新たなるコウスケの作品
「二人共~?起きてる~?もう朝だよぉ!」
翌朝、昨日の事など気にしてないのか、それとももう忘れたのかエルネはコウスケとロイドが泊まる部屋の扉を叩いていた。
しばらくすると、足音と共に扉が開く。
「エルネ君か。おはよう。わざわざ悪いね」
そう言ってロイドが顔を出す。
「おはよっ!コウスケは?まだ寝てるの?」
その問いに、コウスケのベッドへと目をやったロイドは
「昨夜は戻って無い様だ」
扉を大きく開き、空のベッドをエルネに見せながらそう言った。
「え?戻って無いって・・・どこに行ったの?」
「馬車で何やらしていた様だが、大方それが長引いてそのまま・・・なのだろう」
ロイドのその言葉に
「まったく何やってんのよ!先に食堂行ってて!私コウスケを連れて来るわっ!」
そう言って踵を返すエルネ。
「頼んだ」
エルネの背中に、そう短く声を掛けたロイドは欠伸を噛み殺した。
馬車置き場へと着いたエルネ。
馬車は数台停まっているが、ここへ停めたのはエルネ本人だ。
間違える筈もなく自分達の馬車へと近づく。
近づいて気付いた。いつもは遮る物が無く、中が丸見えの後部に今は布が垂れ下がっている。
中が見えない様になっているので、コウスケの姿は確認出来ないが、エルネにはコウスケがいる事が分かった。
垂れ下がっている見慣れない布の下から、見覚えのある足が生えていたからだ。
エルネはその足に近づくと布を捲り上げた。
「・・・何これ?・・・コウスケっ!起きてっ!ねぇ!」
布を捲り、見えた光景に一瞬唖然とするが、その中で気持ち良さそうに眠るコウスケを見つけ、目的を思い出す。
「ん?ん~・・・あぁエルネ。おはよう。もう朝か?・・・あちゃ~、ここで寝ちゃったか」
エルネの声に目覚めたコウスケだったが、今いる場所を確認してそう言った。
「こんなトコで寝てたら風邪引くよ?もうロイドは食堂で待ってるから行くよっ!コレの事は後で聞くからねっ!」
エルネはコレと表現した物が気になりつつも、今はロイドを待たせているのでコウスケを連れて行く事を優先させた。
「分かった。よっと、行こうか」
そう言って荷台から降りると、コウスケはエルネと共に食堂へと向かった。
昨日の事を気にした様子も無いエルネを不思議に思いつつも、コウスケは朝食を摂る。
いつも通りの雰囲気で食べ終えた三人は、馬車の元へと来ていた。
「さっ!コウスケ。説明して?」
エルネは馬車後部の布を捲り上げ言った。
その中は、狭苦しい荷台では無く、宿やで借りるひとり部屋程の広さになっていた。
「いや、説明も何も見た通りだろ?狭いと思ったから広くしたんだ」
との事だ。
これに、エルネは何か言いたそうな顔をしたが、その前にロイドが口を開いた。
「凄いな!確かに広くなっている・・・しかし、私とコウスケ君、二人で使うにはまだ狭い様にも思うが?」
十分に広くなった荷台だが、ロイドにとってはまだ狭いらしい。
二人で使うには。と言う前提でだが。
「そこは考えてある!まぁ二人共、入れよ」
そう言ってコウスケは二人を荷台へと招いた。
二人が入った事を確認したコウスケは、捲り上げてあった布を下ろし完全に閉め切る。
日中とは言え、閉め切った荷台は暗い。
コウスケは天井にあたる布を一撫ですると、そこに魔方陣があるらしく全体が明るくなった。
「フム、テントと同じだな?」
「あぁ、布でも広く出来るのはテントで実証済みだからな。囲ってあれば開け閉めする出入り口があっても問題無い事も、昨日確認した」
「成る程・・・んっ?しかし両側は木の板に見えるが?布では無かったのか?」
そう言いながら両サイドの木で出来た壁に触れるロイド。
「板を買ってきて張ったんだよ」
「布でも問題無いのだろう?」
「問題は無い。でもこうして板を張れば、向こう側に布と板の隙間が出来る。その隙間を更に広げてやれば・・・」
そう言って、先程からエルネとロイドも目に入り、気になっていた扉を開けたコウスケ。
その向こうには、今見た部屋と同じ広さの部屋が広がっていた。
「向こうの扉も同じ様に部屋になってる!ひとり一部屋づつだな!まぁ今はまだ、真ん中の部屋を通らないと外に出れないけどな。それは追々直すよ」
事も無げにそう言って説明を締め括るコウスケ。
「・・・ムチャするわね?これじゃ家に車輪付けて移動してるみたいなもんじゃないっ!」
エルネは呆れているが、コウスケとロイド、其々が同時に作業なり研究なりを行う為に必要だと感じたから作ったまでだ。
当然、ロイドは
「これはいいな。最近コウスケ君が荷台を使っていない事に気が引けていたのだ。これで心置きなく使う事が出来る!」
そう感動していた。
一応、気にはしていた様だ。
気が引けている者の使用率では無かった様に思うが・・・
何はともあれ説明が終わり、続いて誰がどの部屋を使うか?という事を決める事になった。
ロイドは早々に左の部屋を占領し、領地とした。
必然的に中央がコウスケかエルネと言う事になるが、流石に女性のエルネに三人が行き来する中央を使わせる訳には行かない。とエルネが右に。残った中央がコウスケに決まった。
こうしてコウスケの手によって、魔改造が施された馬車。
最早、キャンピングカーと言っていい代物になりつつあった。
「コウスケとロイドは使い道があるからいいわよねっ!私は別に・・・」
「普通に部屋として使えばいいんじゃね?」
「それは・・・良いわねっ!カワイイ家具とか揃えて・・・ねぇコウスケ?」
「何だ?冒険者ギルドなら、街の真ん中の方にあったぞ」
「・・・はい」
エルネの家具は当分揃う事は無いだろう。




