希望の花
数日後、アルモニアは宿屋ニバンボシを引き払った。
部屋の鍵を返し、チェックアウトの手続きを終えたところで、アルモニア一行はニバンボシを後にする。
「どうか、お気をつけて」
ニバンボシの受付は深々と頭を下げて、彼らを見送った。
入るときには簡単な審査があったが、出るための手続きというものは何もない。
八人はシプレの門をくぐる。
門の向こうに出たところで……アルタリアは振り返る。
自分たちはこの街に、敵わなかった。戦いにすらならなかった。
けれど、得るものがなかったわけではない。
新しい仲間、教訓、そして託されたもの。
シプレの街は変わらない。
けれど、希望は確かにあった。
いずれその小さな花が実を結ぶ日は来るのだろうか。
「アルテ?」
リラがその背中に声をかける。
「ああ、何でもない」
アルタリアはシプレの街に背を向ける。
もう振り返ることはない。
託されたものを胸に、前へと進むだけだ。
シプレの街を出たその日の夜。
野営地にて、ディーンの表情はずいぶんと和らいで見えた。
視線の先には楽しげに会話をする仲間たち。
アルタリアとルシオンが軽口を叩き合い、リラが笑い、シグは干し肉をかじり、コミティスと月船は二人並んで穏やかに話している。
「…………」
ふと、ディーンは自分に向けられた視線に気がつく。イリオスだ。
彼はニコニコと笑って、こちらを見ていた。
「……なんだよ」
「なんでも」
そう言ってイリオスは視線をそらす。
変なやつだな。
そう思いつつも、ディーンは仲間たちに視線を戻す。




