第一段階終了
「どうだ!」
自分で魔法が使えるようになってから十日後、俺はクリムゾンを呼びつけてそれはもうどや顔でその成果を見せつけた。
プールには水が満たされている。だが、中央あたりに渦が巻いており明らかに勢いよく流れていくさまが見て取れた。だがそれでも水位は減っていない。
なんせ俺が出ていく以上に水を追加しておりますからな!どやぁ。
「……」
ーードォン!!
「うぉわっ!」
ジト目のクリムゾンが杖を振ったかと思うと、プールの真ん中で突如爆発が起こった。
飛沫はなぜか器用に俺の方だけに飛んできて、俺を水浸しにしてしまう。
俺の魔法は維持できず、ものの一分ほどでプールの水は空になった。
「ふむ、では次の段階に移るとするかの」
「いや、ちょっと待て!なんだよ今の!合ってたんだろ!?なんて事しやがる!!」
「妙に腹が立っての」
「理不尽っ!!」
「しかしアレだの。アネモネから聞いていたがの…」
「ぐ…そりゃまぁ随分と待たせましたがぁ…」
自分で魔法が使えるようになってから、プールを満たせるようになるまで、結局十日を要した。
なんせ魔法の形を正確に捉えなきゃいけない、それを呪文を唱えるより早くしなきゃならない、スピードと正確さを両立させなきゃいけない。
とりあえずこの水魔法を完成させるのに十日かかってしまった。いわゆるリキャストタイムが限りなくゼロってこと以外は、精霊魔法と何ら変わりない。
多分動きながらも使えないので戦闘で使うにはまだ訓練が必要だ。
でも!それでも!頑張って修行したもの!1人で!どやぁしてもいいだろう!?
キッとクリムゾンを睨みつけると、やれやれと言った感じでため息をついた。
多分、三歳児が睨んだところで子どものわがままくらいにしか届いていないのだろう。
「…まぁ良かろうの。ヌシが覚えた魔法は、一般的には無詠唱魔法と呼ばれておるの」
ほうほう、無詠唱魔法…
「その名の通り詠唱を必要としない、精霊を介さない魔法だの。詠唱が省略されるおかげで、ヌシがやったように連続して使用することもできるの」
どやぁ。
スッーー
「うわぁ!待った!待った!!」
師匠の杖先に魔力が篭るのを見て、俺は慌ててドヤ顔をやめた。三歳児相手に何と容赦のないババアだ。
「はぁ…まぁ、それはそうとしての。そんなずぶ濡れのヌシを前に講義ともいかんからの。さっさと着替えてくるんだの」
いや、誰のせいだよ!
と思わず突っ込みそうになるのをグッと堪えて、俺はため息をついた。
「はぁ…全く。わかったよ」
「それとしばらくは座学をするからの。着替えたら小屋の方に来るんだの」
「へーい」
座学かぁ。確かに魔法の事を知れるのは嬉しいけど、せっかく魔法覚えたんだし色々試したいんだけどなぁ。
「ヌシ…よもや座学面倒だの、とか思ってなかろうの?」
「い、いやぁ?そんなことないっスよ?ほ、ほら、風邪ひくから、さっさと着替えてくるから!」
なんなんだこの婆さん、読心術でも使えるんだろうか?




