繋がる世界
寝支度を整えたイリオスとディーンの部屋。
そこではイリオスが楽しそうに喋っている。
「それでさ、ツキフネの剣がこう来て、だからオレはこう返して……」
その会話をディーンもやはり楽しそうに聞いている。目をキラキラさせながら語るイリオスを優しい目で見ている。
ある程度イリオスの話が落ち着いてきたところで……ディーンはふと言葉を漏らす。
「……その『ツキフネ』っていう人、オレも会ってみたいな」
ディーンの言葉に、落ち着きかけていたイリオスは再びテンションを上げる。
「分かった! 今度の休息日に一緒に行こう!」
「ああ」
すかさず挙げられたイリオスの提案にディーンは淀みなく頷く。
そして約束の休息日。
ディーンが連れてこられたのはリムフォードの街の高級住宅街であった。
イリオスの足取りは迷いない。やがて一軒の邸宅の前で足を止める。
家政婦に案内されたのは、邸宅の裏庭。そこにはこの辺りでは珍しい「和装」に身を包んだ少女が一人素振りをしている。
「おーい、ツキフネ! 遊びに来たぞ!」
その声に少女はくるりと振り返る。茶色の髪がさらりと揺れる。
「ああ、イリオスさん。こんにちは」
「おう!」
少女は刀を下ろすと、ディーンの方に目を向ける。
「……その方は?」
少女の目は不意の侵入者に戸惑っているように見えた。
「ディーンだ。イリオスと一緒にチームを組んでいる、冒険者だよ」
ディーンが自己紹介をすると、少女もなるほどと頷く。
「失礼いたしました。私は、穂永月船と申します。この家に居候させてもらっている身です」
月船は愛想の良い笑みを浮かべる。
イリオスとディーン、そして月船はガゼボに移動する。
家政婦が持ってきた茶と菓子を口にしながら話を進めていく。
「へえ。この街に来たのは、最近のことなんだな」
「はい。縁あってこちらでお世話になっています」
イリオスは茶菓子を遠慮なく口にしながらそれを聞いている。
「こちらのお食事はおいしいですね。故郷ではあまり口にする機会のないものもあって……」
「へえ。逆に、ツキフネの故郷ではどんなものが食べられているんだ?」
「そうですね。大きく違うのは……」
淀みなく進んでいく雑談。その流れの中でアルモニアの活動についても触れられる。
「オレは魔法剣士をやってるんだ。で、イリオスが剣士。すぐに飛び出そうとするから大変だよ」
そう言ってディーンは肩をすくめる。
「ふふ。想像できます」
「えー? そう?」
イリオスの返しにディーンと月船はくすくすと笑った。
やがてイリオスが茶菓子を食べ尽くしたところで、お茶会はお開きとなった。
「今日は突然来たのに、出迎えてくれてありがとう」
「いえいえ。私もイリオスさんのお友達に会えて楽しかったです」
穏やかに語り合う二人に、イリオスはニコニコと笑っている。
「それじゃあ、また」
「はい。機会があれば」
月船はイリオスとディーンを邸宅の門まで見送る。
そしてその姿が見えなくなった頃……
「このバカ!」
ディーンはようやくイリオスに向かって怒鳴る。
「え?」
イリオスはきょとんと首をかしげる。その態度にディーンはため息をつき、そして呆れたように言う。
「おまえな……オレが来ること、彼女に伝えていなかっただろ。そういうのは事前に伝えるべきだ」
そこまで言われてようやく怒鳴られた理由が分かったらしく、イリオスは「ああ」と漏らす。
「そういえばそうだったかも」
「はあ……」
二人はアーインの宿屋に向かって並び歩く。




