とある一日
「.........以上より、本日の講義を終了とする。」
大講堂に声が響き渡り男が退室する。
男の姿が見え無くなり次第、静かな部屋はざわつき始める。
「いや~、今日の講義内容は難しかったなぁ~!
ローゼもそう思わねぇか?」
目の前に座っていた男は振り向きこちらを見てくる。
「よく、俺の名前を知っているな。」
「ぉん?まぁたまぁにしか来ないけど、お前もクラスメイトだし、当然だろ!」
「俺はお前の名前を知らないんだがな...。」
「えぇっ!?何度でも自己紹介するぜ。
俺はウェル・オーヴィ!
隣で寝てるのは友達のミナ・トレア。」
「ぅ~~~っ!」
タイミングよく起き、大きな欠伸をした。
「明日は中間模擬試験だし、来週に至っては特別試験まであるんだぞ。
休みが無くて脳がパンクしちまうっての!」
「ハイハイ、あんたは容量が悪いから可哀想ね。」
「少なくともお前よりかは脳みそデカいわ!」
「あぁん?誰があんたより馬鹿ですって!?」
仲良く痴話喧嘩(?)をしているのをよそに、家に帰って何をしようか考えていた。
弟妹がご飯を準備してくれているらしいので、その間街で散歩するのも良いし、帰り道にある図書館にて読書をしたりしても良い。
いつまでたっても、目の前の仲良しは言い争いを止めていなかったので、これ以上ここに用が無いお俺は一足先に帰らせていただくことにした。
「じゃ、先帰るわ。
また講義で会えたら仲良くしようぜ。」
「うぉっと、おう!こちらこそな!」
「私ともね~!」
軽く手を振り大講堂を出る。
夕方の涼しい時間となり学園から出ようとした時だった。
『特務の用につき、ナンバーズが招集されました。』
校内に声が響き渡った。
下校しようとしていた者達は足を止め、ざわつき始める。
「今、特務・ナンバーズって言ったか!?」
「嘘!あのナンバーズに会えるの?」
「新星時代の英雄様だ!こっちにいるぞ!!」
大勢の生徒達が学校の出入り口に集まりはじめ、付近は人でごった返していた。
特務・ナンバーズとはアルガルマ王国最高戦力と謳われている十人の魔法使い達の事だ。
彼らを動かすことができるのは戦争時又は王国未曽有の有事の際のみ。
アルガルマ王国と敵対の聖ファネル国は戦争真っただ中であるため、そのような理由で動員されたのであろう。
それにしても、呼ばれた場所がここ、魔法学校だというのは妙だと感じた。
「全く、学校長も大袈裟だな。
これではお忍びで来た意味が無いじゃないか。」
「事前のアポ無しで来る方が悪いに決まってるわ。」
「それを言うなら君も同罪だと思うがね。」
背中に大きな二つの鎌を背負った男と何も持っていない女が生徒に取り囲まれていた。
二人は周囲に集まっている生徒の事には見向きもせず会話を続けていた。
やがて、後ろの方からせっせと小走りで学校長が現れた。
「これはこれは、特務8殿、本日はどのような件でいらしたのですかな?」
「おぉ、モデュアール卿お久しぶりでございますな。」
「そちらの方は?」
「特務、6よ。」
「おお、貴方が6でございましたか。
戦場での数々のご活躍、生徒が嬉しそうによく話していますぞ。」
「前置きはいいわ、簡潔に要件だけ伝えるわ。」
「急で悪いのだが此度の戦争が長引き、兵が足りなくなってきているのだ。
そこで魔法学校の生徒達を我々二人が責任持って指導せよ、と王は仰られておられる。
魔法学校の生徒は勉強の傍ら、冒険者業をこなし日々鍛錬を心掛けている者もいるそうではないか。」
「確かに我々はいざいという時のために対人戦闘講義も行っていますが、いくら何でも実践投入はあんまりでは無いですかな?」
「王の意志に背くのですか、モデュアール卿?」
「いえいえ、とんでもない。
ただ、数人程度お貸しした所で、日々戦われている騎士の方々の迷惑になってしまうのでは無いかと危惧していただけですわぃ。」
「我々がしっかりと指導する故ご安心をしてほしい。
そこで明日行われる、中間模擬試験の監督を我々に行わせてほしい。
有望な者を何人かほど専用の特訓をさせるのだ。」
「御多忙の中、貴方達に指導をしていただける生徒はこれ以上ない感激でしょう!
ぜひとも我が学校の貴方方に次ぐ希望の星を見つけていただきたい!」
この話は瞬く間に学校内に広がり、皆明日の中間模擬試験に向けて心を躍らせていた。
この王国にいる最高戦力、即ちナンバーズは一人一人が化け物と言われるほど戦闘能力が高い。
そのうえ、通常魔石を消費して魔法を扱うのに対し媒体無しで魔法を扱えるという特殊体質持ちだ。
さらにそれぞれ異なる【因子】を所持しており、この因子がそれぞれを別次元に強化させている素でもあった。
有名なので言えば特務1は【蠱毒の因子】を所持しており、とても広い範囲から針に糸を通す小さな穴にまで変化可能な霧状の毒を操れる。
特務4は【呼応の因子】を所持しており、任意の人間の感情を他の人間に伝播させることが出来たりする。
戦場では士気を高めたり、魔法効率を最大まで引き延ばしたりと”絶対共感”と言う異名がある。
複数人いれば戦況なんて圧倒いう間にひっくり返ってしまうが、今はそうはいかない。
各々持ち合わせの仕事が多く、自国の戦いに参戦できないのだ。
互いに摩耗し、策を練り上げているであろうこの合間に戦力を増やそうとここに二人が来たのであろう。
とは言っても俺は明日は別の用事がありこの街を出ないといけないので、関係の無い話だと思いそそくさと帰路についた。
「お兄ちゃん!おかえりなさい!!」
「温かいご飯ができたのよ!」
「う~、アル、メル、ただいま~。」
玄関を開けるなり、勢いよく飛び出してきた二人を抱きかかえ、学校のローブを脱ぐ。
しっかりと手洗いをしてから席に着き事情を話す。
「お兄ちゃんは明日、郊外にある街へ行かないといけないからまた数日は帰れないんだ。」
「えぇ~、また仕事~?」
「お兄、私達も連れてってよ~。」
「ごめんな、危ない仕事だから連れていけないんだ。
あっそうだ、今日は俺のために美味しいご飯を作ってくれたんだよな?」
「露骨に話逸らされた~。」
「早く食べたいな!」
キッチンへ行き大きな鍋をよいしょ、よいしょと運んできてくれた。
蓋を開けると、熱々の湯気が溢れかえり中から巨大なローストチキンが出てきた。
「調理大変だったんだからね!」
「メルが味付けにこだわったから時間かかっちゃったけど、しっかい火は通ったよ!」
取り皿に各々取り分け二人が席に着くのを待つ。
「「「いただきます。」」」
熱々のチキンにかぶり付き香ばしい香りを堪能しながらジューシーな肉を頬張る。
2か月ぶりに会う弟妹にすっかり話に花が咲き、気が付くと深夜手前になっていた。
二人に感謝を述べ、ベッドで寝かしつける。
二人が仲良く寝たのを確認し、俺も寝ることにした。




