくれ。とりあえず知ってるんだな?ならよし」


ミセ*゜-゜)リ「そんな適当で大丈夫なの?」


('A`)「知ってるだけでいい、俺みたいなのでも魔法学をかじった事くらいはある。それなら、この村の住人に何人かくらいわかる奴がいるだろ

   そうすりゃあれだ…なんだっけ?並列なんとか」


その言葉に、ミセリが唐突にぎょっとした顔をする。


ミセ;゜Д゜)リ「並列詠唱!?あれ息ピッタリ合わせないと出来ないよ!赤の他人となんて無理無理!」


並列詠唱。簡単に言えば、同じ詠唱を同時に行って、魔術の性能を単純計算で倍にする事が出来る詠唱の方法だ。

だが、彼女の言うように息をぴったり合わせて詠唱しなければ成功しない。少々難しいやり方ではあるが、単純で使いやすいので昔から扱われてきた魔術の技法の一つだ。


(;'A`)「む、そうなのか…でも落とし穴トラップくらいの詠唱なら出来るんじゃないか?たしか短いだろ?」


ミセ;゜~゜)リ「そうだけど……うーん…どうかなあ」


ミセ*゜ー゜)リ「……あ、そうだ」


――――――……


( ^ω^)「で、僕のとこに来たと」


溜まっていた蒸留水を仕舞いつつ、ブーンは彼の店を訪れた二人を振り返る。


('A`)「並列詠唱を補助してくれる魔道具があるらしいんだが」


ミセ*゜ー゜)リ「もしかしたらあるかなーって」


ブーンは少し考え、ふむ、と呟いた。


( ^ω^)「ミセリさんが言ってるのは…もしかして"ツーカー錠"、の事かお?」


ミセ*゜ー゜)リ「そうそうそれそれ!」


('A`)「ツーカー…?なんじゃその妙ちきりんな名前は」


( ^ω^)「全く関係ない二人をまるで双子のごとく息を合わせる魔法薬だお。本来は仕事を効率よく進めるために開発されたものだけど」


ミセ*゜ー゜)リ「最近は応用の幅を効かせて出会い薬みたいな使われ方もするよね」


('A`)「よくわからんがそれがあれば並列詠唱も出来るってことだな?」


( ^ω^)「まあ可能だお」


('A`)「で」


( ^ω^)「無いお」


ミセ;゜ー゜)リ「即答かい」


( ^ω^)「ミセリさんなら知ってると思うけど…ツーカー錠は結構高いんだお?僕みたいなしがない錬金屋が持ってていいもんじゃねえお」


ミセ*゜ー゜)リ「王都にいたときは結構裏ルートで流通してたんだけどなあ…」


(;^ω^)「裏ルートて…まあたしかに出会い薬として裏の需要はあるけど…」


('A`)「つうかお前王都にいたのかよ、初耳だぞ」


ミセ*゜ー゜)リ「都会の空気が嫌になって出てきたの、言うほどの事じゃないから言わなかったけど」


('A`)「じゃあその頃のツテとかで手に入れられねえのか?」


ミセ*゜ー゜)リ「…その手があったか」


(;'A`)「おい」


( ^ω^)「僕の出番は一体なんだったんだお」


―――――……


ミセ*゜ー゜)リ「もしもしー、ひさしぶりー、うん、うん、何年ぶり?そうだねえ…5年以上は経ってるよねー」


ミセリが村役場の脇にかけられた魔導電話で、王都に住むというかつての友人に連絡を取っている。

魔導電話は専用の魔導線(つまるところ電話線)を使用するため、こんな山の中の田舎では村役場にしか置いてない。その脇ではまたんきが護衛として彼女を待っている。


(;・∀ ・)「まったく、なんで俺がこんな奴のお守りなんか…」


一方、詰所ではさらなる作戦会議が続行されていた。今度はブーンもいる。


( ゜∋゜)「とりあえず落とし穴は一旦保留として、他の案を聞こうか」


('A`)「思ったより落とし穴が手こずってるからな…他の案はこうだ」


ドクオはさらなる紙を広げる。結構な情報量の、大掛かりな作戦だ。


( ^ω^)「追い込み猟…かお?」


ブーンはそれを見てこう言った。


('A`)「仕組みとしては似たようなもんだな…だが『追い込み』じゃなく『引き寄せ』と言うべきだな」


ドクオの示した作戦はこうだ。

まず、先日狩ったグレイグリズリー、その皮で剥製を作り、それを馬車の荷台に載せる。

グリズリーの姿に反応し向かってくるミノタウロスを引き寄せ、自警団が張る場所へと引っ張っていく。

そこで麻酔矢をありったけ打ち込んで眠らせて捕獲完了。


( ゜∋゜)「ずいぶん荒っぽいな」


(;'A`)「仕方ねえよ、ミノタウロスが食うものはここには無えし、どんだけの麻酔を打ち込めば効くのかもわからんしな」


( ^ω^)「ん…?ミノタウロスの食べるものがないのにコイツはどうやって今まで生き延びてきたんだお?」


('A`)「分からん…食性が変わったって可能性もある。だから餌で釣るのはちょっとやめた。間違えばこっちが大損だ」


( ゜∋゜)「……そもそも、本当にミノタウロスだって確信もないな」


唐突にクックルが言った。


(;'A`)「う゛」


確かにそうだ、いくつかのそれらしい痕跡は見かけたものの、ミノタウロスを見たというわけではない


(,,゜Д゜)「おいおい、今更すぎんぞ。また振り出しか?」


テーブルの奥で煙草をふかしながら耳を立てていたギコがそれをもみ消しながら立ち上がる。


( ^ω^)(あ、ギコさん元気そうじゃないかお。七草クワィンは効いてるみたいだおね)


ブーンはそんなことを考えながら、腕組みをする。


(;'A`)「一応、足跡の確認はある…ミノタウロスのものがな。こんな山の中に不釣合いだからコイツだと思ったが」


(;゜∋゜)「いや、すまんな、忘れてくれ。今更作戦を変えるわけにも、最初からにするわけにも行かん。これ以上被害は増やしたくない。早めに手を打たないと…」


(,,゜Д゜)「じゃあ、ミノタウロスって事で話を進めりゃいいのか。けどよ、この作戦じゃあ、もし万が一ミノタウロスじゃなかった場合、効かなくねえか?」


ギコが机に寄りかかり、最初の部分、グリズリーの剥製に関する所を指さしながら言った。


( ^ω^)「…そうか、喧嘩っ早いミノタウロスじゃなかったら、グリズリーの剥製じゃ釣れないお」


(;'A`)「ぐぬぬ…」


(,,゜Д゜)「もしもの事を考えて、もっと汎用性のある罠にすべきじゃねえかな」


(;'A`)「つってもなあ…」


ミセ*゜ー゜)リ「連絡取れたよー、3日後に知り合いの行商一家が来て持ってきてくれるってさ」


(・∀ ・)「長電話にならんで良かった…」


その時、良い一報を持ってミセリが詰所へと戻ってきた。またんきも安堵した顔で呟きながら入ってくる


( ゜∋゜)「3日後?王都からにしては随分早いな」


王都からは馬車を使っても5日は掛かる。自動車でもなければ、3日で着くなど不可能だ。自動車は未だ高級品で、そこらの行商人が持てるような代物ではないはずだが


ミセ*゜ー゜)リ「家族で代々やってる行商一家なんだってさ、結構儲けてるのかもよ?」


('A`)「そんな奴に裏ルートのツーカー錠なんて持ってこさせてもいいのかよ…」


ミセ*゜ー゜)リ「いいんじゃない?そのへん詳しく聞かなかったけど」


( ゜∋゜)「…?何を話してるのかイマイチわからんが、とりあえずそれで落とし穴トラップは作れるんだな?」


ミセ*゜ー゜)リ「多分ね」


(,,゜Д゜)「多分じゃ困るだろ、オイオイ、もっと確実なやり方ねえのかよ」


('A`)「せめて確実にミノタウロスだってわかりゃあなあ」


(・∀ ・)「ん?俺姿見たぞ、牛頭に人間の体の獣人だよな?筋骨隆々で黒い体毛の」


またんきの言葉に、その場の空気が固まった。


('A`)「は?」


( ゜∋゜)「は?」


(,,゜Д゜)「ハァ?」


(・∀ ・)「え?あ、言ってなかった?」


( ^ω^)「大丈夫なのかおこの自警団…」


何はともあれ、ミノタウロスである確認も取れ、落とし穴トラップの目処も付いたところで、本日は解散となった。

ドクオはよりいっそうの罠の改良。クックルたち自警団は村周囲の警戒の強化を行い、作戦決行は3日後、王都からツーカー錠が届くのを待ってからとなった。

山にぬかるみを作り探索を阻んでいた雨も、翌日には綺麗に止み、その日の午後から再度搜索が再開された。

まだ、車を捨てた人たちが見つからないのだ。死んでいたとしても、せめて亡骸くらいは見つけ、しっかりと供養してやりたい。

探索は二日間に渡り行われたが、しかし、懸命の探索も虚しくそれらしいものは全く見つからなかった。

唯一、破壊された自動車の残骸の中から、彼らのものと思しきバッグが見つかったのみであった。


( ゜∋゜)「もしかしたら、生き延びて山向こうに行ったのかもな」


クックルは額の汗をぬぐってそう言った。


(,,゜Д゜)「……山の向こうの集落なんて、歩いていったら十数時間はかかるぞ」


( ゜∋゜)「希望的観測って奴だ、気にするな。明日は作戦決行だし、捜索はここまでにしてゆっくり休むぞ」


( ゜∋゜)「これ以上森の中でうろつけば、さすがにミノタウロスの気も引きかねん。自警団の安全のためにも、捜索はここまでだ」


(,,-Д-)「オーケー、確かにその通りだな…何度かやつを見かけたって報告もあったし」


作戦は明日。村を脅かすミノタウロスとの戦いが始まる。

Tips:「魔動テレビ」

この世界のテレビは電話(通信機)よりも発明がはるかに早かった。それは魔導石「テレビ石」によるためである。

この一風変わった魔導石は、同じ周波数の魔力を与える事で映像を共有することが出来る。古来、スパイたちの必需品であったという俗説が有名だ。

しかし同じ周波数に合わせさえすれば盗視も容易のため、実際にスパイ用品としての実用性はそれほどでは無かったらしい。

現在はテレビ石用魔力周波数は国によって厳しく管理されており、特に国家間機密通信用の周波数は最高機密として扱われるほどだ。

ちなみに伝えるのは映像のみであり、音は伝えられない。よって情報を交換するためには筆談を行う必要がある。



Tips:「魔導電話」

音が伝えられるようになったのは、魔動機械の発達によって細く強い魔導線が大量生産可能になってからだった。

40年前の戦勝によって国庫の潤っていたヴィップ王国は、すぐさま国家全域に音声通信用の魔導線を張った。他国に先駆けて全国に通信網を張った事で、ヴィップ王国はこの産業革命時代にて盤石なる体勢を築いたとされる。

ブーン宅のテレビも、この通信用魔導線のおかげでフルボイスで楽しむことが出来るのだ。

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