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急報

二人の勝負が終わった事で、集まっていた観客は再び思い思いに楽しむ為に散っていった。


残ったのはコウスケ達五人だけだった。


「人気ねぇな~このプール」


誰一人残らず散っていった観客を見たコウスケが、そんな感想を漏らす。


「真剣に泳ごうって人は少ないのかもね?でも、今みたいに競争を見せ物にすれば人が集まる事は分かったからね。これも街に人を呼ぶのに使えそうかな」


コウスケの言葉にホクホク顔でそう答えたエドは、頭の中で何やら考えている様子だ。


「見せ物かぁ・・・あっ!じゃあ、定期的に大会でも開けばいいんじゃね?」


閃いたと言わんばかりのコウスケが声を上げる。


そんなコウスケの言葉に


「大会?」


と首を傾げるエド。


「さっきみたいに泳ぎの早さで競うんだよ。しかももっと大勢で。‘世界で一番泳ぎの早いヤツは誰だッ!’とか宣伝文句を添えて参加者を募集すれば、シャズみたいなのがわんさか集まって来んじゃね?」


首を傾げるエドに、そう説明するコウスケ。


それを聞いたエドは


「成る程!世界一の称号目当てに、力自慢や体力自慢、泳ぎに自信のある人が集まって来るんだね!」


そう目を輝かせる。


「そうそう!んで、この大陸で話題になったりしたら、噂を聞き付けた海の向こうの奴等が更に来たりしてよ。

世界大会とか出来る様になるかもしんねぇぞ?」


更に膨らませた夢をエドに語るコウスケ。


「せ、世界大会・・・」


コウスケが放ったパワーワードに、夢想モードに入るエド。


一領主として、夢が広がっている様だ。


そこへ


「それは良いな?上手くいけば、世界の猛者達と競えると言う事だな?」


二人の夢物語を聞いていたシャズが、瞳をギラつかせながら言った。


そんなシャズの言葉を聞いたコウスケは


「既に一人釣れたな?」


そう苦笑いを浮かべた。




其々がやりたい事を済ませた一行は、全員で流れるプールへと来ていた。


理由は、コウスケの


「お前らは何時も、気合いが入りすぎなんだよ!たまにはダラける事を覚えろ!ウチの小次郎を見習えッ!」


という一言だった。


コウスケの言葉に、エルネは「小次郎」という単語に陥落し、シャズは「ダラける」という行為に興味を示した。


ミランダは一理有ると納得し、エドはそんな四人の意見に流された。


ロイドは端から計算には入ってはいない。


「いいか?ここでは完全に流れに身を任せ、思う存分にダラける!それが決まりだッ!」


そんな、間違ったルールを声高に叫んだコウスケは、一人一人に浮き輪を渡していく。


「初心者はコレに体を通して脇で挟んで固定しろ?体を水中で漂わせる様に浮かんで流されるんだ!」


見本を見せながら漂い方を教えるコウスケ。


それを聞いたミランダは


「なら、上級者はどうするんだ?」


そんな疑問を口にした。


ミランダからの質問に、フッと笑ったコウスケは


「うん。良い質問だ。俺程の‘ダラけ’を極めた者は、この浮き輪に開いている穴に尻だけを通し浮く。これ一択だ!」


そう言って、胸を張った。


「それってただコレの上に乗っかってるだけじゃない。そっちの方が簡単でしょ?どうしてそれが上級者なのよ」


コウスケの言葉に、眉を顰めたエルネが尋ねる。


「エルネはまだまだだな。‘ダラける’という事がどういう事かを理解した者は、自ずとこのスタイルに辿り着く様に世界の理で決まっているのだよ」


そう答えたコウスケは、鼻で笑った。


「意味分かんない」


そう呟くエルネ。


こうして、五人は浮き輪と共に流れるプールへと入っていった。


しばらくして。


エルネ、ミランダは初心者スタイルで漂っている。


たまに流れてくる小次郎を捕まえようとエルネがバタつく事はあったが、概ね‘ダラける’事には成功している。


コウスケとエドは上級者スタイルで漂っていた。


コウスケ曰く


「エドには‘ダラける’才能があるな?」


との事だった。


それを聞いたエドは顔を顰めていた。


残るシャズは、早々に浮き輪を投げ捨てると


「これはッ!?・・・泳ぎの訓練になるッ!」


そう言って、流れに逆らい泳ぎ始めた。


それを見たコウスケは


「シャズが‘ダラける’のは、土の下に行ってからだな・・・」


そう呟いていたとか。


こうして、一人を除き思う存分怠惰に過ごした一行は、満足してプールを出る。


最後に、更衣室を挟んで繋がった温泉浴場施設で温まり帰った。


そこでサウナを気に入ったシャズに、コウスケとエドが酷い目に合わされたのは別の話だが。





それから数日。


王族一行が訪問する時に顔を出さなければいけない約束になっていたコウスケは、それまでの暇を持て余しエドの所へ入り浸っていた。


そんなある日。


ここ数日は見慣れた光景となっていた、仕事をするエドの前でコウスケがソファーに横になっていた時。


部屋の扉をノックする音が。


その音に、仕事中のエドと横になっていたコウスケが顔を向ける。


すると、控えていた執事が扉へと向かい、扉を開けた。


そこに居たのは来客では無く、どうやらエドの所の使用人だった様だ。


その使用人と一言二言言葉を交わした執事は、何かを受け取ると扉を閉めた。


対応を終えた執事は無言で振り向くとエドへと歩み寄る。


よくある事なのか、エドはそれ程気にした様子もなく執事を待った。


エドの脇に立った執事は、エドへと何かを耳打ちすると、使用人から受け取った物をエドへと渡す。


その様子を、横になったまま首だけを向けて眺めているコウスケ。


執事から受け取った物を、カサカサという音を立て開くエド。


おそらく、手紙か伝言の類いだろう。そんな風に思ったのか、コウスケは興味をそれ程示さなかった。


しかし、開いた物に目を走らせたエドは


「・・・えぇ!?」


そんな声を上げ、椅子から腰を上げた。


エドの立ち上がる勢いで、椅子が後ろに倒れる程だった。


エドのそんな様子に、流石に黙っている事が出来なくなったコウスケは


「なに?どしたん?」


そうエドへと声をかけた。


しかし、体を起こす事は無く、その言葉は酷く気楽なものだった。


そんなコウスケの言葉に、目を通した紙から視線を上げたエドは、焦った様な表情をコウスケに向けた。


しかし、コウスケの態度を目にし、やや嫌な顔をする。


そんなエドの顔を見たコウスケは


「・・・なに?どしたん?」


再び同じ言葉をエドへと投げた。


しかし、今回は体を起こしている。


エドは


「大変な事になったよ・・・」


そう呟くと、力無く椅子へと腰を下ろす。


倒れていた椅子は、執事がすかさず戻していた。


そんなエドの様子を見たコウスケは


「勿体ぶんなよ。気になるだろ?」


そう顔を顰めた。


するとエドは、そんなコウスケを真っ直ぐに見つめると


「一応確認だけど、コウスケの仕業じゃ無いよね?」


そう尋ねた。


そんなエドの言葉に


「はぁ?だから何だよ?最近はずっとここに入り浸ってたぞ?何でそんな事聞くんだ?」


そう返すと、表情を真面目な物へと引き締めるコウスケ。


そう答えたコウスケを、確かめる様にしばらく見詰めたエドは


「フゥ、そうだよね?疑ってゴメン」


息を吐くと同時に力を入れていた肩を落とし、そう言って表情を緩めた。


それを聞いたコウスケは


「いや別に良いけどよ・・・何があったか教えろよ?」


そう返した。


エドは眉間を揉み解すように手をやると


「前にコウスケが冗談めかして言ってた事が、現実に起こったんだ。だからコウスケの仕業を疑ったんだけど・・・」


そう言って首を振る。


「冷静に考えれば、コウスケがこんな事する訳無いもんね?」


そう続けたエド。


「俺が冗談めかして?何か言ったっけ?」


エドの言葉に、そう首を捻るコウスケ。


エドはスッと顔を上げると、至極真面目な顔で


「本当に起きたんだよ。クーデターが」


そう静かに言い放った。


「え?・・・アチャ~、言ったわソレ」


エドの言葉を聞いたコウスケは、そう言って天を仰ぐのだった。


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