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危険物

ある晴れた日、コウスケは馬車をエルネに任せ、朝から荷台に籠っていた。


「たまには体も動かした方が良いよ?」


暇さえ有ればコウスケと訓練をしたがるエルネは、「自分と訓練もしないで、また録でも無い物を」と思い、そう声を掛けるが


「・・・」


返事が無い事をみると、相当作業に没頭しているのだろう。


いつもなら、手綱を握るエルネの隣で、タバコを咥えながらどうでもいい話に付き合ってくれるコウスケが居ない事に、若干の寂しさを覚えるエルネ。


昨晩、風呂から興奮した様子で飛び出して来たコウスケが、何やら魔方陣について難しい事を説明していたが、エルネには終ぞ理解出来なかった。


大方、風呂に浸かっている内に魔方陣が関係する何かを思い付いたのだろう。


それが今コウスケを籠らせている理由だ。とエルネは思っている。


因みに、興奮して飛び出して来たコウスケだが、下はしっかりと隠していた事を、コウスケの名誉の為に付け加えておく。


そんな前と後ろに別れての旅も終わりを迎える。


エルネが昼食の為に、馬車を停めるとコウスケも降りて来たのだ。


「半日も籠ってたけど、もう終わったの?」


「まだ実験が残ってるけど、まぁ大体はね」


「実験?いつもそんな事しないじゃない」


「今回はちょっと新しい事をしてみたから・・・どうなるか分からん!」


「分からんって・・・危なく無いんでしょうね?」


「いや・・・危ないと思う」


「ちょっとッ!!」


「大丈夫、昼飯食った後、ちゃんと人が居ないトコでやるから」


そう言って、昼食の準備を始めるコウスケ。


言い知れぬ不安を覚えるエルネ。


しばらくして、食べ終わったコウスケが、いよいよ立ち上がった。


「さてッ!やりますかぁ~。あっ、エルネも来る?」


「本当に大丈夫なのよね?」


「そんなに心配ならマント着て来れば?」


「そこまでなのッ?」


「分かんないけど、取り敢えずマント着とけば間違い無いって」


その発言が、更に不安を煽ると言う事に気付かないコウスケ。


何とも言えない顔をしてマントを纏い、コウスケに付いて行くエルネ。


「この辺りならいいな」


回りを見渡したコウスケが、そう言って立ち止まる。


そして、魔法鞄から円形の盾を取り出した。


「なによっ!盾じゃない。何処が危ないのよ?」


「いや、これは立派な攻撃用の魔道具だよ」


「攻撃用?それが?」


「まぁ見てろって・・・えぇっと、どうなるか分かんないし、まずは単発の方がいいな」


準備を進めるコウスケが言った「単発」と言う言葉に「じゃあ連発もあるの?」等と考えながら、コウスケの実験を待つエルネ。


「よしっ、じゃ行くぞッ」


そうエルネに声を掛け、魔力を流すコウスケ。


バシュッ、ドンッ、メキメキメキッ、ゴゴゴズゥ~ン


コウスケが魔力を流したすぐ後、何かが撃ち出された音がした。その後、その何かは前方にあった木の幹に命中。


木の幹の大半を抉り取った。支えを失った木は、重力に負け根本から倒れた。


「・・・」


「・・・」


目の前の光景に唖然とする二人。


「・・・どう言う事よッ?あんなのマント来ててもダメじゃないッ!」


「・・・俺もここまでとは思わなかったんだよ。まだ連発の実験もあるんだけど・・・どうしよ?」


「ダメに決まってるでしょッ!!地形が変わっちゃうじゃないッ!」


「じゃあ上に向かって撃つから」


「余計ダメよッ!降って来たら危ないじゃないッ」


この日は、エルネがとてもマトモだった。


結局、コウスケは数日後の夜中にこっそりと実験したりするのだが。


「わかったよ。・・・それにしても想像以上だったな。最早レールガン並だ」


今回コウスケが作り出したレールガンなる物は、魔方陣を発展させた物を二つ組み合わせた物だ。


ひとつは、多重魔方陣。


これは、その名の通り魔方陣を重ねた物だ。


同じ魔方陣を重ねれば爆発的に威力や効力が増し、違う魔方陣を重ねた場合はその魔法を合成魔法で合わせた時と同じ効果を発揮する。


もうひとつは、複合魔方陣。


これは、魔方陣を更に大きな魔方陣の中に組み込み、ひとつの魔方陣とする。


そうする事で、各魔方陣を連動、制御する事が出来る物だ。


コウスケが作った魔道具の馬も内側にこの複合魔方陣が使われている。


これによって、全ての足を同時に前に出す、と言った間抜けな事が起こらない様になっている。


そして、多重魔方陣に使った魔方陣は、土属性魔法[石礫]と無属性魔法[加速]である。


[石礫]は拳大の石をプロ野球ピッチャーの最高速度くらいで撃ち出す魔法だ。


[加速]は物の移動速度を上げると言う魔法だ。一昔前は身体強化魔法の代わりに使われていたらしい。


この二つを多重魔方陣で発動すると、先程の様なレールガン紛いの威力になる様だ。


コウスケは更に、このレールガンの多重魔方陣を9つ、盾に刻んだ。勿論、複合魔方陣でだ。


盾の外周に沿う様に8つの多重魔方陣が配置され、真ん中に単発用の多重魔方陣、と言う配置だ。


後日の実験で分かるのだが、この盾の複合魔方陣を発動させると、外周に配置されたレールガンが順番に発射される。


8つ目が撃ち終わる頃には1つ目のクールタイムが終わり、魔力が続く限り永遠に撃ち出され続けるのだ。


これを見た時点で、コウスケはレールガンと言う名称から、ガトリングレールガンと言う名称に変えたのだった。


その後、何度か改良、実験を密かに繰り返し、安全が確認出来た所でエルネにお披露目した。


「一体何と戦うつもりなの?何処かの街でも落とすつもり?」


お披露目した時のエルネの言葉だった。


そう言われたコウスケは黙ってガトリングレールガンをボックスの方に仕舞うのであった。


使う事が無い様、祈りたい。


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