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エルネの危機!?

次の日、コウスケ達は其々別行動を取っていた。


コウスケは街の観光に、エルネはお金を稼ぐためギルドに、ロイドは進化した馬車に早速籠っていた。


(考えてみれば、三人バラバラに動くのは初めてだな?一番心配なのはやっぱりエルネだな・・・まぁ念話の魔道具もあるし何かあっても大丈夫だろ)


コウスケがそう思いながら街を歩いていると、案の定と言うか予想通りと言うか


『コウスケっ!今大丈夫?』


エルネから念話が飛んできた。


『どうした?』


『今ギルドにいるんだけど、確認したい事があって』


『何だよ?』


『この街にはどれくらいいるの?』


見る所が無い、直ぐに出発だ。的な事を言っていたエルネがそんな事を聞いて来たので、少し戸惑うコウスケ。


『・・・今日一日自由行動で、明日出発。とかじゃねぇの?』


ハッキリとそう確認し合った訳では無いが、何となく三人の間でそんな空気が漂っていた。


コウスケもそれを感じていたので、言葉にはしていないが皆そのつもりだと思っていた。


『やっぱりそうよね?‘・・・’』


やはりエルネもそう認識していたのか、そう返した。


それと同時に少し残念そうな感じも伝わってくる。


(・・・何だよ最後のワザとらしい‘・・・’は?念話だから感情が強めに伝わって来るのか?それともこれはアレか?聞けよッ!ってサインなのか?)


少し考えたコウスケだったが答えは出ない。それにここで選択肢を間違えれば後が怖い。


仕方なく


『ドウシタノ?』


そう聞いた。


これには待ってました。と言わんばかりに説明を始めるエルネ。


『実はね、私ってEランクじゃない?だから受けられる依頼が少ないの。でね、その少ない中で一番報酬が良いのを受けようと思ったんだけど、それが2~3日掛かる依頼なのよっ!』


『・・・それで2~3日滞在を延ばせ。と?』


『イイのっ?』


『・・・一日で終わる依頼とかじゃ・・・』


『それじゃダメなのっ!』


コウスケが言い終わる前に被せてくるエルネ。


『・・・一度に沢山受ければ・・・』


『それもダメっ!』


理由についての説明が全く無いエルネ。


『まぁいいけど・・・その依頼大丈夫なのか?危ないじゃねぇの?何なら俺も付いてってやろうか?』


依頼を受ける事を認めたコウスケだったが、少し心配になりそう言った。


『ッ!それはダメっ!一番ダメよっ!そんな事したら報酬が半分になるじゃないっ!!』


冒険者としてとか、ひとりでやる事に意味がある。と言う事では無く、要は金が問題らしい。


『・・・さいですか。まぁ、話は分かった。行ってくるといいよ。でも、何かあったら連絡しろよ?』


『分かった!ありがとっ!』


そうして念話は切れた。


言い知れない不安に駈られるコウスケだったが、


(・・・まぁ所詮Eランクの依頼だしな)


大した事は無いだろう。そう高を括っていた。


しばらくして、今から出発すると再びエルネから念話があり、いってら~と軽く返したコウスケ。


見送りも無く、あのエルネは旅立った。


その後は、何事もなく観光を続け、暗くなった頃宿に帰ったコウスケ。


食堂で夕食を摂りながら、エルネがひとり依頼に出た事をロイドに報告していた。


「それは心配だな?まぁ、成長への一歩。と言ったところか?」


ロイドもやはり心配した。


「大丈夫だろ?確かに少し抜けてるけど、腕は確かだろ?それに念話の魔道具もあるし」


コウスケはそう言って笑った。


「それもそうか。・・・それで?どこで、どんな内容の依頼なんだ?」


「・・・ソレ、聞いてねぇな」


「それは・・・本当に大丈夫なのか?」


「・・・Eランクの依頼だぞ?」


「明日、ギルドに行って内容だけでも確認した方が良いだろう」


「そ、そうだな」


この夜、エルネからの念話は無かった。




~~



翌朝、エルネからの連絡が無かった事で少し焦り出すコウスケ。


念話で呼び掛けてみるも、返事は無い。


まだ眠そうなロイドを引きずる様にギルドへと向かった。


ギルドに着いたコウスケは、窓口のひとつに陣取った。


「お、おはようございます。今日はどうされました?」


コウスケの勢いに、やや押されながらも仕事モードを崩さないギルド職員の男。


「昨日、ここで依頼を受けた冒険者の依頼内容を知りたいんです」


コウスケは前のめりでそう話した。


「えぇ~と・・・その方とパーティーは組んでいらっしゃいますか?」


「パーティー?組んで無いと思いますけど」


パーティーとは、冒険者同士が6名を上限に作る事が出来る一団だ。


パーティーを組むとパーティー単位で依頼が受けられる様になるので、依頼の成功率や生還率が高くなる。


比較的ランクの低い冒険者が組む事が多いが、難易度の高い依頼の際には高ランクの冒険者も臨時で組むこともある。


低ランク冒険者が多いのは、単に集まればそれなりにやっていけると言う事もあるが、今の実力では到底敵わない相手でも役割分担と戦術を駆使してやり合える。


経験、自信、知識を身に付けるのに適しているからだろう。


ギルドもそれを推奨している。


高ランク冒険者も利用してはいるが、主に低ランク冒険者の為のシステムだ。


「パーティーメンバー以外の方には、そう言った事はお話出来ない規則がありまして・・・」


「そこを何とかっ!」


そう頼み込むコウスケ。


「そう申されましても・・・」


「じゃあ、今パーティーを組む事は出来ないんですか?」


そう言って自分のギルドカードを取り出すコウスケ。


「本人がいない事には・・・ギルドカードの裏にメンバーの名前を入れないといけないので、その方のカードが無いと無理です」


「そんな・・・」


肘を付き、カードを眺めながら落ち込むコウスケ。


そんなコウスケを見た職員は


「あの~、その方のお名前は?」


「え?あぁ、エルネです」


「その方とはパーティーを組まれている様ですが・・・」


そう言ってコウスケが眺めるギルドカードを指差し職員が言った。


肘を付き、顔の高さまで持ち上げていたコウスケのギルドカード。


職員からは、その裏面が見えていた。


職員は、そこにエルネの名前がある事に気が付いたのだ。


その言葉に、慌てて裏を確認するコウスケ。


「・・・何でだ?」


「登録した事をお忘れになったのでは?」


「いや、流石にそれは・・・」


「まぁいいじゃないか。コウスケ君。・・・これで教えてもらえるのだろう?」


ここまで黙って聞いていたロイドが割って入ってきた。


その言葉に、目的を思い出すコウスケ。


「そうだった!これで教えてもらえるんですよね?」


「分かりました。調べて参ります」


そう言って席を外す職員。


しばらくして、戻ってきた職員から聞いた依頼内容は「近くにある遺跡の調査と、内部に住み着いている魔物がいれば討伐する」と言う物だった。


その内容を聞いたコウスケは


「これがEランクの依頼なんですか?」


少し荷が重いのでは?と思いそう質問する。


「依頼事態はそう難しい物では無いんですよ。ただ、この遺跡には私共も困っていまして・・・」


その言葉に、面倒事の匂いを感じるコウスケだったが、既にエルネが関わっている。


ここは素直に話を聞こうと職員を促した。


それに対して職員の説明はこうだった。



職員が困っていると言った遺跡。


どうやらこの遺跡と言うのは100年程前にこの街の領主が作った物らしい。


目的は、街の目玉になる様な物が必要だと考えたからだそうだ。


お隣のダンジョン都市の様な人を呼べる施設を作ろうとしたらしい。


しかし、人工的に作った物など本物のダンジョンには程遠い。


出来上がったのは三階層から成る、ただの地下施設だ。


領主はそこに私財を投じて、宝を隠し、魔物を放ち、人を集めようとした。


結果は失敗だった。


宝は復活する訳でも無く、魔物も自然に湧く訳では無い。


誰も来なくなり、廃墟となるのにそう時間は掛からなかったと言う。


ならさっさと壊すなりすればいい、となりそうな物だが、そうは行かなかった。


現在の領主は、当時の領主の子孫に当たる人物なのだが、その領主も含め何故かこの一族は代々この廃墟を維持してきたらしい。


別の目的で使うならそれでも良かったのかも知れないが、廃墟のまま残しているのだ。


そうすると、当然そこには魔物が住み着く事もあるだろう。


魔物が住み着けば、そこは荒らされ朽ちていく。


領主はそれを良しとはしなかった。


どうするかと揉めに揉めた結果、貧乏くじを引いたのが冒険者ギルドだった。


仕方なくギルドは、この廃墟が崩れていないか、魔物が住み着いていないか、住み着いていたら討伐せよ。と言う依頼を常に張り出している訳だ。


職員が困っていると言うのはこういう訳だった。



ここまでの話を聞いたコウスケは


「・・・ご苦労様です」


職員の気苦労を労った。


「お気遣い痛み入ります」


職員もそう返す。


「フム。この街の領主はバカなのだろう」


ロイドはこの街の領主をそう評した。


「ちょ!相手は貴族ですよ?声が大きいです!」


ロイドの恐れを知らない言葉に職員は慌てる。


「まぁロイドじゃないけど、俺もそう思います。潰しちゃったらダメなんですか?」


「難しいですね。そうなったら我々が確りと管理していなかったと言って咎められるでしょう。一体何人の首が飛ぶか・・・」


コウスケは解雇と言う意味で取ったが、職員が言っているのは物理的に飛ぶと言う意味だったりする。


「そうですか・・・まぁ遺跡どうこうは俺には関係無いですからね。それより今はエルネです。本当に危険は無いんですね?」


「はい。過去100年、強力な魔物が住み着いたと言う記録はありませんし、人が利用する事を念頭に作られた施設です。そもそも大型の魔物は入れないんですよ。だからこそ我々もEランクに任せていたんです」


それを聞いたコウスケは少し安心する。


しかし、ならば何故、エルネから連絡が無いのか?と不安は拭えなかった。


ただ、この不安は直ぐ後に絶ち消える事になる。


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