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愛しい貴方に捧ぐ歌  作者: 中野理奈
聖女、とは
19/20

希望、光

大変遅くなりました、、すみません……


『愛梨ちゃん、愛梨ちゃん』


どこからか懐かしい名前で私を呼ぶ声が聞こえた。


『アーリー、早く目を開けて!』


私はやけに鮮明に聞こえる声に従い、目を開けた。


(……なに…?)


あたりを見渡すと真っ白な世界に女の人だった。黒の髪に純白のドレスを着ていた、美人な女性だ。


『時間がない、だから手短に説明するわ』


女の人は私を立たせて何も無い正面を指でさす。


『正確に言うと貴女は聖女の生まれ変わりでもない、ただの身代わりなの。時代は違えど、私達はギアーノによってここに連れてこられ大魔法の原動力として使われるわ。私達の故郷、地球は元々魔法が有り得ない国。それによって知られていない魔力を有効活用しよう、というのがギアーノの考えなのよ』


(…いや、まってよ。そんなにいきなりの言われてもすぐには理解できないって)


私は、いきなりの真実に戸惑いながらも必死に頭を動かす。


(つまり、私は何らかの身代わりであって、本当はある魔力をギアーノに利用されようとしているってことね??)


『そう、その何らかのというものは紛れもなく私。あなたは私のせいでここに呼ばれたの』


(………え?)


『こんな話は知らない?』


女の人はアージュに伝わる話を簡単に略して話す。それはこの世界にきて少したってからダーリュ、陛下に聞かされた話だった。


『そのトゥシェ・アウラーテは私の事、折原あかり。トゥシェ・アウラーテは私の夫がつけてくれたのよ。………ごめんなさい、私があの人と夫婦になったせいでギアーノは何百年かかりながらも世界征服を企んでいたのね。あなたを巻き込ませてごめんなさい。』


私は頭を下げ謝る彼女、あかりさんに怒りを覚えた。けど、それもすぐに止み、複雑な感情が私の中に渦巻く。

これはあかりさんのせいでもない。私たち二人はむしろ被害者の立場である。あかりさんも私のように連れてこられ、なにもわからないまま魔力だの何だの言われると怖かったに違いない。


そんな時に初代国王が現れたら。

恐怖から救われたら。


私はたまたまダーリュとであって、異世界に来た始めはとても良い暮らしをしていた。家に恵まれ、人に恵まれ。もし、それが私になかったら。あかりさんと同じ状況なら、私は耐えきれなかっただろう。


(頭、上げてください。)


私は泣き崩れそうな彼女にそっと手を添え、頭を上げさせた。


(あかりさんも被害者ですよね。あなたのせいではありません。)


『……アーリー…。ありがとう』


(いえ。でもそれよりもどうやってあいつを倒すか、ですよ。何か弱点とか、知ってますか?)


『そうね、私もそれを言いに来たのよ。ギアーノは太陽、光に弱いの。私を助けてくれた初代国王も天井からやってきて光がギアーノに当たると苦しそうにもがいていたのよ』


(…光…)


そういえば、城の中は暗かった。微かな火が城を照らしているだけで、注意していないと辺りが見えなかった。


『あと、他に……』


すると、目の前にものすごい、目も開けていられない程の光が私を襲う。


(え!?あと他に、なんて!?)


あかりさんの声がどんどん遠ざかり聞こえない。仕方なく、一生懸命口元で解読しようとみる。


………う……た……?


光は一気に強くなり、私を包み込んだ。




気がつくと元に戻ったみたいで耳に奇妙な笑い声が聞こえてくる。あれから、時間はたっていないみたいだ。

すると、笑い声は突然止まり王は顔つきを変えた。まるで、なんの感情がないかのように冷たい目で私を見る。


「そろそろ始めないとな。邪魔物が来る。」


邪魔物、というものはダーリュのことだろうか?しかし、今彼がどこにいるのかさっぱり検討がつかない。

王は手を私の額にかざし、呪文を唱え始めた。


やだ、やだやだ


私を中心に黒の光がまるで魔方陣のように浮かびでる。


「…いや……やめて…死にたくない」


何かが迫る感覚が身体中にかけめぐり、ほほに一つ涙が落ちた。脳裏にいつもの家族の風景がながれた。母が妹に何か怒っていて、けど妹は慣れたように母の説教も聞き流す。父もその二人に苦笑いするのだ。

当たり前だったその生活は、もうない。その事を突きつけるようにか、脳裏に流れる家族には私はいなった。


「…助けて、助けてよダーリュ!」


やけくそに彼の名を呼ぶと天井から爆発音はが響いた。

ホコリが辺り一面に広がり視界か悪くなる。煙たさに思わず咳き込みながらも、目を開けた。

視界が悪いが、天井から光のレースみたいに光が差し込んでいた。空中に舞うホコリを光が照らし、まるで天使が舞い降りたかのように綺麗だった。


「ギアーノ、お前の好きなようにはさせぬ。今宵がお前の最後の日になるのだ」


天井の穴から、マントを揺らし見下ろす人の影が見える。逆光で誰かはわからない。しかし、きらきらと光る銀色の髪は陛下、ジェノア王そのものだった。


「……みたことのある顔と思えば、マンショーゼの子孫か。その銀髪、しかと覚えている。私を、闇の中へ突き落としたやつだとなぁ!!」


王から闇魔法の攻撃がジェノアに向けられた。ジェノアはそれを剣を振りおろしそれを防ぐ。すると、天井の人影から強い光が王の方に向かい攻撃を仕掛けた。しかし王は普通にかわした。


「私は初代陛下の時代などしらん。ただ、国のために悪を制するのみ。」


ジェノアの言葉で二人の魔法の戦いが始まった。

光がと闇がぶつかり、空間で爆発がおこる。




「アーリー」


横からダーリュの声が聞こえた。タイミング的に今だと思ったのだろう。ダーリュは私の鎖を外そうとしていた。


「今すぐこれを外そう。体調など、大丈夫か?何かされていないか?」


彼の問いにうなずく。声を出せば、涙が溢れそうでうなずくしかできなかった。

助かった、私はその感情しかなかったのだ。


だからこそ、回りの異変に気付くわけもなく、異変に気付いたときはすでに遅かった。




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