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奴隷宰相 リュカと南国探訪  作者: 近衛翡翠


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望海 ⑥別離

最後に到着したのは、アマンド島。ここでは、夕焼けの絶景スポットがあるらしく、クシイナダと二人で堪能した。

「あなたは、なかなか帝都から来れない。でも南国は刻々と変化している。」

「そうだね。これからも、南国のことを支えられるよう努力するよ。」

「その言葉嬉しい。私のことも時折思い出してくれると嬉しいな。」


水平線の向こうでは異国船の帆が夕陽にきらめき、万国津梁の港に鐘が響く。


***************************


ランドゴンの巡察から帰還したリュカは次のような報告書を起草した。


今回の南巡は非常に意義深いものがあった。


南方諸島の現況を実地に検分し、将来的施策の基礎となる所見を得たことは、帝国の海洋政策において看過し得ぬ成果である。観光や儀礼にとどまらず、資源・軍備・民心の三点において重要な示唆を含む巡視であった。


第一に、南国の皇女クシイナダとの親睦を深めることに成功したことだ。


儀礼および晩餐を通じ、相互理解は一段と進展した。南国王家は帝国との協調路線を維持する意思を明確にしており、今後の婚姻政策も含め、両国関係は安定的に推移する見込みである。ただし、国内における若年層の独立志向との均衡を誤らぬよう、慎重な言動が求められる。


第二に、クレーター島には硫黄や硝石の大量埋蔵が見込まれ、帝国の年間火薬消費量を優に賄えそうだ。


試掘および現地報告に基づけば、採掘体制を整備した場合、五年以内に帝国本土への安定供給が可能である。輸送路の確保と採掘権の管理については、南国側との協議を早急に進める必要がある。資源の確保は抑止力の維持に直結する。


第三に、ネーバル島は天然の良港であり、海軍の錬磨も著しく精度が高い。これで、東国の陸軍との連携策も、うまくいくことだろう。


同島は外洋への展開拠点として理想的であり、補給・修繕能力も充実している。東国陸軍との合同演習を制度化すれば、帝国の南方防衛線は飛躍的に強化される見込みである。海陸協同の枠組みを文書化し、定例化を図るべきである。


第四に、旧来は無価値とされてきたアマンド島だが、五年以内に中継港としての利用が見えてきたことだ。


異国船の往来を確認し、地理的優位性は明白であった。簡易桟橋と倉庫群の設置により、交易拠点としての潜在力は大きい。帝国主導で整備を進めれば、南海交易の要衝となり得る。過度な軍事色を避けつつ、商業港としての性格を前面に出すことが肝要である。


最後に、リバティ島では若年層の帝国不信が大きいため独立運動勢力が台頭している。この地は要監視対象として、一層の注視が求められる。


現段階で急進的行動は確認されていないものの、思想的分断は看過できない。過度な弾圧は逆効果となる恐れがあるため、経済的利益の還元および文化的尊重を通じた懐柔策を検討すべきである。南国の安定は、武力のみならず信頼の醸成にかかっている。

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