表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/230

エルネの弓

案内人の先導で辿り着いたのは一見普通の民家だった。


「着きましたぜ」


「・・・上手く隠してあるな。どこからどう見ても只の民家にしか見えないな」


コウスケが感心していると


ガチャ


「・・・人ん家の前で突っ立ってんじゃないよ!邪魔だよッ」


いかにも主婦といった格好のおばさんがゴミを持って出てきた。


家の前のゴミ箱にゴミを入れながら怒りの言葉を吐き、再び家に入って行った。


「・・・怪しい人、道間違えちゃったのかな?」


エルネが気を使って小声でコウスケに問う。


この案内人に限ってそれは無いだろうと思い視線を向ける。


それを受けた案内人は何も言わず先程の主婦が入って行った扉を開けた。


「!・・・止めなくていいの?どう見ても民家だよッ」


エルネは狼狽えている。


「なるようになるさ。行こう」


そう言って中に入った。中は外見通りの生活感溢れる民家といった風だ。


「やっぱりそうだよ。やめとこう?ね」


そんなエルネの言葉も聞こえないのか案内人は更に進む。どうやら地下室に向かうようだ。


(上は丸々偽装の為にホントに人を住まわせているのか?)


用心深さが窺える。


地下に下りると分厚い扉があり、その向こうに商品が並べられていた。


「上の人もグルだったって事?」


「そうだろうな。手が込んでる」


エルネと二人で感心していた。


「何だ?客か?」


入り口で見回していると奥からこの店の店主らしき人物が現れた。


「最近貴重な弓が入ったと聞いた。見せてもらいたいんだが?」


「あぁ、あれか?だが良い物だから値は張るぞ」


そう言って奥から弓を一つ持ち出した。


(・・・?ひとつだけ?)


不思議に思い、目で案内人に「ミスか?」と問うがこちらも目で「それは無い」と答える。


取り敢えずエルネに


「どうだ?コレか?」


と、聞いたが首を横に振るだけだった。


「弓は二種類入ったと聞いたんだが、有るならもうひとつも見せてくれないか?」


「・・・アレは売るつもりは無い。それが目的なら帰んなッ」


売るつもりは無いらしい。どうしたモンかとエルネを見れば、今にも泣き出しそうだ。


(参ったなぁ。・・・粘ってみるしかないか?)


「俺たちが探している物かどうかだけでも確認させてもらえないか?」


「・・・まぁどうせ店に飾ろうと思ってたから見せるくらいならいいが」


そう言ってまた奥に取りに行った。


「あっ!!」


叫んだエルネを見て確認するまでも無かった。


「それ私の弓なの!おじさん返して」


気持ちは分かるがそれは通らない。


「バカ言えッ!これは俺が大金払って買い取った正真正銘俺の物だ。前の持ち主が誰かなんて関係ねぇ」


その通りである。飛び掛からんばかりのエルネを後ろに下げ


「どうしてもその弓が必要なんだ。どうすれば売ってくれる?」


そう聞かれ少し考えた店主はニヤリと笑いこう言った。


「そうだな。どうしてもって言うならコレと同じ位貴重な品を持って来たら考えてやる」


(考えてやる、か。こりゃ売る気無いな。別の条件に持ち込んだ方がいいな)


しかし


「わかったわッ!絶対持ってくるんだからッ!大事に持っときなさいッ!!」


(エルネサァァァン!?何言っちゃってんのぉぉぉ?)



~~



店を出て、三人それぞれが空を見上げていた。


「・・・ごめんなさい。ついカッとなって・・・」


どんな物を持って行っても難癖を付けられて売ってくれないだろう事を説明した後は謝りっぱなしだ。


「もう言っちゃったんだ。仕方ないよ・・・こうなったらあの店主の気が変わる様な物を見つけるしかない」


「でも・・・」


またしても泣き出しそうだ。


「大丈夫!情報屋も手伝ってくれるって言ってる。・・・タダで」


「ッ!!旦那、あっしはそんな「ホント?」・・・一点物を中心に情報を浚って来やす」


ウルウルした瞳のエルネに負けた様だ。


「只言っときますがあっしは情報屋じゃなくて案内人ですからねッ」


そう言って去って行った。


「怪しい人はいい人だね」


そう思うなら怪しい人はやめてやれ。と思いつつ


(働いた分と情報料は色を付けて払ってやらないとな)


と心に決めるのであった。



~~



翌日からは、忙しい日々が続いた。


「ここですぜ」


「盾専門店か?」


盾のみを扱う店だ。この店には昔からずっと飾ってある盾があると有名らしい。


「アレか?」


「そんなスゴそうに見えないね」


(エルネさん!店主の前で言わないでッ)


エルネの世間知らずっぷりにヒヤヒヤしながら【鑑定眼】で調べる。


「・・・いい素材を使ってるだけみたいだな。次ッ!」


小声で二人に伝え移動する。



~~



「次はここですぜ」


「防具屋だな」


「なんでも店主が機嫌のいい時に自慢する様に出してくる全身鎧があるって話でさぁ」


中に入り三人で店主をヨイショすると見せてくれた。


「うわっ・・・汚い」


エルネは居ないと思う事にした。


だが、確かに古く錆び付いた鎧だった。店主曰く、昔の有名な冒険者が使っていた物らしい。


一応鑑定してみたが、結果は同じだった。


「古いだけのただの鎧だ。ハズレッ、次ッ」


またも小声でそう言い、店を後にした。


その後も案内人の情報を頼りに店を回り、コレは!という物があれば買い取った。


真っ当な店だけでは無く盗品屋も回り、さらにはオークションにも足を伸ばした。


最終的にかなり良い物と思われる品が5点集まった。4日も掛かってしまったが。


「回った数を考えると少なく感じるな?」


「あっしはこれだけの物が5点も集まった事に驚いてやすがね」


「これで私の弓返してくれるかな?」


意見は三者三様である。


これらを携えて例の盗品屋に向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 駄目エルフを出してから、テンポが悪くなってしまいました。 残念です。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ